転生先は小説の‥…。

kei

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第五章 もうゲームとは別物です。

騙されたのは

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時間が少し遡ります。
エリックとグレインが別れて行動をした後の話です。
レティエルに扮した侍女の視点です。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「いやあ、驚いた。よく似ているねぇ。君を見ていると僕の若かりし頃を思い出すよ~。僕の甘くて苦い思い出でねぇ。ああ本当にあの頃が懐かしい‥‥」


その表情はウットリとした甘い笑顔で在りし日の思い出に浸っているみたい。

褐色かかった金髪に鼻筋が高く顔のバランスが良いこの男性は、きっと若い頃は嘸かし女性にモテたと思わせる。

いえ、今もモテるな、と思い直し男性を見た。


相変わらず男性は私の顔をジロジロと眺めている。

だけど、見られていても嫌悪感は湧かない。

それはこの男性の醸し出す雰囲気からか。


少し垂れ気味な目で優しく微笑まれると、こちらの警戒心が揺らぎそう。

優しく穏やかな表情で見られると、私を無条件に受け入れてくれると錯覚しそう。

ああ、この人は嘸かし人を誑し込んだんだろう。そう不謹慎な考えが過った。


お年は三十代前半? いえ年齢より若く見える方はいる。

この人、昔を懐かしむ位の時間を過ごしたのなら、見た目より上かな。


この私の顔を見て思い出の人と似ていると仰る。

模したのはレティエル様の顔。

だけど懐かしむのならザックバイヤーグラヤス公爵夫人であるカレンシア様を指していると思って間違いない。

この人と夫人は知り合いか…。



成程、あの男が私をここに送り込んだのはそう言う訳。

エリックから計画の変更は聞いてないのに私はこの屋敷に連れて来られた。

潜入捜査の依頼だけど違和感がある。嫌な予感がする。



この仕事が終われば私達の復讐に協力する約束は守られるのか心配になって来た。

グレイン主導な筈よね。あの男に従う判断を下したのは彼女だけど、何だろう不安が拭えないの。

とっても嫌な予感がする。

彼女と別行動をするよう指示を受けたけどグレイン、大丈夫かな?

これでよかった? グレイン。







「さて、お嬢さんを放っておくなんて僕は紳士失格だねぇ。さぁ、こんなオジサンの相手は嫌だろうけど暫く僕とお話をしようか。ところで、君は果実水はお好きかな? 僕の領内の特産の果物を搾った飲み物なんだ。どお? 飲んでみるかい? ああそれと甘い物は好き? 僕の家の焼き菓子は美味しいって評判でねぇ」



女性の相手と言うより子供に向けた対応な気がする。

こっちの方が接し易くて助かる。

もしも私にお父さんがいたら、こんな感じに世話されるのかと似合わない想像をしてしまう。

‥‥こうゆうのも悪くない。



控えていた執事にソワソワしながら指示を出すのも楽しそう。

くすっ。子供みたいな人。

私の緊張も緩まった。



『見た目で人を判断してはいけない』且つての教えは油断と言う愚かな行為によって忘れていた。











手早く用意された果実水と数種類の焼き菓子たち。

透き通るような薄いグリーン色に小粒な果肉も入っている。綺麗。

お菓子も美味しそう。

飲み物もお菓子も勧められてなんだか歓待されているみたい。嬉しい。



私が十分に満足したと判断したのか。





「では、喉も潤ったようだし。話をしようかお嬢さん。君の名前は? ああ、成り済ました人物の名前ではなくて君の本名だ」





「えっ」 

私は耳を疑った。
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