転生先は小説の‥…。

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第二章 攻略対象二人目 ちょっと義兄は保留でお願いします。

レティエルの出立

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――――今、俺の目の前に魔王おやじ悪魔あにが立ち塞がっている。


――――俺の後ろに勇者じいやがいる。


そう、今俺は二大巨頭まおうとあくまに勇ましくも立ち向かっているのだ。


――――じいや俺の骨を拾ってね。





はは。なーんてね。はぁー。




 ーーーーーーーーーーーー



「‥‥‥‥それでレティエ‥‥‥‥‥」

「レティ何が不満?‥‥まっまさか、あの王子ばかぼっちゃんにまだ未練があるのかい?ダメだよレティ。アレの血筋は残さぬよう不能にするからね。使い物にならないよ?」

(えっ?何が? 聞くのが怖いー!!あと親父、途中で黙んないでよ!沈黙が怖いから!)

一向に話が進まない。

(あーもう。何この二人!ほんと、いつもと違いすぎるよ。これ俺への罰なの?)


「「「‥‥‥…」」」


無言の硬直状態をぶった切ったのはじいやだった。


「旦那様。ランバード様。いい加減になさいまし。お嬢様が困られていますぞ。お嬢様を追い詰めてどうなさいますか。それに奥方様のご承諾は?‥‥旦那様?」


勇者じいやー!)

じいやの攻撃が親父にクリティカルヒット!

(あっこれ母さん知らないな。親父と義兄の先走りか。成程じいや知ってたね)




―――漸く話しがついた。



親父も義兄も納得はいっていない。だが母親の未承諾が功を奏した。

(流石の親父も母さんを無視できないね。良かった。取り敢えず義兄との婚姻は一旦お流れだ)



レティエルはやり切った。達成感に充足感。
満ち足りて自然顔が綻んでいく。

レティエルは頭の中から欠落してしまった。

そう油断から。

魔王おやじは成敗したが、悪魔あには野放しであったことを―――――――。







 ーーーーーーーーーーー



断罪劇から数日。

未だレティエルの元には調査の手が回ってこない。

レティエルは黙秘し続ける王妃の存在に不気味なものを感じたが、王子の後始末に翻弄され多忙なのだろうと思うことにした。手が回ってこないうちにサッサと国外逃亡だなと出立を決めた。







親父や公爵家に仕える者達から別れを惜しまれ。

俺だって寂しい。でも仕方ないよね。王妃は俺を恨んでいると思うし。

嫌がらせは確実だろう。

この国では生き辛くなる。それは御免だ。

俺はレティエルを幸せにするんだからな!



義兄は不在だった。何やら所用だと。

別れの挨拶は昨夜のうちに済ませておいた。

それはあっさりとしたものだった。

やはりあの婚約の話は親父からのゴリ押しだったんだ。



(良かった。これで義兄ルートは回避だな…‥‥多分、きっと、そうだよね、そうであってお願い!神様!守護神様!)







今、俺は公爵家の馬車に揺られながらぼんやり考えごとをしていた。


―――あいつらの罪状が決まった。


処罰されるのはあいつらと男爵家一族、あとは三下とかだった。
大物は釣れなかったのだ。

親父は何やら画策しているみたいだったけど。
教えてもらえなかった‥…。


王子とあの女とはあれ以来会っていない。

あの女とは一度話をしたかったな。転生者同士で。

だが精神がおかしくなって隔離されたって。今や話も出来ない状態だそうだ。

なんかスッキリしないな。



考えに気を取られて気付かなかった。

俺の馬車の後方から黒塗りの家紋のない馬車が近付いていたのを。



あっという間に俺は取り囲まれた。

周囲には倒れたままの護衛達が転がって‥‥。直視できない。

非力な俺は逃げることも抵抗することも出来ず。あっけなく捕まった。



(これって‥‥もしかして王子ルートのハッピーエンドバージョン?!こいつらが暴漢?えっ俺、死ぬの?なんでー!死亡ルート、回避できなかったのか?!)



拉致犯達は公爵家の馬車に火をつけ俺を黒馬車に押し込んだ。

押し込められた黒馬車の中から燃えゆく公爵家の馬車をジッと眺めながら。


―――俺は連れ去られた。

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