クリスマス・トールテイル

冬目マコト

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ウィンドワゴン・スミス船長とサンタさん

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こちらの話はバルザック夫人がお茶会の時にお話しされていたものでございます。
アメリカのカンザスの大草原での事でございました。当時は今よりカンザスの風が強く、夜は星明りしかなかったころ。この有名なサンタクロースがクリスマスの素敵な贈り物を子供たちの届けようとなさっていたのですが、やはり老朽化というものは物を選ばないのでございましょう、サンタクロース様の愛用の橇が壊れてしまったのでございます。皆様ご存じの通りこちらの橇は魔法の空を飛ぶ橇でございますから他になく、安心して各御家庭にすばやくプレゼントを届けるための大切な移動手段でしたから。サンタクロース様の落胆ぶりは見てられないものでございました。「ああどうしよう。今年のクリスマスはもう無茶苦茶だ」痛烈なお言葉でございました。ところがしばらくすると大きな車輪の音が聞こえてまいりました「?」と後ろに目をやると、現代のわたくしたちでもおそらく見たこともないものでございます。
それは半分船で半分コネストガ荷馬車の乗り物なのでございます。その大きさと言ったらフリゲート艦のよう、近くでご覧になったエマ夫人は驚きのあまり腰が抜けて三日歩けなかったそうでございます。さてサンタクロース様がボーとその奇抜な船馬車を眺めていると船馬車の中から声がするではありませんか。「何をしてる老いぼれめ!腑抜けた水夫の様な面だ」と口汚く大声を出すのはかの有名なウィンドワゴン・スミス(アメリカの伝説の陸の船長。歴史上初めてで最後の風力で動く馬車を発明した。)ではありませんか!
この方の有名はテキサスでは風より早く轟いておりまして、私の叔父ウィード工場長も彼の船馬車のスポンサーでしたのよ。
こほん、話がそれましたわね、ええとつまり、サンタクロース様とウィンドワゴン・スミス様がこの時お会いしたのでございます。サンタクロース様は自分の不幸を酒場でお話になり、ウイスキーを三杯お召し上がりになったそうです。
「なんだ!そんなことで腐ってたのかぁ!」ウィンドワゴン・スミス様はあきれ顔で答えました。「そんなこととは何ですか!橇が壊れてしまってはプレゼントを配る時間がたりません。この国一番の馬を連れてきても間に合いませんよ」サンタクロース様はまたオイオイ泣き出してしまいました。「私の船を使えばいい」ウィンドワゴン・スミス様は手を胸にどんと当てて御答えになられました。「私の船はどんな馬よりも早いしどんなものでも載せられる。さらに今日はいい風が来ておる。一日どころか半日で終わらせられるね!」ウィンドワゴン・スミス様は自信満々におっしゃいました。ご自身の発明に絶対の自信を持っていたのでしょう。サンタクロース様はそれをお聞きになられると藁にも縋る気持ちで船馬車にプレゼント配りを依頼することといたしました。
その夜、ウィンドワゴン・スミス様のおっしゃられていた通り強く言い風がお吹きになられて、帆は風をはんで力強く動き始めました。この船馬車は動き出すととんでもなく早いもので瞬く間にカンザスの各家にプレゼントを配る事が出来たのでございます。サンタクロース様はこの状況にホッと胸をなでおろしましたが何分風が強すぎました。あまりにも強いカンザスの風をうけてどんどん押し出されカンザスを越えてラッセン火山に突っ込みましたすると運悪くラッセン火山が大噴火を起こしその爆風でウィンドワゴン・スミス様の船馬車は天高く押し上げられてしまったのございます。サンタクロース様は間一髪で船馬車から降りられましたがウィンドワゴン・スミス様は船馬車と一緒に天高く飛んでいきもうおめもじ叶うことはございませんでしたわ。



それからというもの、カンザスの風に人の声が混ざって聞こえることがあるそうです。それはウィンドワゴン・スミス様がそれの上で船馬車を必死で操作している声なのだとお聞きしておりますわ。
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