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シルバ・アリウム、剣聖と成る
三十三話
しおりを挟む「失礼致しますシルバ、至急この予算の確認と修正、
それと申請書類の不備が無いか確認して頂いた後、シュバルツ殿との会議を
お願い致します、それと―――」
「待って、ねぇ、待ってくださいヒース、ちょっと量多くないですか?」
「そうでしょうか?今しがた、同じような事をミオさんにしていた気がしますが?」
「……聞いていたのですか、なんと悪趣味な……ぐぬぬ……」
持ち前の隠密を駆使したのか、はたまた偶然聞いていたのか分からないが、わざとらしい不満げな顔を作ってささやかな反抗をする。
「諜報活動の癖です、お許しを……、
ですが、この事態を招いたのはほかならぬシルバですよ?
大会に参加するシュバルツ殿と協力し、運営のお手伝いをすると仰ったのは、
シルバご自身ではないですか」
「わかってはいます、ですけど、こうも執務が続くとげんなりします、
ちょっとぐらい息抜きしてもいいじゃないですか」
「―――はぁ……仕方ないですね、少し休憩にしましょう、
一時間ぐらいなら自由に行動しても問題ありませんが、
くれぐれも正体がばれるような事は控えてください、
私が作業を進めておりますので、ごゆっくりどうぞ」
「わぁっ!!流石ヒースさんっ、話が分かりますねっ!!大好きですっ」
「―――ほら、早く行かないと時間無くなりますよ」
顔を背けて作業に入るヒースは、なんだか照れて顔が赤い様な気がした。
だけど、小窓から差し照らす光の加減でそれは分からず、私は確かめる事も無く部屋を出るのであった。
「はぁー……外の空気は良いですね」
堅苦しい城の雰囲気から解放され、シルバ村の牧歌的な風景とはまた違うこの街の空気に触れながら歩く。
―――交易拠点街、ツバキ。
前フタバ伯爵が治めていた街であり、現領主シュバルツ侯爵が治める街。
帝都との物流を繋ぐ場所に設立された拠点が栄え、それが時と共に拡大し街となった経緯から商業と人流が盛んである。
そういった成り立ちを踏まえ、シュバルツに要求した人材の確保はそう難しい事では無いと踏んでいた。
と、思考を巡らせていると僅かな違和感。
「…………」
城を出て少し、そう人通りの少なくない場所を散策して歩いていたつもりだったが、どうやらマズかったらしい、後方から跡を付けられている。
(しまった……流石に自由に動きすぎたかな、気配を察するに手練れではない様ですが、
尾行された事実がまずい、ヒースがこの事実を知ったら二度と外に出られなくなる)
どうしたものかと思案し、思い至った答えに我ながら単調だと反省しつつも行動に移す。
―――ッザ……。
とりあえず、姿をくらます為に思いきり跳躍して建物に飛び乗った。
街中で少女が何の魔法行使も無しに、人の域を超えた垂直飛びを披露したが、一瞬すぎて誰も気付かず、私は真上から追跡者を眺めていた。
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