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シルバ・アリウム、剣聖と成る
三十二話
しおりを挟むそんなミオの心中を知らず、シルバはウキウキで黒き刃の紹介を始める。
「それでですね、少し背の低い一番年下の子がカズキって言います」
ちらり、と後ろを覗き見ると、それらしき男の子が愛想よく手を振って応える。
その素振りに若干癒されたと思いきや、振っている腕に物騒なナイフが装備されていて笑顔が引きつる。
「細身で髪を後ろで束ねていて、よく“ククク……”って笑う方がヘイさんです」
背の高い彼は、期待通りククク……と笑ってこちらに視線を向ける。
しかし、皆が纏っている不気味な黒布が怖すぎて、ミオは笑い方とか気にしている余裕が無かった。
「で、無口で寡黙、けど一番見た目が派手な方がタキガワさんです」
軽く頭を下げて会釈する彼は、見た目が派手と言うだけあって肌を晒している部分の刺青やアクセサリーの主張が激しい。
その派手さがアサシンとしての不気味さとマッチして、一際近寄り難い雰囲気を形成している事はタキガワに自覚は無い。
「そして、その中で唯一の女性であるサクラさんです、とても美人な方ですよ」
黒紫色の髪を隠す様に目深くフードを被り、黒布を纏った顔は冷たい印象を持たせる。
彼女は涼しげに目を細めると、一時的な主人となるミオを見据えて微笑んだ。
『……ワ……ワァ……コセイテキナヒトタチダナ~~』
言葉が出ず、必死に笑顔を作ってこれから一緒に仕事をする仲間にはにかむミオ。
彼女の心労と疲労は、これからも無慈悲に積み重なるであろう。
「―――と、彼らの紹介はほどほどに、
こちらの仔細は文にてお伝えしますので、ミオはお伝えした内容の業務を
お願い致します、何かあれば追って連絡しますので」
『……わかりました、まぁ、色々言いたい事はありますが、
私からはただ一つ、無理して怪我だけはしない様にお願いしますね、
あなたの身は貴方が思っている以上に大事なのです、くれぐれもご自愛ください』
「肝に命じておきます、ヒースもいるので無理はしませんよ、ふふっ」
『―――では、ジニア村はこちらに任せて安心して己が使命を全うしてください、
こちらも何かあればご連絡しますので、それでは、失礼致します』
ミオとの連絡は切れ、会話を媒介していた魔法石はその輝きを失って淡い色でくすむ。
普段の会話も喜怒哀楽のはっきりしたミオだが、遠く離れた場所でもその感情が伝わってなんだか面白い。
思わぬ発見をして気持ちが軽くなり、また今度魔法石を使った会話をしようと心に決めた、その時であった。
―――ドサササッッ!!!
私室でミオとの通信を切った直後、情け容赦無い量の資料が机に叩きつけられた。
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