がんばれ勇者くん

うさのり

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第四章

魔法使いと眠る姫4

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(タク~、拓海~、たぁ~くぅ~みぃ~。何でタクがここにいるんだよ~。)

別室で自分の姿を見て笑われていることを知らない誠二は、すでに目から涙が溢れそうになりながら、パニックを起こして、ベッドで寝ている幼馴染を揺すった。

「タク、起きろよ!いつもは俺より寝起きいいじゃんかー!!!」

そんなことを言いながら頬を軽く叩いても反応なし。
しばらく寝ている人物の顔を見ていた誠二は、次にしゃがみこんで、頭を抱えて考えた。

(何でタクがここにいるんだ?
・・・オレと同じように召喚された?
でも、魔法使いはこの部屋に姫がいるって言ってたし・・・?
・・・魔法使い?魔法?変身?)

「あーーーーーーーーっ!」

ようやく姫の姿が変わっていることに思いついた誠二は、ダッシュで扉に向かい、ノブを回そうとした。が、回らない。

「魔法使い!どーゆーことだよ!!何でお姫様が拓海の姿なんだよぉ!!!」

殆ど泣きながら叫ぶと、魔法使いの声が聞こえた。

「TPOにあわせてみたのだが?」

「どこがだよ!」

誠二は思いっきり叫んだ。

「やれやれ。君が一番信頼を置いている人物にしてみたのだが?」

「バカヤロー。男にキスなんてできるか!!!」

「それでは、女性ならいいのかな?」

しばらく見ていると、拓海の姿がぼやけてもやのようになった。ようやく落ち着いた誠二は、期待を込めてベッドに近づいた。

・・・

「さて。どう出るかな?」

「どうって、何がですか?師匠?」

ディヤイアンが不思議そうに聞くと、エクーディアは、はっとしたようにクエティオディを見た。

「もしかして・・・。」

「そう。彼が一番好意を寄せている人物だよ。」

・・・

そこにはやはり幼なじみで植原拓海の双子の妹、植原真由美の姿があった。

「な、何でマユ?オレはマユみたいなぼーっとしているタイプじゃなくて、もっとしっかりした・・・。」

それ以上、誠二は言葉が出せなかった。彼女の柔らかそうな唇を見ていて、キスしたいなどと思ってしまったからだ。
一度思い出すと、まるで走馬灯のように彼女との思い出が蘇ってきた。
笑っている顔、怒っている顔、困っている顔、拗ねている顔、・・・泣いている顔。

(そう、オレはマユの泣き顔が見たくなくて、いつもがんばっていた。
サッカーを始めたのだって、あいつがかっこいいって言ってくれたからだし・・・。タクとけんかをしてもマユが泣くとすぐに仲直りをしていた。
オレは・・・。オレは・・・。)

「どうした?この姿なら問題ないだろう?
注意をするなら、キスはマウス・トゥ・マウス以外、認めないということ。それから、この国の王族は始めてキスをした相手と添い遂げなければいけないというところだ。」

「なっ!それじゃぁ、俺がキスをしたらこの子と結婚しなきゃなんないってこと?」

「いや。君が望むなら君は元の世界に戻そう。」

「そしたら、お姫様は?」

「伴侶を探すことも、結婚をすることもできないな。」

誠二は怒りが湧き上がってくるのを感じた。

「この子はそんなこと知らないんだろ!!!」

「いや。知っているよ。」

誠二の怒りが、すとんと落ちた。

「知ってる?!」

「今回の騒ぎの首謀者はそこに寝ている子だよ。この子はたまたま見かけた君が好きになり、こんな騒ぎを引き起こしたんだ。」

それを聞くと、誠二はとたんにおかしくなってきた。そして、この子が可愛いなと思えてきた。
誠二はゆっくりと姫の額に両手を置いた。

「ギブアーップ。オレはこの子にキスできません」

そして笑顔になって聞いた。

「この子の本当の顔が見たいな。どんな顔をしてるの?」

「わかった。起きなさい、ユンスウ。姿も元に戻そう。」

わずかな沈黙の後、再び魔法使いの声がした。

「では誠二。後はそこに寝ている子から説明を聞いてくれ。また後で会おう。」

魔法使いの声が消えると、ベッドの上の人物の姿も変わっていた。身長が低くなり、顔が更に幼くなった。
ベッドの上の子供がゆっくりと目を開けると、誠二は微笑んだ。
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