3 / 33
第一章
冒険の始まり2
しおりを挟む
後から来た女の子は、そうとわかるくらいに苦笑いを浮かべ、誠二の頭に黄色い透明な石がついた金色の額飾りをはめた。
「確かにねぇ。あそこで大人しくしていてほしかったけど~。ま、何はともあれ、無事でよかったよぉ。『勇者』君♪」
額飾りを誠二の頭にはめると、美少女は右手で帽子を取り肘を直角にまげて、軽く頭を下げた。そして顔を上げてにっこりと笑った。その動作は洗練されていてとても優雅だったが、誠二はそんな細かいことを考えている余裕は無かった。
「え?」
(勇者ぁ?)
少し頬を赤らめていた誠二は、きょとんとした顔になった。
「あまり知らない場所を一人で歩き回るのはどうかと思う。
ディヤイアンが捜索の呪文で探してくれたからここまで来ることができたが、もう少し行っていたら君は底なし沼にはまっていただろう。」
「はぁ?」
突然言葉がわかるようになり、ゲームや漫画でなければあまり聞かないような単語が出てきたので、誠二は目を丸くして固まった。
「突然話してもわかんないよぉ。エクーディアぁ。」
やれやれという顔をしながら、後から来たディヤイアンと呼ばれた女の子は、帽子をくるくると回しながら、誠二を座らせたエクーディアと呼ばれた美女を見た。
「私は、早く終わらせたいだけだ。」
「師匠がからむと、周りが見えなくなるよねぇ~。エクーディアは。でもね、ちゃーんと説明してあげないと、『勇者』くんだって混乱するよぉ?
それに、あたしたち、自己紹介もしていないんだよぉ?」
その言葉にはっとしたような顔をしたエクーディアと呼ばれた人物は、一度目を閉じてから先ほどのディヤイアンと同じように帽子を脱いで頭を下げた。
「自己紹介も無くすまなかった。」
それから頭を上げ、誠二をまっすぐに見て言った。
「私は、王国軍親衛隊第三部隊所属、王位継承者警護担当責任者の、エクーディア・トゥークツエルという。よろしくたのむ。」
そう言うと彼女は微笑んだ。その笑顔を見て、誠二は真っ赤になった。
彼は今までエクーディアに対して冷たい印象を持っていたが、その笑顔からはとても暖かい優しさがうかがえた。
「あたしはぁ、治療術の魔法使いでぇ、王国軍魔法師隊所属、王位継承者警護担当の、ディヤイアン・クエムディオでーっす。よろしくね♪」
エクーディアを見ながらほほを赤く染めた誠二を見て、にこにこと笑ったディヤイアンは楽しげにそう言った。
「あ・・・。えっと、緑陵学園高等部二年C組でサッカー部所属の深井誠二です。よろしくお願いします。」
誠二がぺこりと頭を下げると、二人は軽くうなずいてお互いを見た。
「それでは、ゆっくりと話ができるよう、場所を変えよう。」
「そーだねぇ。んーと・・・、ドゥエムワウムグイルンに戻るより、南西の小屋のほうが近いよねー。それにあそこなら、お茶の用意もすぐ出来るし。ゆっくりできるよねー。」
「わかった。では行こう。」
エクーディアが頷くと、ディヤイアンは誠二を見てにっこりと笑った。まるで、厚い雲の隙間から太陽が顔を出したかのような、明るく暖かい笑顔だった。
「『勇者』君。ちょこっと歩くことになるけど、いい?」
「へ?」
誠二はいまだに、ほほを染めながらエクーディアをぼーっと見ていたが、ディヤイアンの言葉に反応して、顔をそちらに向けた。
「・・・?『勇者』君?どしたの?」
「どうした?体調でも崩したのか?」
心配した二人の顔を見て、誠二は慌てて立ち上がって両手を振った。
「あ、いや、大丈夫です。ぜんぜんOKっす。」
「・・・?では、行くか。」
「は、はい!」
エクーディアの後ろを右手と右足を同時に出しながら歩く誠二を見て、ディヤイアンはちょっと困ったように笑って、そのあとに続いた。
「確かにねぇ。あそこで大人しくしていてほしかったけど~。ま、何はともあれ、無事でよかったよぉ。『勇者』君♪」
額飾りを誠二の頭にはめると、美少女は右手で帽子を取り肘を直角にまげて、軽く頭を下げた。そして顔を上げてにっこりと笑った。その動作は洗練されていてとても優雅だったが、誠二はそんな細かいことを考えている余裕は無かった。
「え?」
(勇者ぁ?)
少し頬を赤らめていた誠二は、きょとんとした顔になった。
「あまり知らない場所を一人で歩き回るのはどうかと思う。
ディヤイアンが捜索の呪文で探してくれたからここまで来ることができたが、もう少し行っていたら君は底なし沼にはまっていただろう。」
「はぁ?」
突然言葉がわかるようになり、ゲームや漫画でなければあまり聞かないような単語が出てきたので、誠二は目を丸くして固まった。
「突然話してもわかんないよぉ。エクーディアぁ。」
やれやれという顔をしながら、後から来たディヤイアンと呼ばれた女の子は、帽子をくるくると回しながら、誠二を座らせたエクーディアと呼ばれた美女を見た。
「私は、早く終わらせたいだけだ。」
「師匠がからむと、周りが見えなくなるよねぇ~。エクーディアは。でもね、ちゃーんと説明してあげないと、『勇者』くんだって混乱するよぉ?
それに、あたしたち、自己紹介もしていないんだよぉ?」
その言葉にはっとしたような顔をしたエクーディアと呼ばれた人物は、一度目を閉じてから先ほどのディヤイアンと同じように帽子を脱いで頭を下げた。
「自己紹介も無くすまなかった。」
それから頭を上げ、誠二をまっすぐに見て言った。
「私は、王国軍親衛隊第三部隊所属、王位継承者警護担当責任者の、エクーディア・トゥークツエルという。よろしくたのむ。」
そう言うと彼女は微笑んだ。その笑顔を見て、誠二は真っ赤になった。
彼は今までエクーディアに対して冷たい印象を持っていたが、その笑顔からはとても暖かい優しさがうかがえた。
「あたしはぁ、治療術の魔法使いでぇ、王国軍魔法師隊所属、王位継承者警護担当の、ディヤイアン・クエムディオでーっす。よろしくね♪」
エクーディアを見ながらほほを赤く染めた誠二を見て、にこにこと笑ったディヤイアンは楽しげにそう言った。
「あ・・・。えっと、緑陵学園高等部二年C組でサッカー部所属の深井誠二です。よろしくお願いします。」
誠二がぺこりと頭を下げると、二人は軽くうなずいてお互いを見た。
「それでは、ゆっくりと話ができるよう、場所を変えよう。」
「そーだねぇ。んーと・・・、ドゥエムワウムグイルンに戻るより、南西の小屋のほうが近いよねー。それにあそこなら、お茶の用意もすぐ出来るし。ゆっくりできるよねー。」
「わかった。では行こう。」
エクーディアが頷くと、ディヤイアンは誠二を見てにっこりと笑った。まるで、厚い雲の隙間から太陽が顔を出したかのような、明るく暖かい笑顔だった。
「『勇者』君。ちょこっと歩くことになるけど、いい?」
「へ?」
誠二はいまだに、ほほを染めながらエクーディアをぼーっと見ていたが、ディヤイアンの言葉に反応して、顔をそちらに向けた。
「・・・?『勇者』君?どしたの?」
「どうした?体調でも崩したのか?」
心配した二人の顔を見て、誠二は慌てて立ち上がって両手を振った。
「あ、いや、大丈夫です。ぜんぜんOKっす。」
「・・・?では、行くか。」
「は、はい!」
エクーディアの後ろを右手と右足を同時に出しながら歩く誠二を見て、ディヤイアンはちょっと困ったように笑って、そのあとに続いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら捕らえられてました。
アクエリア
ファンタジー
~あらすじ~ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目を覚ますと薄暗い牢獄にいた主人公。
思い付きで魔法を使ってみると、なんと成功してしまった!
牢獄から脱出し騎士団の人たちに保護され、新たな生活を送り始めるも、なかなか平穏は訪れない…
転生少女のチートを駆使したファンタジーライフ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
見切り発車なので途中キャラぶれの可能性があります。
感想やご指摘、話のリクエストなど待ってます(*^▽^*)
これからは不定期更新になります。なかなか内容が思いつかなくて…すみません

【書籍化決定】ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる