がんばれ勇者くん

うさのり

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第一章

冒険の始まり3

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十分ほど歩くと、小さなログハウスが見えた。
入口から一歩入った誠二は中を見回した。
右側に大きな暖炉とその側に食器や小物が入った小さな棚があり、ベッドが反対の左側に置かれ、中央には机と4つの椅子があった。
誠二は、ディヤイアンに勧められた椅子に、黙って座った。
ディヤイアンは棚をごそごそやっていたかと思うとやかんと手桶を持って外に出て行った。
入れ替わりに家の外にいたエクーディアが、薪の束を持って入ってきた。そして、彼女は暖炉に向かった。


誠二は、彼にしては珍しく黙っている。
この小屋に来るまでの十分程の間も、黙って歩いていた。
実は、彼の頭の中は、まだパニック状態だった。しかし、椅子に座ったことで少し落ち着いたのか、今度はぐるぐると考え込んでいた。

(ゆ、夢・・・だよなぁ?あんなちっちゃな大人なんているわけないし。小人?いや、体も大人がそのまま縮んだようだよな・・・。
それにあんなに綺麗な人がいるなんて・・・。
って、そうじゃなくって。
えーっと、えーっと・・・。
もう一人の彼女も、可愛いよなぁ・・・。
じゃねーってば!!!
って、そうなんだけど、美人だし、可愛いけど、今はそうじゃなくってだな・・・。
えーっと、えーっと・・・。
最初変な言葉で話してたし・・・。英語じゃなかったような気がするし、感じからすると、ヨーロッパ・・・とか?
でもオレ、寮で寝たよなぁ。
・・・家ってそんなにお金持ちじゃないから、海外まで行くドッキリなんてないだろうし、ドッキリって、そもそもオレ芸能人じゃないし。)

そんなことを考えながら、彼は自分の右頬をぎゅーっとつねってみた。

(痛い。・・・で、でも、こんなのゲームや小説の世界だし、魔法があるって言ってたし・・・。夢だよな。)

彼は一つ頷いて、現実逃避をした。

(うん。そーだ。夢だ、夢。目が覚めたら、タクとマユに教えてやろーっと。)

幼馴染の双子のことを思い出して、誠二は楽しげに周りを見回し始めた。


誠二がぐるぐる考え込んでいるうちに、裏の小川で水を汲んできたディヤイアンが戻ってきて、エクーディアがつけた暖炉の火にやかんをかけた。

「ねぇねぇ、エクー。なんか『勇者』君ってば、悩んでいるみたいだね?」

ディヤイアンはちょっと面白そうに小声でエクーディアに話し掛けた。

「ディヤイアン、愛称で呼ばないでください。彼がまねをするかもしれませんから。」

「そうだね。彼がエクーディアを愛称で呼んだら、師匠に無理難題を出されてしばらく帰れなくなるかもね・・・。」

ディヤイアンは小さく身震いをした。
少し苦笑いをしたエクーディアは、ディヤイアンの肩を軽くたたいて言った。

「どうやら彼は、悩むより現実逃避を選択したようですよ。」

ぼーっとしていたかと思うと腕を組み、すぐに右頬をうにーっとつねってから手を離し、一つ頷いてから今度は目をきらきらさせて周りをきょろきょろ見始めた誠二の心理を、エクーディアは正確に捉えていた。
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