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雷雲

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夜11時過ぎ、美智香と真弥の愛の巣に智がやってきた。

「こんばんはー」

「智さん、お久しぶりです」

真弥は初めて会った日以来の智との再会を喜んだ。

智自身、美智香と真弥が同棲して以来、遠慮して家に遊びに来る事を控えていた。


「真弥クン、久しぶりね
元気にしてた?」

「はい。みっちゃんの料理が美味しすぎて太り気味ですけど。」

「あら、食べすぎてワタシみたいにならないでね。」

智が笑って言うと、美智香がお茶の用意をして二人の輪に合流してきた。


「智、どうしたの?
話があるって言ってたけど」

美智香は話の内容が気になっていたので、お茶を置くなり、すぐに本題に入った。

智は頷き、真弥の方に一瞬視線を送った。


「あの、僕、席を外しましょうか。」

真弥は何となく、場の雰囲気を察知して、そう切り出したが

「これは真弥クンにも関係ある話だし、一緒に聞いて。」

智は真弥に留まるように言い、美智香が座るのを待って話を始めた。

「お姉ちゃん

今日、ウチのお店に達也さんが来たの。」


「えっ!」


美智香は愕然として、智の言葉を受け止めた。


「あ、真弥クン
話が見えなくなるとダメだから言っておくけど、ワタシ、本当は女じゃなくてニューハーフ
戸籍も男
だからお姉ちゃんとは姉と弟の関係ね」


「えっ、
えっ、マジっすか」


「マジマジ、大マジ

それと、ワタシが働いてるのは風俗。
ニューハーフヘルスっていうやつね。

そこに客としてお姉ちゃんの元ダンナが現れたってこと、今日ね。」

智はあっけらかんとした口調で言ったが、真弥は余計に頭がパニックになった。

しかし、これ以上余計な説明を待ってられない美智香は、焦った表情で話を先に進めるよう、智に促した。

「なんでアイツが智の店に行くのよ!」

「お姉ちゃん、達也さんの電話、着信拒否にしてるでしょ?」

「そんなの当たり前よ。
かかってきても履歴さえ表示されないようにしてるわ。」

「だから、ワタシのところに来たのよ。
お姉ちゃんとコンタクトを取りたくて。」


「今さら一体何の用があるっていうのよ!」

動揺し、声を荒げる美智香に対し、真弥は押し黙ったまま、智の次の言葉を待った。


「お姉ちゃんと何故コンタクトを取りたいのか、もちろん聞いてみたわ。
その他の話も含めてね。」


「何て言ってたの?」


「掻い摘んで話すと、浮気して離婚に至ったのは自分の不徳の致すところだって。
その彼女とも、結局は上手くいかなくなって別れたんだって。」


「ふーん
いいザマね」


「まさか、それでみっちゃんとヨリを戻したいとか」


真弥は泣きそうになりながら智に言った。
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