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風雲急

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重い空気の流れる中、智の話は続いた。

「真弥クン、ヨリを戻したいとかはそんなに無いみたいよ。」 

「なんでわかるんですか?」


「達也さんが欲しているのは、お姉ちゃんのビジネスにおける才覚よ。」


「ビジネス?」

美智香が言うと、智は頷いた。

「そう。
お姉ちゃんは仕事に命を賭けてて、共同経営をしていた会社でも寝る間を惜しんで頑張ってたって。」


「たしかにあの頃はそうだったわ

でも」


「もう一度、お姉ちゃんと一緒に仕事がしたいって。」



「な、何をバカなことを!」


「自分の浮気が原因で離婚したのは仕方ないと。

でも、お姉ちゃんの生き甲斐だった仕事を奪ったのは本当に申し訳なく思っているって

だから復縁したいとかそういうんじゃなくて、ビジネスパートナーとしてもう一度一緒に仕事がしたいって」


「よくもそんな勝手な事を!」


「っていうのは表向きの話で、その実は、達也さんの会社、あんまり業績が良くないみたい。

お姉ちゃんが辞任してから悪化の一途を辿っているようよ。」


「いい気味だわ。」


「お姉ちゃんにその気がなくても、向こうは是が非でも復帰させたい意向よ。」


「するわけないよ。

ごめんね、真弥君
変な事に巻き込んじゃって」

美智香は半泣き状態で真弥に詫びた。


「いや、僕の事は全然いいんだけど…

そこまでみっちゃんに執着するって事は、いつかここを見つけ出して、やってくるんじゃないかって」


「そうね。ワタシもそう思うわ。

勿論お姉ちゃんの事は何も言わなかったけど、向こうはお姉ちゃんが東京に住んでる事をなんとなくわかってるみたい。
だから、東京のワタシのお店にまで来たんだと思うよ。

この先、探偵でも雇って、徹底的に探し出すつもりよ。」


「まさか

そんなのストーカーじゃない!」


「そうなると、今日は大丈夫でも、ワタシがここに来るのを尾行されるかもしれない。

まあ、ワタシも来週には田舎に帰るし、それまでの間は、もうここへは来ないようにするけど。」


「智さん。
みっちゃんは僕が守りますので、大丈夫です。

色々ご面倒をおかけしてすみません。」


「うん。
真弥クンがいてくれて本当に助かったわ。

じゃないと、ワタシも心配で東京を離れる事が出来なかったと思う。」

智は真弥に微笑んで言った。


「もう籍も抜いて、それから二年以上も経ってるのに…
警察に相談するわ。」


「お姉ちゃん、気持ちはわかるけど、まだ何もされてないんだし、警察は動いてくれないわ。

とにかく、ここがバレないように注意して暮らすしかないよ。」


智の言葉に、美智香は力なく頷いた


「うん…そうだね

気をつけるよ

ありがとう、智…」

と。
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