カジュアルセックスチェンジ

Reset

あれだけ愛を誓い合い、和俊の両親とも仲良くなっていた智だったが、別れ際はあっさりとしたものだった。

だが、今の智には悲しみに暮れている時間はなかった。

とにかく莉愛を育て上げることに必死で、自分の事は疎かになっていく一方であった。

「莉愛、宿題、音読はやったの？」

「まだだよ」

「テレビ見る前に先にやっちゃいなさい。

ママ聞いててあげるから。」　

何気ない日常と何気ない会話
それが自然に流れていく。まさに智が求めていたものだ。

この幸せがあれば、他には何も要らない。

後は莉愛を育て上げるための蓄え
そう、仕事さえ決められれば…

見た目は母子家庭だが、その実は父子家庭…
国から支援を受けるには色々と問題がある。

智は戸籍上の性別変更も行なっておらず、いや、たとえ申請していたとしても、智のようなパターンは現行の法律では認められる可能性は極めて低いだろう。

残された道は自力で稼ぎ、生活をしていくこと
それしかないのである。

智は職探しを始めた。
高い収入が得られるのならば、ベビーシッターを雇って仕事に専念できる。

スキルは高いのだから。

しかし、この風体では決まるものも決まらない。

智は仕事探しの難しさを痛感し、厳しいときをすごすのだった。