ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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「薫さーん」

薫が店に入ると、未来とユウが満面の笑みを浮かべて手を振っていた。


「ごめんね、遅くなっちゃって

道に迷っちゃった」


薫は舌を出して笑って言った。


三人ともモデルと見間違えるほどの超美人で、店内の客も興味深げに見つめていたが、薫も未来もユウも、戸籍上は男性である。

突出してルックスのいいニューハーフというものが、たまに存在するが、三人が三人とも揃って、というのはなかなかないものだ。

薫は席に着くと、飲み物だけ注文した。




「薫さん

早速なんですけど、ユウさんがbigを辞めるって聞いて」

未来が先陣を切っって話し始めた。


「えっ、ユウちゃん
そうなの?」


「はい。

カレに結婚しようって言われて…

実際に一緒になるのはまだ一年近く先の話なんですけど、独身のうちに水商売から足を洗って、少しの期間でいいから昼間のお仕事をしたいなって…」


「そうなんだ。

おめでとう、ユウちゃん」


「ありがとうございます。

お店でも薫さんを目標にしてましたけど、主婦としてもまた薫さんを目標に頑張ります。」


「目標だなんて

ワタシは全然だよ。
もっと主婦業頑張らないとって思うんだけど。
なかなか難しくて…」


薫がそう言うと、また未来が話に割って入ってきた。


「それで、薫さん

今薫さんのお店でアルバイトを募集してるじゃないですか

見つかりましたか?」


「ううん。

まだ一人も…

ラーメン屋なんてキツイって思われてるのかなあ。
そんな事もないとは思うんだけど…」


「その話をユウさんとしてたんですけど…

ね?ユウさん」


未来に話を振られたユウは、慌てて頷いた。

「あの、年末ぐらいまでなんですけど、良かったらワタシ、働かせて欲しいんですけど…」


「えっ、ユウちゃんが?」


「はい。

全くの未経験者なんで、ご迷惑をいっぱいかけちゃうかもですけど…」


「ううん。
ユウちゃんが来てくれるなら、ウチは大歓迎だよ。

本当にいいの?」


「はい。
彼氏にも言ってますので、結婚するまでの間、昼間に働いてみたいって…」


「それなら、ありがたい話だわ。

彼氏さんもそう言ってくれてるんなら…

あっ」

薫は急に言葉を詰まらせた。


「えっ、どうしたんですか?」


「ユウちゃんの彼氏って、功太だよね?

功太はウチの主人と昔…」


「あーっ、その事ですか

昔、抗争の中、敵同士で撃ち合いになって、相撃ちになっちゃったって話ですね。」


「うん」


「今となっては笑い話にしてますよ。

功ちゃんて薫さんの舎弟だったんでしょ?

グダグダ言うようやったらしばいたって下さい。」


ユウはそう言って大笑いした。
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