ニューハーフ極道ZERO

フロイライン

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鹵獲編

再奪取

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「専務、来てらしたんですか。」

「おはよう、多喜。」

多喜が出勤してくると、大阪に滞在中の亮輔がすでに来ており、二階の事務所でパソコンを開いていて、何やら難しい顔をしていた。

亮輔は相変わらず美しく、多喜は思わず見惚れてしまったが、気を取り直して話しかけた。

「専務、社長の滞在期間、今回は長いですね。
もう一週間じゃないっすか。」

「そうね。
三宅組との件があるから、ちょっと長くなるみたい。」

「三宅組?
すぐ近くじゃないっすか。あんな小さな組に何の用があるんですか?」 

「近く外部への通達があると思うけど、三宅組をウチが吸収して合併するのよ。」

「えっ、そんな事が出来るんですか?」

「三宅組っていうのがね、言ってみたらウチと同じ立正会の参加にある小さな団体なんだけど、組長の三宅次郎っていうのが真面目なおじいちゃんでね。
ケツモチとかノミ屋にダフ屋のような、今では金にならない事ばかりやって、いわゆる儲かる危ない仕事には一切手を出してこなかったのよ。」

「ケツモチはともかく、その辺の仕事はウチも、もうやってませんね。」

「うん。ワタシらが入ったときにはもうなかったよね。
結局それで組がジリ貧になって、立ち行かなくなったのよ。
で、その三宅次郎組長は組を解散して、立正会系傘下の団体に組員を引き取ってもらおうと、立正会に相談してたみたい。」

「そこで出て来たのがウチなんですね。」

「うん。多村は三宅次郎の意向を聞き、ウチで組を引き取る事を決めた。
三宅組が抱える債務の肩代わりをする事を条件にね。」

「なるほど」

「それだけじゃないわ。
さらに、三宅組の看板はそのままに、後継の組長も三宅組構成員から選ぶという破格の条件も提示したの。」

「やけに太っ腹ですね。それでウチに何のメリットがあるんですか?」

「メリット?あるに決まってんじゃん。
ヤクザがボランティアで、他所の組を助けるなんて聞いた事ないでしょ?」

「そりゃまあ‥」

「簡単に言えば、代理戦争のさらに代理戦争をするための捨て駒にする。」

「捨て駒‥」

「三宅組には、ウチの組から五名ほど移籍させ、コントロール機能は多村が持ち続ける。」

「そして、自分は手を汚さずして、戦争を仕掛けると?」

「まあ、そんなところね。
その三宅組の移籍者の中には、多喜、あなたの名前も含まれてるのよ。」

亮輔が言うと、多喜は表情を曇らせ、少し声のトーンを落とし、言った。

「専務、そのことで、俺も話がありまして。」


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