上 下
122 / 385
鹵獲編

変心

しおりを挟む
「専務、俺、こっちで好きな人が出来たんです。」

「えっ、そうなの?
やるじゃん」

亮輔は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐに満面の笑みで、多喜を祝福した。

「おめでとう。どんな娘なの?」

「自分で言うのは何なんすけど、めちゃくちゃ美人で、性格も良くて、話も合うし。
俺って好きになったら、ベタベタしたいタイプなんですけど、そういうのにも応えてくれるし、本人もそういうタイプだって言ってくれるんです。
全部が最高なんです。」

「多喜、アンタ、そんな事言うキャラだった?
変れば変わるもんね。」

「結婚の約束もしましたし‥」

「また、とんでもないスピード婚ね!
ワタシも出席するから、式には呼んでね。」

「あの、俺もカノジョも身寄りが無くて、式は二人だけでやることにしたんです。
それと、ニューハーフだから、みんなを呼んでって感じにはしたくないって。」

「えっ?
ニューハーフなの!?」

「そうです。」

「これは‥驚いたわ。
多喜もなかなかやるわね」

「別にニューハーフだから、どうこうって俺にはないんです。
ただ、好きなだけで、一生二人でいれたら良いなって。」

「だよね。ワタシも自分がニューハーフだから言うわけじゃないけど、ホントそう思うわ。
好きって気持ちに勝るものはないよ。」

多喜は、ここで言うべきか、一種迷ったが、亮輔には伝えておかなければならない事だと思い、薫の事について話をした。

「それと、俺の恋人っていうのが、実は元々沢木組の構成員やってまして‥」

「えっ‥そうなの?」

「勿論、もうとっくに辞めてカタギになってるんですが、沢木組って言ったら、元が付いても、まあ、ウチとしては穏やかな話じゃないんで‥」

「うん‥そうね。」

「だから、俺、これを機会に、組から足を洗おうかなって。」

「多喜‥」

「薫も‥あ、彼女の名前薫っていうんですけど、薫も賛成してくれてますし、二人でどっか田舎に行って暮らそうかなって。」

「あんまり田舎はダメだよ。
その子、ニューハーフでしょ?近くにホルモン注射打ってくれる病院を確保しとかないと。」

「あ、そうですね。
ありがとうございます。」

「多喜、あの人が何て言うかわかんないけど、そういう事だったら、ワタシも応援するよ。」

「専務‥
すみません。」

多喜は寛容な亮輔に対し、深々と頭を下げた。

それでも、この話は一筋縄ではいかない‥

二人とも、多村の事を頭に思い浮かべながら、すぐに暗鬱な気分になっていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

処理中です...