不死の妖

アリエッティ

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違わず妖

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 現代・ロサンゼルス

 「死者が随分と減少している..!」
 元々ロスの住人である彷徨う死者が次々と姿を消している。しかし脅威は留まらず、警官や自衛官は未だ抗戦を続けている。

「一体何が起きているんだ..。」


場所を移し江戸の山奥・鎌鼬の戦場

『ハァッ!!』「ふん」
大きな竜巻を一太刀で弾き飛ばす、単純に竜巻の威力を腕力が上回っている証拠だ。

「..単純な竜巻を生み出すだけか、自然災害と変わらぬな。木々が無いだけ対処が楽だ」

『舐めてんじゃないわよっ!!』
両手の鎌を擦り合わせ一気に弾く事で火花を帯びた竜巻を生成する。

『斬り斬り舞い〝炎舞〟!!』

「燃える竜巻..鎌を擦り合わせて作るのか?」
先程から空中で何度も鎌を鳴らしていたが、単なる癖のようなものだと思っていた。

「その様な曲芸を好むのか..」

『曲芸ですって! どこまでがよっ!?』
炎舞に続き雷を帯びた竜巻、加えて嵐の如く大地を巻き込む豪風を生み出す。

「総て引っくるめてだ」
燃える竜巻に斬り込む刃を構えて雷の風を叩く、炎が断ち消えた事で刃には雷を帯びる。

『..何よ、何なのよその刀っ!!』

「我が魂だ。」
雷を纏った魂は豪風を叩き斬り、尚も刃を鎌鼬に突き立てる。

「..一緒にするなと言っていたが、やはり貴様も同じ唯の妖だ。手先は以前より廻りそうだがな」

『言ってなさいよ、今の内だから。』

「...どういう意味かわからんが?」

『今にわかるわよっ..!!』

閉鎖的な空間にいるのは早助だけでは無い。
もう一人、遊びに巻き込まれた男がいる。

「うおっ! なんだコイツら!?」
雷を落とす鼬、炎を操る鼬、単純に風を起こす鼬と三様の刺激を与えられ刀を振るわされている。腕の鎌は片方のみ、完全な妖では無いと思われる。

『まだ動くの?』『そろそろ寝なよ!』『キエェ!』

「一遍に喋るなうるせぇなぁ!
てめぇらが襲ってくるからそりゃ動くだろうが!」
文句を言いつつ手前の鼬に刀を下ろす、しかし鼬の身体を刃が擦り抜け躱されてしまう。

「またか、剣が当たらねぇ。
..コイツら実体が無ぇのかよ?」

『当たり前でしょ?』『アタシたちは風!』

「はぁ? 風ぇ?」

『そうよ』 「ぐわっ!」
背後に回った鼬の一匹が鎌を振るい吾太郎の背中を斬り裂く。痛みは同じ、しっかりと実体を感じる。

「..風と戦ってんのか俺は...?
何処をどう斬りゃくたばってくれんだよ..。」

『そんなの無ー理!』

『くたばるのは~?』

『アンタの方だよ!』
炎を帯びた鎌、雷を帯びた鎌、風を帯びた鎌が一斉に正面から斬り掛かる。

「..俺はいつでも二番煎じか....?」
幼い頃から、常に早助に負けていた。現在も副隊長の座を担っている。しかしそれに、嫉妬に近い不満は無かった。早助の強さを誰よりも理解していたからだ。

「アイツも俺の強さを認めてくれやがってるから信頼を置いて副隊長に任命したんだ。」
右腕のつもりは無い、だが従う事に苦は一切無い。

「隊長は隊を護る大元だ、ならば副長は何を護る?」

『んな事知らないわよっ!』

「..隊長の命だよ。」
三振りの鎌を一気に刀で受ける

『一振りでやり切れると思ってんの?』

『直ぐに折れるっての~!』

『馬鹿もいいとこじゃない!』

「‥へ、これでわかったぜ。
やっぱりお前ら、ただの見せかけだな」

『「はぁ?」』
違和感を感じていた、斬り込んでも躱される。しかし鎌を振れば背中が裂ける。完全に奴等に実体が無ければ鎌による斬撃は受けない筈なのだ。

「てめぇらは俺に攻撃を仕掛けるとき、一度実体化する。風如きがてめぇの意思で人間に傷を負わせる事なんて出来ねぇよな?」

『ぐっ..』『だったら...』『なんなのよ....!』

「わからねぇかぁ?
実体があるって事ァお前ぇ、こっちも傷を平気で与えられるって話じゃねぇかっ!」
連中は勘違いをしている。吾太郎が危惧していたのはあくまで実体の有無だ、小さな腕力が振るう軽い鎌など初めから恐るるに足らない簡単な遊び。

「そりゃっ!」

『あうっ!』『嘘っ!?』『なんでよ!』

「風の出処も知ってるぜ、出力点は...手首からだ!」
鎌を刀で打ち返し、万歳している内の一振りを斬り取り先ず雷を止める。

『あっ!』


『うあっ..!!』「……なんだ?」

「てめぇらの風は手首から放出し鎌でそれを弾く事で形を変える。擦る様に弾けば炎が、鋭く弾けば雷が」
炎や雷を帯びた風は加減をするのに放出させた後鎌を用いて威力を削る必要がある。

「普通の風と違って鎌が無けりゃ、でかすぎる力ってのは一体どうなるんだろうな?」

『あああぁっ..!!』

「此奴、身体が痺れて..」

『ふ、ふざけんなぁっ!!』
力任せに鎌を振る度〝元の身体〟が傷を負う。

「よく見て狙えよ」
二振り目を断ち斬る。
手首からは炎が溢れ、鼬の身体を赤く火照させる。

『ああぁぁっ..!!』 『ひ、ひぃ~!!』

「本体はソッチにいるんだろ、早助?」


「…成程な、そういう事か」
燃え盛る空の鼬を眺め、総てを理解した。

『ふぅ..ふうぅっ...!!
あいつら、しくじりやがったなぁ..!?』

「これがお前の見せたかったものか。
..残念だが、曲芸にしては見るに耐えんな」
跳びあがり首元に標準を合わせる。

「結局お前は、同じ〝妖風情〟だ」

『ちょ、ちょっと待っ..』
無様な捨て台詞を吐き、灰になる前に息絶えた。

「……ふん、やはりあの男で間違いは無かったな」
空間が消え薙ぎ倒された木々が目に映る。

「命救われたろ、早助?」
子供のような顔で満面に笑い、格好の悪い声で言う。
威厳は無くとも、確実な勝者である。











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