異世界に召喚された猫かぶりなMR、ブチ切れて本性晒しましたがイケメン薬師に溺愛されています。

日夏

文字の大きさ
上 下
188 / 196
本編

-188- 夫として オリバー視点

しおりを挟む
「オリバー様───」
「アサヒの妊娠のことだろう?」

扉が閉まるや否や、タイラーが私の名前を呼びました。
『オリバー様へ確認することがありますから』等と呟き、もうその時点で私は『わかってるよ』と言いたい気持ちをぐっと堪えたものです。


『おはぎさんにも一緒に確認をしたいので』とアサヒに伝えたタイラーはどれだけ自分の勘に自信があるのでしょう?
妊娠しているかしていないかはまだ伝えていないのにも関わらず、先におはぎも一緒に、等とと言い出す始末です。
ええ、実際妊娠しているので、おはぎは必要なのですが……少し、いいえ、大いに納得いかなかっただけです。

『おはぎも?』
『ええ、そうですね』
『アサヒはそれをもって夕飯の相談へソフィアのところに行かれるのでしょう?』
『ああ、うん。今日も夕飯手伝うつもりだ』
『でしたらその間だけで済むことですから』

タイラーにそう言われたアサヒは、おはぎを呼び出しました。
分かってるだろうに、『なーに?アサヒ』などとアサヒの足にまとわりつくおはぎにはイラッとしますが、アサヒはそんなおはぎが可愛いのでしょう。
頭を撫でながら、『夕飯までタイラーと居てくれ。おはぎに聞きたいことがあるんだって』と優しく伝えていました。
『ん!』と良い子な返事をした後で、私を見で勝ち誇ったような顔を向けるので、本当に気に食わない妖精です。
ただ、まあ、アサヒをちゃんと守っていますからね。
人外のレベルなそれは勿論規格外に頑丈です。
その点では、感謝もしているんですよ、これでも。


「タイラーの言う通り、してたよ」
「っ!ええ、そうでしょうとも!」
「男児の、双子らしい」
「双子?!ああ、それはとても喜ばしいことですね!おめでとうございます」
「ありがとう。ちょっと、タイラー?ちょっと待ってくれ」
「何がです?」

タイラーはというと、こうしてはいられないような有様です。
すぐにでも周りに言い出しそうなタイラーを止めると、嬉しそうな顔で私を見てきました。
なんだか、タイラーの孫でも生まれたような……いいえ、曾孫でしょうか、年齢的に。
どうでもいいですが、かなりの浮かれ様です。

「まだ、周りに伝えるのは待ってくれ。アサヒ自身にもだ」
「何故です?早い方が良いでしょう、神器様なのですから、五体満足、安産は確定されているも同然のこと。まして、双子であればそれなりの乳母が必要でございます」
「それはそうだろうけれど、医者が言うには冷えだけ気をつければ特にこれといってまだ何も特別なことはいらないと言っていたんだ。必要以上に制限をかけたくないんだよ」
「……オリバー様、それはご自身の願望では?」
「や、本当にそう言っていたんだ。寧ろ、たくさん致せと」
「は?」
「神器様だから、だそうだよ。子供にも私の魔力を取られるから絶やさず満たしてあげろと言われたくらいだ」
「……おはぎさん、それは、本当ですか?」

何故そこでおはぎに聞くんだ!?と言いたい気持ちをぐっと堪え、まんまるな目をしてタイラーを見上げたおはぎを
見おろします。

『……本当。オリバー、今回、嘘ついてない』
「……そうですか」

私とタイラーが固唾をのみおはぎを見おろしますと、柄にもなくおはぎは少したじろぐような仕草をしてから答えてきました。
今回とはなんです、今回とは!
まるで私がいつもは嘘をついているようではありませんか。
本当にこの妖精は私に対して一言多いか、逆に誤解されるほど少ないかのどちらかですね。

ですが、まあ、今回は、タイラーが納得してるので良しとしておきましょう。
主の私よりおはぎを信用されるというのも、情けない気持ちになりますが……言えば、日ごろの行いのせいだと言われるだけでしょう。
それはそれで、虚しいようなやるせないような。
こんな性格なのでなかなか根本から改めるというのも限度があるのです。
アサヒが来て、少しは解消されてきたとこれでも自負しているのですが。

「おはぎさん、いつも使っているは、美味しくなるだけですか?か」
『美味しくなる魔法、美味しくなる。おはぎ、嘘つかない』
「そうですか」

言い方に私へ対する棘がありますが、やはり美味しくなる魔法は、美味しくなる効果のようですね。
具体的には、その物が持つ鮮度の問題なのでしょう。

「アサヒ、おはぎの加護ある。大丈夫」
「それは、お茶や薬やアルコールも気にせず摂取してもよいと言うことでしょうか?」
「……おはぎ外にいる時、アサヒの魔力ちょっとだけ使う」
「ならば、やはり控えた方が良さそうですね」
「……アサヒ、まだ知らない」
「そうでしょうね」

知ったら、アサヒなら言ってくれるでしょう。

「もうすぐ気づく、それまで内緒」
「特訓とやらも続けるのですか?」
「おはぎと一緒、大丈夫!」
「……わかりました。それまでご実家へお伝えするのも待ちましょう。ですが、ソフィアには話して置いた方が良いですね」

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ
ファンタジー
【異世界に召喚されましたが、間違いだったようです】 ノベルアッププラス小説大賞一次選考通過作品です ※自筆挿絵要注意⭐ 表紙はhake様に頂いたファンアートです (Twitter)https://mobile.twitter.com/hake_choco 異世界召喚などというファンタジーな経験しました。 でも、間違いだったようです。 それならさっさと帰してくれればいいのに、聖女じゃないから神殿に置いておけないって放り出されました。 誘拐同然に呼びつけておいてなんて言いぐさなの!? あまりのひどい仕打ち! 私はどうしたらいいの……!?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...