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本編

-189- 髪紐と付与*

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昨夜の宣言通り、朝食はフレンチトーストだった。
あ、フレンチトーストとはいわねーんだっけ、パンペルデュな、パンペルデュ。

新鮮なミルクと卵と蜂蜜をたっぷり使っただろうそれはすげー美味くて、また食べたいと思っちまった。
しっとりしてるのに、プリンのようなふるふるの弾力もあって、バターの香りと少しの塩気がこれまた絶妙なハーモニーを醸し出していた。

これ、本来は、貴族様の食べるもんじゃないらしい。
乾いちまったパンを美味しく食べる方法で、元々は賄い扱いの料理だったようだ。
甘くもなかったらしい。
そこに砂糖や蜂蜜やらをぶち込んで甘くしたもんが富裕層のカフェ店で流行って、貴族にも広がった。
流行りもんは全てお貴族様から広がるもんかと思っていたが、そうでも無いようだな。

ソフィアが言っていたように、オリバーも美味しそうに食べていた。
ただ、付け合せの温サラダはあまりお気に召さなかったようだ。
まあ、生よりは良いらしい。
人参もブロッコリーもちゃんと香りと甘みがあって美味いんだけどなあ。


さて、今日こそ作るぞ、と意気込んで、おはぎと共に自室にこもった。
何を作るかってのは、俺とオリバーのお揃いの髪紐だ。
忘れたわけじゃ無かったんだが、優先出来なかった、というのが正しい。

「俺のはさ、別になんも付与しなくても良いかなって思うんだよな。おはぎのがあるからさ、逆に邪魔になりそうで」

おはぎの加護は、強力な守りの付与がなされているお守りで、むかーしむかしの聖樹の化石から作られたもんらしく、今は俺の中にある。

不発なんてことはないだろう。
むしろ、下手に俺が髪紐に付与しちまうと、その発動の妨げになりそうだ。

「だから、付与はオリバーのだけにしようと思うんだけどどうだ?」
「アサヒのも!魔法で魔法、隠せる」
「魔法で魔法?あーなるほど、確かに」

確かにおはぎが言うように、おはぎの加護があるからといって、実際発動しちまった時のことを考えたら、その方がいざという時に誤魔化しが効く。
ってことは、俺のも付与した方が良いっつーことだ。

「一粒に一つはいるなら、全部別々の方が良いか」
「入るの、ちょっとだけ」
「ちょっとだけ……」
「ん」

ってことは、ソフィアのお守りみたいなもんは付与出来ねーってことか。
まあ、そうだよな、大きさぜんぜん違うし、石が石だ。
小さな石は左右3つずつつけるわけだから、合計6つ。
6つの魔法付与が出来るってことだ。

よく考えろ。
まず、毒の軽減ってのはオリバーに限って必要ない。
初めて食べるものや外で出されるものについては、好奇心が勝って鑑定がかかるからしい。
今のところこの世界の毒はすべて何らかの植物、またはその植物からの抽出物で出来ているから、うっかり口にしちまった、なんてことにはならねえはずだ。
魔物の場合もあるらしいが、植物の魔物だからオリバーにとっちゃ同じようなもんだ。

……ってそもそもオリバーが外に出る時に一人ってことはもうないはずで、俺と一緒に行動するわけだからそうそう奇襲なぞにあってどうこうなりはしないだろう。
何かあった時のためにも、日々特訓してんだ。
だが、どうこうなりはしないだろうが、傲りは良くないな。

なにかある確率でいや、寧ろ俺が一緒にいない時、家の中とかの方が危険かもしれない。
や、危険って、どんな危険ってなんだよ?
侵入者問題はアレックス様が魔法陣を強化してくれたわけだからそこは問題なくなったし。
実験で爆発……は、ないだろう、や、ありえるか?

オリバーは集中しちまうと、周りが見えない聞こえないっつーことはよくある。
タイラーもソフィアもそこんとこよく分かってるから、今まで見守ってきた。
まあ、その例外は、俺だ。
飯の時に来なければ俺が迎えに行くこともある。
まあ、オリバーが迎えに来ることも多いし、半々な気がする。
兎も角、俺、という存在が、色んな意味でオリバーを動かす鍵になってるようだ。

それはそれで嬉しいだけだから、面倒だとか重いだとかは一切感じない。
今までにないくらい特別で優しい奴だ。

そうそう、昨夜なんかさ、すげーの。
いつもに増して優しかった。
ゆっくり時間をかけるセックスは、嫌いじゃない。
寧ろ、オリバーに限ってだが、好きだ。
や、そんなんされたこと無かったから、新鮮っつーかなんつーか。

ゆっくりなのに、えっろいし、めちゃくちゃ気持ちよかったんだよな、これが。
ガンガンつかなくたって、気持ちいいセックスができるのをはじめて知った。
俺ばっか気持ちいいって訳でもなかったみてーだし、たまには、ああいうのも良いな。
すげー大切にされてるってダイレクトに感じるセックスだった。

『アサヒ』
「……悪い、おはぎ」

いつも真ん丸な目が、ジト目になって俺を見る。
よくオリバーに向ける視線だ。

や、今のは、俺が悪かった。
全く集中出来てなくて、昼間っからえっろいこと考えちまった。
……てか、コレ、おはぎに全部聞こえてんじゃねーか?
いやいや、それはいくらなんでも恥ずいだろ。

「ちゃんと考える」
『集中』
「おう」
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