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本編
-165- 心惹かれる存在 オリバー視点
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「───っなんで話ながらイチャイチャすんだよ、勘弁してくれよ」
「ごめんなさい。アサヒが可愛らしくて、つい」
「………」
アレックスとの通信を終えて、しっかり5秒は経ったときのことでした。
アサヒが耐えきれないような声をあげてきます。
勘弁してくれ、と言いながらも嫌がっていないのはわかります。
ですから、その証拠に、こうやって抱きしめながら謝ると、大人しくなるのです。
本当に可愛らしい人です。
「何を考えているんですか?」
「え?」
いつもよりも黙る時間が長く微動だにしないアサヒが気になりました。
元の世界のことでも、何か思いだしているのでしょうか?
「私の腕の中で私以外のことを考えないでください」
「や、なんか、恋人……まあ、もう夫夫なわけだけどさ。付き合ってこんなふわふわした感情になってんのオリバーだけだなって思っただけ」
「私もこんなに心惹かれたのはアサヒだけです」
他人と比べれられるのは、あまり好きではありません。
過去の経験上、私の方がいつも劣っていたから、というのもあると思います。
『前の彼氏は僕がこうしていたら抱きしめてくれたのに、オリバーはしてくれないのか』だとか、『前の彼氏より本当に見た目だけはいいよね』だとか。
ですが、アサヒがそれをすると複雑な気持ちになります。
アサヒの場合は、いつも逆だからです。
比べられてもいつも私の方が優れているんです。
ですから、たとえ比べられても嫌な気持ちになることはありません。
ただ、その度にアサヒを知っている人がいることに嫉妬するだけです。
恋愛において、相手からのされ待ちを嫌でも学び、年数を重ねる毎に察しは良くなりました。
ですが、アサヒからは殆どそれを感じたことがありません。
寧ろ、私が先に動くととても可愛らしい反応を見せてくれます。
慣れているのに慣れていない、それがとても可愛らしい。
私が抱擁を緩めると、アサヒは肩越しに振り返ってきました。
薄く形の良いアサヒの唇が目に入ります。
その唇を間近にとらえ、誘われるように触れる。
そう、ただ、触れるだけの口づけです。
にも関わらず、甘い苺の香りが鼻の奥まで届くのです。
いつでも欲してしまうほどに、甘く、時に暴力的な程の誘惑にも感じます。
私の理性を毎回試してくれます。
アサヒは、どうでしょうか。
『すげーいい匂い』といつも言ってくれてはいますが、アサヒも同じようになるのでしょうか。
そうだったら、とても幸せなことですね。
今日もほら、こうやって間近に見つめると、アサヒはそっとその瞳を伏せて頬を染めるのです。
その仕草がとても可愛らしくて、鼻が触れ合うほどに近づいて気持ちを確かめる、というこの行為自体が癖になってしまいました。
アサヒの手が私の肩にそっとのせられて、そのまま私の方へと向き合ってくれました。
初めの頃、このような軽い戯れに慣れていないアサヒは戸惑いばかりでぎこちなかったのを覚えています。
ですが、最近になってやっとアサヒ自身から動いてくれるようになりました。
抱かれ慣れてはいる。
でも、愛されなれていない。
それを知ってから、より私は日々愛情を注いでいます。
少しずつ変わるアサヒを知るたび、私はとても嬉しくなります。
後ろから抱きしめるのも好きですし、そのまま口付けるのも好きです。
ですが、向かい合うとアサヒの可愛らしい表情をつぶさに感じ取れるのでもっと好きです。
アサヒの腕が私の両肩へと回るのが、口付けの合図でした。
柔らかな甘い唇を啄むように口づけると、アサヒもそれに応えてくれます。
こういう時のアサヒは、いつもとても気持ちよさそうにしてくれるんですよ?
私のキスが上手いのではないかと錯覚するほどです。
私もとても気分が良い。
鼻の奥から脳内へと甘い香りが駆け上がり、もっと深くまで味わいたい気持ちをぐっと抑えます。
口付けだけでこのような気持ちになるのはアサヒが初めてです。
アサヒの細い腰を支えて、その体をサイドボードの上へと促すと、軽々と納まってしまいました。
アサヒの身体自体細いのですが、その腰は本当に細いと思います。
神器様だから、というのもあるかもしれませんが、身体の骨組みがもう私たちと違う気がするのです。
それにしても、アサヒの視線の方が少しだけ高いのは、新鮮ですね。
白く美しいアサヒの首筋を視線が捉え、私の下で乱れる姿を思い出してしまいました。
このまま軽い口づけを楽しむのもいいですが、深く甘い口づけに変えても誰も文句は言わないでしょう。
口付けは、口付けですから。
明るいうちから抱くわけじゃありませんし。
深く味わおうと、私がせがむ様に唇を寄せた時でした。
カタリと音が上がったその瞬間、アサヒがビクッと身を震わせました。
同時に息を飲み、視線を自分の右手に向けています。
どうやら、梟の足先とアサヒの手がぶつかってしまったようです。
「ふふっ……ごめんなさい」
アサヒのドキドキして鼓動がてのひらから伝わり、思わず笑いが漏れてしまいました。
もし梟を倒して壊してしまったとしても、私のせいです。
『すげーびっくりした』というアサヒは本当にびっくりしたようですね。
梟のせいで、甘い雰囲気がどこかへ消えてしまったようにも思います。
そのことに少しだけ悔しさが沸き上がりました。
「降ろしてくんね?」
「嫌だと言ったら?」
口では降ろして欲しいと言っても、そうしたくないのはアサヒも同じなのでしょう。
本当に可愛らしい人です。
「このままじゃお前の腕ん中にいても、こいつにずっと気を取られるけど?」
「それは困りますね」
「じゃあ───」
「ベッドとソファとどちらがいいですか?」
アサヒを抱き上げて問うと、アサヒがより可愛らしい顔を見せてくれました。
もう、このまま抱いてしまってもいいのではないでしょうか?
「っベッドは駄目だ」
残念ですね、駄目だそうです。
まあ、アサヒの真面目な性格上、今から抱かれるという選択肢はないのでしょう。
「……仕方ないですね。夜まで待ちましょう」
「そうしてくれ」
「喜んで」
『そうしてくれ』と言ったアサヒは、きっと有言実行です。
嫌だとは言わせませんし、私から誘わなければきっと可愛らしく誘ってくれるでしょう。
一瞬そちらへ、くらりと気持ちが傾いてしまいました。
ですが、アサヒからのお誘いはまた次の機会に楽しみにしておくことにします。
今夜は、私から。
最初から最後まで、心も身体もその全てを甘い優しさで満たしてあげましょう。
「ごめんなさい。アサヒが可愛らしくて、つい」
「………」
アレックスとの通信を終えて、しっかり5秒は経ったときのことでした。
アサヒが耐えきれないような声をあげてきます。
勘弁してくれ、と言いながらも嫌がっていないのはわかります。
ですから、その証拠に、こうやって抱きしめながら謝ると、大人しくなるのです。
本当に可愛らしい人です。
「何を考えているんですか?」
「え?」
いつもよりも黙る時間が長く微動だにしないアサヒが気になりました。
元の世界のことでも、何か思いだしているのでしょうか?
「私の腕の中で私以外のことを考えないでください」
「や、なんか、恋人……まあ、もう夫夫なわけだけどさ。付き合ってこんなふわふわした感情になってんのオリバーだけだなって思っただけ」
「私もこんなに心惹かれたのはアサヒだけです」
他人と比べれられるのは、あまり好きではありません。
過去の経験上、私の方がいつも劣っていたから、というのもあると思います。
『前の彼氏は僕がこうしていたら抱きしめてくれたのに、オリバーはしてくれないのか』だとか、『前の彼氏より本当に見た目だけはいいよね』だとか。
ですが、アサヒがそれをすると複雑な気持ちになります。
アサヒの場合は、いつも逆だからです。
比べられてもいつも私の方が優れているんです。
ですから、たとえ比べられても嫌な気持ちになることはありません。
ただ、その度にアサヒを知っている人がいることに嫉妬するだけです。
恋愛において、相手からのされ待ちを嫌でも学び、年数を重ねる毎に察しは良くなりました。
ですが、アサヒからは殆どそれを感じたことがありません。
寧ろ、私が先に動くととても可愛らしい反応を見せてくれます。
慣れているのに慣れていない、それがとても可愛らしい。
私が抱擁を緩めると、アサヒは肩越しに振り返ってきました。
薄く形の良いアサヒの唇が目に入ります。
その唇を間近にとらえ、誘われるように触れる。
そう、ただ、触れるだけの口づけです。
にも関わらず、甘い苺の香りが鼻の奥まで届くのです。
いつでも欲してしまうほどに、甘く、時に暴力的な程の誘惑にも感じます。
私の理性を毎回試してくれます。
アサヒは、どうでしょうか。
『すげーいい匂い』といつも言ってくれてはいますが、アサヒも同じようになるのでしょうか。
そうだったら、とても幸せなことですね。
今日もほら、こうやって間近に見つめると、アサヒはそっとその瞳を伏せて頬を染めるのです。
その仕草がとても可愛らしくて、鼻が触れ合うほどに近づいて気持ちを確かめる、というこの行為自体が癖になってしまいました。
アサヒの手が私の肩にそっとのせられて、そのまま私の方へと向き合ってくれました。
初めの頃、このような軽い戯れに慣れていないアサヒは戸惑いばかりでぎこちなかったのを覚えています。
ですが、最近になってやっとアサヒ自身から動いてくれるようになりました。
抱かれ慣れてはいる。
でも、愛されなれていない。
それを知ってから、より私は日々愛情を注いでいます。
少しずつ変わるアサヒを知るたび、私はとても嬉しくなります。
後ろから抱きしめるのも好きですし、そのまま口付けるのも好きです。
ですが、向かい合うとアサヒの可愛らしい表情をつぶさに感じ取れるのでもっと好きです。
アサヒの腕が私の両肩へと回るのが、口付けの合図でした。
柔らかな甘い唇を啄むように口づけると、アサヒもそれに応えてくれます。
こういう時のアサヒは、いつもとても気持ちよさそうにしてくれるんですよ?
私のキスが上手いのではないかと錯覚するほどです。
私もとても気分が良い。
鼻の奥から脳内へと甘い香りが駆け上がり、もっと深くまで味わいたい気持ちをぐっと抑えます。
口付けだけでこのような気持ちになるのはアサヒが初めてです。
アサヒの細い腰を支えて、その体をサイドボードの上へと促すと、軽々と納まってしまいました。
アサヒの身体自体細いのですが、その腰は本当に細いと思います。
神器様だから、というのもあるかもしれませんが、身体の骨組みがもう私たちと違う気がするのです。
それにしても、アサヒの視線の方が少しだけ高いのは、新鮮ですね。
白く美しいアサヒの首筋を視線が捉え、私の下で乱れる姿を思い出してしまいました。
このまま軽い口づけを楽しむのもいいですが、深く甘い口づけに変えても誰も文句は言わないでしょう。
口付けは、口付けですから。
明るいうちから抱くわけじゃありませんし。
深く味わおうと、私がせがむ様に唇を寄せた時でした。
カタリと音が上がったその瞬間、アサヒがビクッと身を震わせました。
同時に息を飲み、視線を自分の右手に向けています。
どうやら、梟の足先とアサヒの手がぶつかってしまったようです。
「ふふっ……ごめんなさい」
アサヒのドキドキして鼓動がてのひらから伝わり、思わず笑いが漏れてしまいました。
もし梟を倒して壊してしまったとしても、私のせいです。
『すげーびっくりした』というアサヒは本当にびっくりしたようですね。
梟のせいで、甘い雰囲気がどこかへ消えてしまったようにも思います。
そのことに少しだけ悔しさが沸き上がりました。
「降ろしてくんね?」
「嫌だと言ったら?」
口では降ろして欲しいと言っても、そうしたくないのはアサヒも同じなのでしょう。
本当に可愛らしい人です。
「このままじゃお前の腕ん中にいても、こいつにずっと気を取られるけど?」
「それは困りますね」
「じゃあ───」
「ベッドとソファとどちらがいいですか?」
アサヒを抱き上げて問うと、アサヒがより可愛らしい顔を見せてくれました。
もう、このまま抱いてしまってもいいのではないでしょうか?
「っベッドは駄目だ」
残念ですね、駄目だそうです。
まあ、アサヒの真面目な性格上、今から抱かれるという選択肢はないのでしょう。
「……仕方ないですね。夜まで待ちましょう」
「そうしてくれ」
「喜んで」
『そうしてくれ』と言ったアサヒは、きっと有言実行です。
嫌だとは言わせませんし、私から誘わなければきっと可愛らしく誘ってくれるでしょう。
一瞬そちらへ、くらりと気持ちが傾いてしまいました。
ですが、アサヒからのお誘いはまた次の機会に楽しみにしておくことにします。
今夜は、私から。
最初から最後まで、心も身体もその全てを甘い優しさで満たしてあげましょう。
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