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一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~
長からの呼び出し
しおりを挟むクウガがエルフの里になんの用事があるのか――ちょっと気になるが、オレの知ったことではない。
用事を終わらせたら里を出て行くだけなんだし、気にしない気にしない。
下手に身の上話でも聞こうものなら、やっと切れたハズの腐れ縁が復活して、今世でもクウガとぶつかり続けなくちゃいけなくなる気がしてならない。
ってか、異世界転生してまで再会するって時点で、とんでもねぇ腐れ縁だ。
切ったんだからくっつけてくるな。もう楽にさせてくれ。腐れ縁のない自由でストレスフリーな生活を堪能させてくれ――。
……なんてことを考えながら家に戻ろうとしたら、
「ルカ兄っ、長が呼んでる。一緒に来て欲しい」
「……は?」
走ってきたアグードに呼び止められて、オレは顔を引きつらせながら振り向く。
「なんで長がオレを? クウガ……じゃなくて、人間との話は終わったのか?」
「それが、その人間に関してのことらしいんだ。俺も詳しいことは分からない」
お互いに顔をしかめてから、取り敢えず一緒に里長の所へ向かった。
森に囲まれた里の中で、ひと際大きな造りの洋館が長の所だ。白い壁がキレイで、小さな城と言ってもおかしくない家だ。
中へ入るとアグードが「こっちだ、ルカ兄」と長の元まで先導してくれる。
邸の奥にある部屋の前まで来ると、アグードはドアを小さくノックした。
「長、ルカ兄を連れてきました」
「うむ。入るがよい」
部屋の中からしわがれた長の声が聞こえてくる。
ドアを開けるとそこにはヨボヨボのちっちゃいじーちゃんエルフと、その向かい側で背を正してソファに座るクウガの姿があった。
オレの姿を見た瞬間、クウガの目が丸くなる。まるでオレが来るとは思っていなかったような反応。
オレも来ることになるとは思わなかったし、本音を言えば来たくなかったよ。
少しでも一緒に居ると、腐れ縁が修復して離れられなくなりそうだし。
早く話を終わらせてここを出たい……と心の底から思っていると、長がオレに向かって笑いかけてきた。眉もヒゲも長くて毛で隠れた顔から、ニッと歯が剥き出す。
「よく来てくれたのう、ルカ。こちらの方は里を救って下さった騎士様でな――」
「存じております。戦ってる場でお会いしましたから」
ガラじゃないと思いながら、丁寧な言葉遣いで話を返す。いくらオレでも里の偉い人にタメ口は使わない。あとエルフのじーちゃん長、可愛いし。怖がらせたくないし。
オレの余所行き態度に気づいているようで、長はホッホッ、と笑ってから話を続けた。
「既に会っておるなら話は早いのう。実はクウガ様は東方にあるビスマイン王国の騎士様でな、魔物討伐の際に呪いをかけられてしまい、解呪の旅を続けているそうじゃ」
「呪い、ですか……」
視線をチラリとクウガに向けると、端正な顔をわずかにうつむかせながら、悔しげに目を細めているのを見てしまう。不覚を取って悔しい、という心の声が漏れ出ている。
ああ、コイツのことが手に取るように分かってしまう自分がイヤだ。こっちの世界では初対面なのに。
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