その腐れ縁、異世界転生でリセットOK?~縁は続くよ、どこまでも~

天岸 あおい

文字の大きさ
上 下
6 / 39
一章 細マッチョエルフの受難~転生しても腐れ縁?ありえねぇ……~

顔も名前も同じだが

しおりを挟む
 オレが盛大に叫んだことで、その場の誰もが驚き、ビクッと体が跳ねる。

 偶然に作ってしまった隙。クウガは見逃さなかった。
 腰を落としたかと思えば力強く地を蹴り、魔獣たちが集まっている所に飛び込む。

 そして剣をひと振り――キャウンッ、と犬のような鳴き声を上げながら、魔獣たちが次々と切られて地に伏していく。

 オレはクウガの戦いぶりに目を奪われ、立ち尽くす。
 素早く動いてもブレない体幹、熱くなり過ぎず冷静に周りを見ている目、甘さを微塵も感じさせない凛々しい顔、無駄のない剣技……オレより高い身長。

 ちくしょう! 前はオレと変わらない背丈だったのに! しかも戦い方が洗練されていて、オレの理想がクウガの顔して服着て動いていやがる。

 これがもしクウガじゃなかったら、速攻で「弟子にして下さい!」って頼み込むのに。
 なぜクウガ? どうして神様はオレに理想を授けてくれなかった? 不公平だろマッチョ神!

 軽く半泣き状態になっていると、魔獣たちを蹴散らしてしまったクウガが心配そうな顔して近づいてきた。

「ケガはないか? 一番負担がかかっていたと思うんだが……緊張の糸が切れて泣きそうになっているんだな。安心してくれ、もう大丈夫だ」

 あー、前世で散々見てきたクウガの心配性だ。あと人のこと勝手に決め込みやがるのも同じだ。前と違うのは背丈と、髪が長くなって後ろで縛ってるってところぐらいか。

 思わず顔を見上げて凝視していると、無骨な手がオレの目元まで伸びて涙を拭ってきた。

「や、やめろ……っ!」

 慌ててオレはクウガの手を叩いて睨みつける。

「クウガ、お前、なんでこっちに来た? なんのためにオレが異世界に来たと思ってんだよ!?」

「……? 何を言って――」

「異世界転生してまで切れない腐れ縁ってなんだよ! 魂レベルでストーカーするな! 何をやりたいんだよ、お前はいったい――」

「君とは初対面なのだが……」

 ……え?
 クウガは前世のこと、覚えてない?

 オレは何度か目を瞬かせてから、心の中でグッと拳を握った。

(よしっ! 覚えていないなら、さっさと立ち去ってもらえばこの縁は終わりってことだな!)

 こっちに来てまでクウガと一緒だなんて勘弁して欲しい。
 オレはエルフの里で楽しく暮らすから、クウガはオレに構わず自由にしてくれ。

 頬を叩いて鋭くなった目つきを戻すと、オレはにっこりと愛想笑いを浮かべた。

「これは失礼しました。私の古い知人に似ておりまして……里を救って頂き、ありがとうございます」

「訳あってこの里に立ち寄らせてもらったが、助けが間に合って本当に良かった」

 フッ、とクウガが優しく微笑む。
 なんかこそばゆいなあ……と思っていると、オレたちの間にアグードが割り込んできた。

「クウガ様、里長がお呼びです。どうか一緒にお越し下さい」

「あ、ああ、分かった」

 短く頷いてアグードに答えた後、クウガはオレと目を合わせた。

「君の名は?」

「……ルカ、だ」

「ルカ、君がいなければ里の被害はもっと大きかっただろう。いい戦いぶりだった」

 小さく手を振りながらそう言い残し、クウガはアグードに連れられて里長の家に向かっていく。

 その背を見つめながら、オレは心の底から願う。
 どうか早く用事を終わらせて立ち去ってくれ、と――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい

パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け ★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

俺が総受けって何かの間違いですよね?

彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。 17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。 ここで俺は青春と愛情を感じてみたい! ひっそりと平和な日常を送ります。 待って!俺ってモブだよね…?? 女神様が言ってた話では… このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!? 俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!! 平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣) 女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね? モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

処理中です...