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11月のバス停

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 11月になり肌寒い季節がやってきた。僕は手袋をつけて自転車を漕ぎながら通学した。
 朝、廊下で彼女と顔を合わせた。
「ねえ、久しぶりに一緒に帰りましょう?」
「いいよ。」
 そして放課後。僕らは学校を出て、バス停の方に並んで歩いた。ふと彼女が僕の顔を見て聞いた。
「進路は決まったの?」
「大学では心理学を専攻しようと思ってるんだ。」
「どうして心理学なの?」
「なんとなくだよ。」
「心理カウンセラーになるの?」
「そこまでは決めてない。先になってみないと分からないよ。」
「そっか。」

「私はね、社会福祉を専攻をしようと思うの。」
「どうして社会福祉なの?」
「なんとなくよ。」
「福祉の仕事に就くの?」
「"先になってみないと分からないわ"」
僕らは顔を合わせて笑った。懐かしい気持ちになった。
 僕が目指している大学は2つ隣の駅なので実家から通学する予定だった。彼女の方は10個ほど離れた駅にあり、一人暮らしをする予定らしい。
「一人暮らしなら色々と気を付けてね。」
「ありがとう。でも受かってからの話よ。」
彼女は笑いながら言った。
「心配してくれてるのね。」
僕の頬を小突く。
 それから僕達は試験に向けて勉強に集中し、一緒に帰ることはなくなった。
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