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久々のバス停

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 次の月曜日。
 登校すると席に着いていた彼女と目が合った。僕らは同時に目をそらした。顔が熱くなった。
 僕は授業を聞きながら土曜日のことを考えていたが、よく思い出せなかった。彼女の手を握ったことだけを思い出すと鼓動が速くなった。
 それからの日々は、廊下ですれ違えば軽く挨拶する程度で、これといった会話もしなかった。そんな風にして1か月が過ぎた。部活動もしておらず、また友達もいない僕は夏休みになると暇になった。いつものことだ。
"友達"
 彼女は今、何をしているだろうか。連絡してみようかと携帯を手に取ったが、少し考えてやめた。僕はいつも通り宿題をしたり、公園に行ったり猫を撫でたりして過ごした。そうして僕の平凡な夏休みは終わった。
 9月になり学校が再開した。
 ある日、いつものようにグラウンド横の自動販売機で缶コーヒーを買って帰ろうとしたところで、彼女とばったり会った。お互いに戸惑っていたが、僕の方から話しかけた。
「何だか久しぶりだね。」
「そうね。」
「一緒に帰る?」
「うん。帰りましょう。」
 僕らは並んでバス停の方に歩き始めた。以前と比べてお互いに口数は減っていた。他愛もない話をしているうちにバス停に着いた。
 5分ほど経ってバスが来ると、彼女は乗り込んだ。1番後ろの席は埋まっており、彼女は後ろから3番目の席に座った。彼女はいつものように小さく手を振っていたが、今までとは違う笑顔だった。
 そうして僕はまた日常に戻った。学校の近くにあるあの公園にはいつの間にか寄らなくなっていた。家に帰ってから彼女のことを考える日もあったが、その回数も次第に減っていった。
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