最初に抱いた愛をわすれないで

侍女マリアの日記

7

「レディ・アントレットの体調は比較的安定している。メンタルのほうは君の献身のおかげかな？ミス・マリア」



今日は私単独でナミル医師に呼ばれました。
因みに、リネージュ様は薬が効き始めたため、眠られております」


「体調が安定しているのは安心しております。私はリネージュ様に拾われた身です、献身などと…」


「いやいや、拾われたにしてもそれをずっと恩に感じて仕えることができるのは素晴らしいことだ。」

「有難うございます、今日はもう…？」


ナミル医師は、私と会話しているのですが、書類に目を落としたまま眉間にしわを寄せておられます。
一体何かあるのでしょうか？

「ナミル医師…リネージュ様になにか…？」


はっとした感じでナミル医師は私のほうを向かれました。


「すまない…まぁレディのことといえばそうなのだが…。君は以前は隣国のクロス侯爵家に仕えていたな？」

クロス侯爵家…リネージュ様の元婚家にございます。
クロス侯爵の不倫でもってその結婚生活は終わってしまいました。
あの時のリネージュ様のことを思うと…


「ミス・マリア？」

今度は私がナミル医師に声をかけられました。
「いえ…はい、そうです。私は確かにクロス侯爵家に仕えておりました。それがなにか？」


「無礼を承知で尋ねる、レディ・アントレットはクロス侯爵家と現在交流はないのか？」


なにをいうのだ、離婚した家と交流をもつなどありえない！

「も！もちろんでございます！！」


ナミル医師は私の勢いに吃驚したようだった

「す、すまない…あー私はちょっと言葉が足りないというか…申し訳ない」

そういってナミル医師は頭をさげてきたのでございます。


「い、いえ…私も勢いがありすぎて申し訳ございません。しかしリネージュ様は現在クロス家とは交流はございません。ゼン医師…はクロス家の専属医師でございますが、それもリネージュ様がクロス家に籍を置いておられたときのことでございます。今回はたまたまの機会でございました。」


「そうか…うん、そうだよな。はぁ」


頭を抱え込んでしまったナミル医師、いったいどうしたのでございましょうか？



「ナ、ナミル医師？」


「んぁ？あぁ…そうだな。なぜ君をここへ呼んだかというと…」




「…というと？」

ゴクリとのどが鳴ってしまいます。




「クロス侯爵…当主。アレク・クロス様からリネージュ・アントレット様へ面会を希望する手紙が届いているんだ」