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第一章
25.【なんだそれは】●●
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勇者の身を引き裂く力は、実に十数メートルの岩盤を穿つに値する衝撃と振動が必要となる。
四天王──水帝を冠する騎士『リカルダ』の力はフェリシアの代より以前の、勇者達との戦いの中で完成されたと言われていた。
『水』の有する権能は世界を構成する多くの要素を含んでおり、ゆえに強力無比。
これは当然ながら歴代の勇者達の中にも同様に、呪詛とは異なる形で水を操ったり性質を取り入れた者が居たほどに基本元素と考えられている。
火があらゆる生物を脅かす属性であり現象であるのと同じだ。
水はあらゆる生物の身を癒し循環し尽きぬ。
ただ、火と異なるのは──それは水という括りに収めるには本来なら大きすぎる役割を担い過ぎているという点だろう。
傷ついた獣が水に身を浸せば穢れを落とし、流れ出た血を濯げば傷口の癒しを助け、飲めば命を紡ぎ、熱を払い、火をも退ける。
強力。
その言霊が示すよりも広く、大きく、勇者達が扱う力よりも遥かに強い『水』を水帝のリカルダは己が手足の如く支配し武器とする。
人々はそれを天災の魔王とも称し、そして歴代の勇者達は雨を恐れるほどに水帝を警戒していた。
──── かつて、勇者という名が生まれた頃における『四天王最強』とは水帝リカルダを指していたいた程に。
「だが……一度は、倒した相手だ……ッ!」
王国城下町から無数の『水の騎士』を巻き込んで転移して来た勇者フェリシアは、肺を満たしていた血液を一気に吐き出しながら土砂の中から這い出て来た。
目算での質量を計算しての転移を使ったのだが、水帝のリカルダはフェリシアの動きを見て即座に騎士達の質量を増加させていたらしい。
緊急の転移は失敗した。
(──城下町が近い……距離にしてギリギリ二里半ほどか。
地中深くに転移したが土中の砂は砂鉄が多かったか? ……スライムどもの追撃が無いという事は、まだこちらに水帝は追いついていないのか)
緋色の衣装が鮮やかな赤に染まり、その内側から揺れ動く魔力の光がその色を濃くさせる。
転移時に刺された負傷箇所は既に治癒していた。
フェリシアの髪が赤から黒へ変わり、雨の音が激しさを増すのと共に白銀に変わって、また黒髪になる。
脳震盪のような感覚が彼の身体を鈍くさせている様だった。
(なんだ……僕の体、どうなってるんだ……?)
ブレる視界。
加速度的に体の傷が癒える度に、フェリシアの頭の中が何かを取りこぼしたように軽くなっていくのが分かった。
それが悪いものではないと分かっていても、意識してしまうほどに。
──足元が揺れる。
「……ッ! 出て来たか……!」
勇者フェリシアの転移した場所はエストの森とは異なる、王都から離れた平野の盆地だった。
フェリシアが水の魔剣を手にしたまま飛び退いた直後、土砂が爆発して地中から溢れ出た間欠泉めいた水鉄砲が曇天に立ち昇る。
噴き出したそれらはただの泥水ではない。
水帝のリカルダが召喚した水の騎士達が溶け合い濁流となった姿である、魔力を含んだ異常に重い質量と衝撃を有したモンスターだった。
空にまで昇った濁流は一定の高度に達してから滝のようにフェリシア目掛け落ちて来る。
明らかに雨水をも取り込んで巨大化したと見える津波の様な光景が迫る最中、フェリシアが魔剣を一閃させて水の鉄槌を頭上で切り裂いて跳躍した。
フェリシアの魔力が内側で膨れ上がり、爆裂となって濁流を飛散させる。
ザバァ! と激しく波打ち辺り一帯に散らされた泥水は暫しの空白を置いた後、フェリシアが着地するより先に渦を巻いて地面からヒト型と成り立ち上がって行く。
形を崩せば倒せるわけではないのが、水。
(あの時は……ノエルと二人で戦っていたんだった)
フェリシアの水の魔剣は、彼の魔術によって固めた特殊な構造になっている。
かつてそうした魔剣を扱っていたのは──仲間だったが、今はフェリシアの武器は自身の構築した物しかない。
怪力と魔術による衝撃強化で水の騎士を吹き飛ばしながら、本体である水帝を倒したのが『以前』の戦いだった。
自分の力だけで戦わねばならない、その事実を改めて実感しながら──少しずつ思考と身体の間にあった『ズレ』を修正していく。
(ルシールは水帝のリカルダを何らかの魔術で弱体化させていた、奇跡ではなかった筈だ……今の僕に同じ事が出来るとは思えない。
あの、二人に増えた雷帝のフローレンスを倒した時は必死だったからよく覚えてないけど……属性を相手に合わせていた? 水の騎士達がまだ起き上がって来るのを見るに、効いてるわけじゃない……何が必要なんだ?
水帝のリカルダの気配が近くなってきている……速い。
雨だ、降り注ぐ雨を媒介に高速で短距離の転移を繰り返している……!?
そもそも『この世界』は雷帝のフローレンスの時と同じように、また水帝のリカルダが二人や三人になる可能性がある……そんな事があり得るのかは、分からないが。
雷帝と違って最悪……この距離だと王国を巻き込みかねない、慎重に戦う余裕などありはしない……!)
水の騎士達が一斉に地面を滑るように高速で突進してくる。
揺れる赤い髪。
フェリシアの眼光が鋭く走った直後、辺り一帯を爆風と白銀の吹雪が騎士達を吹き飛ばす。
彼を中心に拡がった魔力が誘導線のように起点となり、一瞬で膨れ上がった冷気が雨や水の騎士を氷結させた事で大気中に爆発を起こしたのだ。
猛る吹雪の最中で音を置き去りにしたフェリシアが水の魔剣を走らせ、次々に原型をまだ留めていた水の騎士達を砕いて行く。
バギン、と鳴り響く粉砕音に次いで瞬く緋色の閃光。
凍り付いていた大気が天上からの雨粒によって冷気を衰えさせた頃に、また水が降り注ぎ始める。
しかし凍結した地面を半ば滑るように足を止めたフェリシアの周囲に水の騎士の姿は無く、彼の手には背丈の数十倍ある巨大化した氷の大剣が握り締められていた。
「はぁ────ッ!!」
刹那。
雨の降りしきる景色そのものを切り裂くかのように、フェリシアが掴み振り抜いた氷の大剣が爆風と共に斬撃を宙に放った。
踏み込んだ彼の周囲のぬかるんだ地面がクレーターとなり陥没する一方、奔った衝撃波が音も無いままに雨の降る景色を真っ白に染め上げて行く。
砕け散る大剣。
キラキラとした氷結の吹雪が舞う最中、彼の放った斬撃の向こうから切り返すかのような凄まじい水柱が飛来する。
(来たか……!)
転移で空中へ逃れたフェリシアの眼下で岩同士が衝突したかのような轟音が鳴り響く。
攻城塔並みの大質量の水柱がフェリシアの立っていたクレーターを更に深く抉り取り、爆ぜ飛んだ土砂や岩盤の破片が平野の一帯を土砂と濁流で滅茶苦茶にしていた。
それだけの水を操り、威力すら雷帝フローレンスの一撃をも凌ぐ攻撃を可能とするのは水帝のリカルダだけだ。
────蛇の如く揺れ動く水流。
降りしきる雨の中で連続した氷結に次ぐ濁流の一撃は、大時化の海と同等の嵐を平野に発生させる。
その嵐の中で不自然に像がはっきりとした水帝のリカルダは、悠然と曲剣に大盾を構えながら無数の水流を僕のように追随させて言った。
「今宵此処においては不動にして不滅なる我が戦域……勇者、貴様の首はこの私が討ち取ります」
「……──やってみろ。水遊びに付き合ってやる」
ドシュ、と鈍く響くは水帝のリカルダに追随していた水流の一筋がまるで矢の如く奔った音だ。
緋色の衣装が脇腹の辺りを散らして、同時に鮮血を雨粒に溶かす。
怯まず、直後にフェリシアが自らを抉り穿った水の矢を掌で捉えて凍結させ瞬時に魔剣へと転じさせる。
水分を瞬きの間に凍り付かせるが故にその刀身から白銀の煙が揺れ、尾を引いてフェリシアの軌跡を描き出す。
水帝のリカルダの銀髪が異様にもサラサラと揺れ動く。
構えたフェリシアを包囲するように、召喚された水の騎士達が姿を形成し終えるよりも先に突き出される槍の穂先。
降り注ぐ雨をも弾く斬撃が打ち払う。
氷結──言葉にすれば単純な現象だが水の支配を行っている水帝のリカルダにして見れば、フェリシアの魔術は眉を潜めるものだった。
蒸発させるべく大熱量の炎や、雨を阻む結界を張った方が何倍も効率が良い筈なのに。
なぜ、彼はそうせず氷に変える事を選ぶのか。
(この感覚、まさかこの男……私の支配権を取り除いているのか? 回りくどい事をする)
砕け散る騎士達。
凍結、或いは雪の結晶めいた形状に変化させられた水分は当然ながらすぐに溶ける物。
水帝のリカルダにしてみれば一時しのぎも良い所の苦肉の策としか思えなかったが、フェリシアの周辺を『雫の呪詛』で操ろうとして彼女はその力が何故か及ばない事に気付いた。
勇者──フェリシアは己が魔力で覆った水分量を一瞬で凍結させているだけではなく、氷へと転じさせる為の魔術を展開させているのだ。
そんな魔術式は存在しない筈だ、と水帝のリカルダは膨大な水の津波を背後に発生させながら考える。
あれば歴代の勇者達のいずれかが同じようにしただろう、それか水帝のリカルダの■■のいずれかが進言した筈だ。
それだけではない、深く思考すればするほどにフェリシアの取っている行動と行使する魔術は異様である。
(使われている魔術の内部工程で考えられるのは凍結……私の支配権を解除ないし奪取するには更にそれらが純粋な水へと戻る事を阻止しなければならない。つまりあれは奴の魔力を帯びた物となる、凍結、氷結、性質付与……それだけを可能にするのにどれだけの工程を積む気だ。そんな事が出来るのは我が主と、ガートルードの奴ぐらいのもの……)
ドプン、と大気を不自然に弾んだ音が鳴り響く。
水帝のリカルダが剣を振りかざした直後に雲を引き裂くにまで至った巨大な水柱が立ち昇り、凄まじい地響きを連続させながら彼女を避けてフェリシアに向かい『水の刃』が襲い掛かった。
平野のあらゆる障害物、地中深くにまで至り振り下ろされたのは大質量にして超広範囲のウォーターカッターである。
バキバキッ!! と金属を引き裂く音が鳴る。
衝撃波を後から伴う水の刃が過ぎ去ったそこには、白銀の霧が舞うばかり。
血煙のひとつも無いまま姿を消したフェリシアに次いで、今度は水帝のリカルダが盾を前面に押し出しながら後ろへ飛び背中から全身を水へと転じさせて雨の降る景色へと消える。
──刹那に連続する白煙の爆発。
雨の中を転移しながら著しく後退した水帝のリカルダが突如姿を虚空から現した直後、構えていた大盾が罅割れ砕け散る。
半月を模した曲剣、ショーテルの刃が振り抜かれた後に鮮血が散り。その冷たい月の輝きを持った
刃が閃いた後に水帝のリカルダを中心とした一帯が水の刃で溢れかえる。
大気を打つ音。
懐へ転移したフェリシアが水で形成した魔剣を振り抜いて水帝のリカルダを切り裂く、だがその眼前でいとも容易く断ち割られた体を元に戻して見せる四天王は認識阻害によって隠した表情の裏で驚愕の色を浮かべていた。
「どうした」
水の刃が四方八方から乱れ撃つ最中、瞬時に転移を繰り返しながら躱したフェリシアの声ばかりが響く。
衝撃波に煽られる事なく、水帝のリカルダと打ち合いを繰り広げる。
無傷ではない、何度も水帝のリカルダは自らの召喚する騎士や操る大質量の津波、水の刃で切り裂き傷つけ破壊しながら追い詰めている筈だった。
だが一瞬だけ赤い血液が飛び散るだけで、それらは容易くフェリシアの肉体へと戻って損傷個所を治癒させてしまう。
「貴様……なんだ、それは……!?」
「何がだ」
「その体──ッ! 何故だ、お前は勇者のはずだ……それではまるで私達のようじゃないか……!!」
何より。
水帝のリカルダが焦るべきはそこではない。
たかが一人、単騎の勇者など『例外』を除けば水帝一人で事足りる様な相手の筈だったのに。
鋼鉄を一撃で断ち切る水の刃が凍結され、同時にその隙間を縫って転移しながら水帝のリカルダへ一直線に攻撃をして、更に追撃や迎撃あらゆる包囲攻撃をも捌き切っているのだ。
白兵戦が劣るというわけでもない。
水帝とて四天王、数多の勇者を屠って来た過去から成る剣戟は雫の呪詛を併せれば最強を誇ると自負していた。
フェリシアの反応速度は、加速度的に増している。
対応も、上段からの振り下ろしを捌きながら脇を切り裂こうとしたショーテルを拳で打ち払って見せたフェリシアに魔力の奔流をぶつけられて後退した時から飛躍的に上がっている。
水の刃が勇者の片腕を捉えた。
しかしそれを膂力だけで打ち抜いて弾き、水飛沫と氷結の粉塵を散布させながら一気に水帝のリカルダへと距離を詰めて来た。
腕力でどうにかなる力ではない。
(まずい、この男……どんどん力が増して──……!?)
フェリシアが水の騎士達に飛び掛かられて動きを止めたかに見えたのも束の間、瞬時にそれらを凍り付かせて内側から『電撃』で弾き飛ばした直後。
水帝のリカルダは自らの半身がパキリ──と、静かに凍り付いている事に気付いた。
「っ、馬鹿な……! 水になれない────」
その隙を、フェリシアは見逃さなかった。
爆ぜる落雷が土砂ごと周囲を吹き飛ばして道を開いた瞬間、転移の音が鳴り響いて肉薄して来た勇者が水帝のリカルダの首筋へ真っ直ぐに氷結の魔術帯びた魔剣が横薙ぎに振り抜いた。
衝撃波に雨が吹き散らされる。
再び雨に打たれる間際、水帝のリカルダは自身の首に半ば切り込まれた魔剣の冷たさを感じると共に──動きを止めた勇者フェリシアを見た。
「……?」
「──……その子は」
気づけば、フェリシアの鋭かった目つきが穏やかな雰囲気に戻っていた。
同時に長く伸びた赤い髪も黒く戻り、そして──その視線の先には水帝のリカルダを背にして震えながらフェリシアの前に立つ少女が、地中から上半身だけ生やす様にして手を広げていた。
見覚えがあった。
「お、おかあさまを……ころさないで……!」
かつての世界で、フェリシアが救い共に旅をしたスライムの少女。
傷ついたノエルやルシールを王国騎士団から逃がしてくれた、あの日を最後にした仲間が──水帝のリカルダを庇っていた。
勇者の身を引き裂く力は、実に十数メートルの岩盤を穿つに値する衝撃と振動が必要となる。
四天王──水帝を冠する騎士『リカルダ』の力はフェリシアの代より以前の、勇者達との戦いの中で完成されたと言われていた。
『水』の有する権能は世界を構成する多くの要素を含んでおり、ゆえに強力無比。
これは当然ながら歴代の勇者達の中にも同様に、呪詛とは異なる形で水を操ったり性質を取り入れた者が居たほどに基本元素と考えられている。
火があらゆる生物を脅かす属性であり現象であるのと同じだ。
水はあらゆる生物の身を癒し循環し尽きぬ。
ただ、火と異なるのは──それは水という括りに収めるには本来なら大きすぎる役割を担い過ぎているという点だろう。
傷ついた獣が水に身を浸せば穢れを落とし、流れ出た血を濯げば傷口の癒しを助け、飲めば命を紡ぎ、熱を払い、火をも退ける。
強力。
その言霊が示すよりも広く、大きく、勇者達が扱う力よりも遥かに強い『水』を水帝のリカルダは己が手足の如く支配し武器とする。
人々はそれを天災の魔王とも称し、そして歴代の勇者達は雨を恐れるほどに水帝を警戒していた。
──── かつて、勇者という名が生まれた頃における『四天王最強』とは水帝リカルダを指していたいた程に。
「だが……一度は、倒した相手だ……ッ!」
王国城下町から無数の『水の騎士』を巻き込んで転移して来た勇者フェリシアは、肺を満たしていた血液を一気に吐き出しながら土砂の中から這い出て来た。
目算での質量を計算しての転移を使ったのだが、水帝のリカルダはフェリシアの動きを見て即座に騎士達の質量を増加させていたらしい。
緊急の転移は失敗した。
(──城下町が近い……距離にしてギリギリ二里半ほどか。
地中深くに転移したが土中の砂は砂鉄が多かったか? ……スライムどもの追撃が無いという事は、まだこちらに水帝は追いついていないのか)
緋色の衣装が鮮やかな赤に染まり、その内側から揺れ動く魔力の光がその色を濃くさせる。
転移時に刺された負傷箇所は既に治癒していた。
フェリシアの髪が赤から黒へ変わり、雨の音が激しさを増すのと共に白銀に変わって、また黒髪になる。
脳震盪のような感覚が彼の身体を鈍くさせている様だった。
(なんだ……僕の体、どうなってるんだ……?)
ブレる視界。
加速度的に体の傷が癒える度に、フェリシアの頭の中が何かを取りこぼしたように軽くなっていくのが分かった。
それが悪いものではないと分かっていても、意識してしまうほどに。
──足元が揺れる。
「……ッ! 出て来たか……!」
勇者フェリシアの転移した場所はエストの森とは異なる、王都から離れた平野の盆地だった。
フェリシアが水の魔剣を手にしたまま飛び退いた直後、土砂が爆発して地中から溢れ出た間欠泉めいた水鉄砲が曇天に立ち昇る。
噴き出したそれらはただの泥水ではない。
水帝のリカルダが召喚した水の騎士達が溶け合い濁流となった姿である、魔力を含んだ異常に重い質量と衝撃を有したモンスターだった。
空にまで昇った濁流は一定の高度に達してから滝のようにフェリシア目掛け落ちて来る。
明らかに雨水をも取り込んで巨大化したと見える津波の様な光景が迫る最中、フェリシアが魔剣を一閃させて水の鉄槌を頭上で切り裂いて跳躍した。
フェリシアの魔力が内側で膨れ上がり、爆裂となって濁流を飛散させる。
ザバァ! と激しく波打ち辺り一帯に散らされた泥水は暫しの空白を置いた後、フェリシアが着地するより先に渦を巻いて地面からヒト型と成り立ち上がって行く。
形を崩せば倒せるわけではないのが、水。
(あの時は……ノエルと二人で戦っていたんだった)
フェリシアの水の魔剣は、彼の魔術によって固めた特殊な構造になっている。
かつてそうした魔剣を扱っていたのは──仲間だったが、今はフェリシアの武器は自身の構築した物しかない。
怪力と魔術による衝撃強化で水の騎士を吹き飛ばしながら、本体である水帝を倒したのが『以前』の戦いだった。
自分の力だけで戦わねばならない、その事実を改めて実感しながら──少しずつ思考と身体の間にあった『ズレ』を修正していく。
(ルシールは水帝のリカルダを何らかの魔術で弱体化させていた、奇跡ではなかった筈だ……今の僕に同じ事が出来るとは思えない。
あの、二人に増えた雷帝のフローレンスを倒した時は必死だったからよく覚えてないけど……属性を相手に合わせていた? 水の騎士達がまだ起き上がって来るのを見るに、効いてるわけじゃない……何が必要なんだ?
水帝のリカルダの気配が近くなってきている……速い。
雨だ、降り注ぐ雨を媒介に高速で短距離の転移を繰り返している……!?
そもそも『この世界』は雷帝のフローレンスの時と同じように、また水帝のリカルダが二人や三人になる可能性がある……そんな事があり得るのかは、分からないが。
雷帝と違って最悪……この距離だと王国を巻き込みかねない、慎重に戦う余裕などありはしない……!)
水の騎士達が一斉に地面を滑るように高速で突進してくる。
揺れる赤い髪。
フェリシアの眼光が鋭く走った直後、辺り一帯を爆風と白銀の吹雪が騎士達を吹き飛ばす。
彼を中心に拡がった魔力が誘導線のように起点となり、一瞬で膨れ上がった冷気が雨や水の騎士を氷結させた事で大気中に爆発を起こしたのだ。
猛る吹雪の最中で音を置き去りにしたフェリシアが水の魔剣を走らせ、次々に原型をまだ留めていた水の騎士達を砕いて行く。
バギン、と鳴り響く粉砕音に次いで瞬く緋色の閃光。
凍り付いていた大気が天上からの雨粒によって冷気を衰えさせた頃に、また水が降り注ぎ始める。
しかし凍結した地面を半ば滑るように足を止めたフェリシアの周囲に水の騎士の姿は無く、彼の手には背丈の数十倍ある巨大化した氷の大剣が握り締められていた。
「はぁ────ッ!!」
刹那。
雨の降りしきる景色そのものを切り裂くかのように、フェリシアが掴み振り抜いた氷の大剣が爆風と共に斬撃を宙に放った。
踏み込んだ彼の周囲のぬかるんだ地面がクレーターとなり陥没する一方、奔った衝撃波が音も無いままに雨の降る景色を真っ白に染め上げて行く。
砕け散る大剣。
キラキラとした氷結の吹雪が舞う最中、彼の放った斬撃の向こうから切り返すかのような凄まじい水柱が飛来する。
(来たか……!)
転移で空中へ逃れたフェリシアの眼下で岩同士が衝突したかのような轟音が鳴り響く。
攻城塔並みの大質量の水柱がフェリシアの立っていたクレーターを更に深く抉り取り、爆ぜ飛んだ土砂や岩盤の破片が平野の一帯を土砂と濁流で滅茶苦茶にしていた。
それだけの水を操り、威力すら雷帝フローレンスの一撃をも凌ぐ攻撃を可能とするのは水帝のリカルダだけだ。
────蛇の如く揺れ動く水流。
降りしきる雨の中で連続した氷結に次ぐ濁流の一撃は、大時化の海と同等の嵐を平野に発生させる。
その嵐の中で不自然に像がはっきりとした水帝のリカルダは、悠然と曲剣に大盾を構えながら無数の水流を僕のように追随させて言った。
「今宵此処においては不動にして不滅なる我が戦域……勇者、貴様の首はこの私が討ち取ります」
「……──やってみろ。水遊びに付き合ってやる」
ドシュ、と鈍く響くは水帝のリカルダに追随していた水流の一筋がまるで矢の如く奔った音だ。
緋色の衣装が脇腹の辺りを散らして、同時に鮮血を雨粒に溶かす。
怯まず、直後にフェリシアが自らを抉り穿った水の矢を掌で捉えて凍結させ瞬時に魔剣へと転じさせる。
水分を瞬きの間に凍り付かせるが故にその刀身から白銀の煙が揺れ、尾を引いてフェリシアの軌跡を描き出す。
水帝のリカルダの銀髪が異様にもサラサラと揺れ動く。
構えたフェリシアを包囲するように、召喚された水の騎士達が姿を形成し終えるよりも先に突き出される槍の穂先。
降り注ぐ雨をも弾く斬撃が打ち払う。
氷結──言葉にすれば単純な現象だが水の支配を行っている水帝のリカルダにして見れば、フェリシアの魔術は眉を潜めるものだった。
蒸発させるべく大熱量の炎や、雨を阻む結界を張った方が何倍も効率が良い筈なのに。
なぜ、彼はそうせず氷に変える事を選ぶのか。
(この感覚、まさかこの男……私の支配権を取り除いているのか? 回りくどい事をする)
砕け散る騎士達。
凍結、或いは雪の結晶めいた形状に変化させられた水分は当然ながらすぐに溶ける物。
水帝のリカルダにしてみれば一時しのぎも良い所の苦肉の策としか思えなかったが、フェリシアの周辺を『雫の呪詛』で操ろうとして彼女はその力が何故か及ばない事に気付いた。
勇者──フェリシアは己が魔力で覆った水分量を一瞬で凍結させているだけではなく、氷へと転じさせる為の魔術を展開させているのだ。
そんな魔術式は存在しない筈だ、と水帝のリカルダは膨大な水の津波を背後に発生させながら考える。
あれば歴代の勇者達のいずれかが同じようにしただろう、それか水帝のリカルダの■■のいずれかが進言した筈だ。
それだけではない、深く思考すればするほどにフェリシアの取っている行動と行使する魔術は異様である。
(使われている魔術の内部工程で考えられるのは凍結……私の支配権を解除ないし奪取するには更にそれらが純粋な水へと戻る事を阻止しなければならない。つまりあれは奴の魔力を帯びた物となる、凍結、氷結、性質付与……それだけを可能にするのにどれだけの工程を積む気だ。そんな事が出来るのは我が主と、ガートルードの奴ぐらいのもの……)
ドプン、と大気を不自然に弾んだ音が鳴り響く。
水帝のリカルダが剣を振りかざした直後に雲を引き裂くにまで至った巨大な水柱が立ち昇り、凄まじい地響きを連続させながら彼女を避けてフェリシアに向かい『水の刃』が襲い掛かった。
平野のあらゆる障害物、地中深くにまで至り振り下ろされたのは大質量にして超広範囲のウォーターカッターである。
バキバキッ!! と金属を引き裂く音が鳴る。
衝撃波を後から伴う水の刃が過ぎ去ったそこには、白銀の霧が舞うばかり。
血煙のひとつも無いまま姿を消したフェリシアに次いで、今度は水帝のリカルダが盾を前面に押し出しながら後ろへ飛び背中から全身を水へと転じさせて雨の降る景色へと消える。
──刹那に連続する白煙の爆発。
雨の中を転移しながら著しく後退した水帝のリカルダが突如姿を虚空から現した直後、構えていた大盾が罅割れ砕け散る。
半月を模した曲剣、ショーテルの刃が振り抜かれた後に鮮血が散り。その冷たい月の輝きを持った
刃が閃いた後に水帝のリカルダを中心とした一帯が水の刃で溢れかえる。
大気を打つ音。
懐へ転移したフェリシアが水で形成した魔剣を振り抜いて水帝のリカルダを切り裂く、だがその眼前でいとも容易く断ち割られた体を元に戻して見せる四天王は認識阻害によって隠した表情の裏で驚愕の色を浮かべていた。
「どうした」
水の刃が四方八方から乱れ撃つ最中、瞬時に転移を繰り返しながら躱したフェリシアの声ばかりが響く。
衝撃波に煽られる事なく、水帝のリカルダと打ち合いを繰り広げる。
無傷ではない、何度も水帝のリカルダは自らの召喚する騎士や操る大質量の津波、水の刃で切り裂き傷つけ破壊しながら追い詰めている筈だった。
だが一瞬だけ赤い血液が飛び散るだけで、それらは容易くフェリシアの肉体へと戻って損傷個所を治癒させてしまう。
「貴様……なんだ、それは……!?」
「何がだ」
「その体──ッ! 何故だ、お前は勇者のはずだ……それではまるで私達のようじゃないか……!!」
何より。
水帝のリカルダが焦るべきはそこではない。
たかが一人、単騎の勇者など『例外』を除けば水帝一人で事足りる様な相手の筈だったのに。
鋼鉄を一撃で断ち切る水の刃が凍結され、同時にその隙間を縫って転移しながら水帝のリカルダへ一直線に攻撃をして、更に追撃や迎撃あらゆる包囲攻撃をも捌き切っているのだ。
白兵戦が劣るというわけでもない。
水帝とて四天王、数多の勇者を屠って来た過去から成る剣戟は雫の呪詛を併せれば最強を誇ると自負していた。
フェリシアの反応速度は、加速度的に増している。
対応も、上段からの振り下ろしを捌きながら脇を切り裂こうとしたショーテルを拳で打ち払って見せたフェリシアに魔力の奔流をぶつけられて後退した時から飛躍的に上がっている。
水の刃が勇者の片腕を捉えた。
しかしそれを膂力だけで打ち抜いて弾き、水飛沫と氷結の粉塵を散布させながら一気に水帝のリカルダへと距離を詰めて来た。
腕力でどうにかなる力ではない。
(まずい、この男……どんどん力が増して──……!?)
フェリシアが水の騎士達に飛び掛かられて動きを止めたかに見えたのも束の間、瞬時にそれらを凍り付かせて内側から『電撃』で弾き飛ばした直後。
水帝のリカルダは自らの半身がパキリ──と、静かに凍り付いている事に気付いた。
「っ、馬鹿な……! 水になれない────」
その隙を、フェリシアは見逃さなかった。
爆ぜる落雷が土砂ごと周囲を吹き飛ばして道を開いた瞬間、転移の音が鳴り響いて肉薄して来た勇者が水帝のリカルダの首筋へ真っ直ぐに氷結の魔術帯びた魔剣が横薙ぎに振り抜いた。
衝撃波に雨が吹き散らされる。
再び雨に打たれる間際、水帝のリカルダは自身の首に半ば切り込まれた魔剣の冷たさを感じると共に──動きを止めた勇者フェリシアを見た。
「……?」
「──……その子は」
気づけば、フェリシアの鋭かった目つきが穏やかな雰囲気に戻っていた。
同時に長く伸びた赤い髪も黒く戻り、そして──その視線の先には水帝のリカルダを背にして震えながらフェリシアの前に立つ少女が、地中から上半身だけ生やす様にして手を広げていた。
見覚えがあった。
「お、おかあさまを……ころさないで……!」
かつての世界で、フェリシアが救い共に旅をしたスライムの少女。
傷ついたノエルやルシールを王国騎士団から逃がしてくれた、あの日を最後にした仲間が──水帝のリカルダを庇っていた。
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