本当はあなたを愛してました

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第三部

お茶③

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「旦那様は、よく言えば正直者ですが、初対面の方にしかもダーニャ様の親しかった方に、ご自分の異常な性癖を語るとは変質者以外の何者でもないでしょう」


「デボラ、性癖って君ね、私は持論を述べただけだよ。私自身のことを語ることがそんなにいけないことかい?
ねぇサラ嬢」



「ほら、またそうやってサラお嬢さまをみつめて、気色悪がられますよ!
サラお嬢様、気にしないでください、旦那様は色に惹かれているのです」



「は、はぁ」

「先日は高齢女性のウィッグをガン見して"これは地毛ですけど何か!" と怒らせていましたし、

この間は女性の首元のスカーフを見つめて
、胸元を見つめているとビンタされていたではありませんか


その度にいちいち説明して回る私の気持ちを考えたことはありますか?


ああ、カフェに行った時はコーヒーの黒い色が堪らないと30分以上はみつめていましたね、混雑した時に何度も店員から注意されていたにも関わらず」



「あぁ、あの時ね、そんなこともあったかな、
何か言いたそうだねサラ嬢」


「いえ、なんだかフェリクス様の印象が違うなぁと」


「良い意味で違うと嬉しいのだが。
紳士に振る舞おうとしているんだが、大抵いつも皆、離れていくんだよね

ダーニャは面白いと言ってくれたし━」

それまで軽快な口調で話していたフェリクス様だったが、うつむいて目頭を押さえて言い淀む

ふーっと呼吸を整えるとまた明るく話し始める



「メグミは気にしないし。」




「メグミ様はお金にしか興味ないのですよ。いい加減利用されていることに気づいたらどうなんでしょう」


「はっはっ、お金ね、メグミは私に執着してないし、意外と優しい所もあるんだよ」

「意外とって普段優しくないことを認める言い方ですね」

2人のやりとりを呆然と見つめていた

「サラお嬢様、旦那様は黙っていたらモテそうに見えますが、中身が変わっているので、全くモテないのです。むしろ引かれます。じっと見つめる癖がありますので、ご不快の時は殴っても良いと思います」


「デボラ、暴力はよくないと思うよ。」

フェリクスさまは軽く咳払いをして改めて向き合う

「あなたの国ではかんがえられないでしょう? デボラとは主従関係でもあり良き相談者でもあるのです。
あぁ、もう今更取り繕っても格好がつかないよね。ごめん、もう素で接することにする。サラ嬢も敬語はいらないからね」


「はぁ」


気のない返事しかすることが出来ずにその場を後にした

世の中には色々な考えを持った人がいる、とダーニャお姉様はおっしゃっていたけれど…

とりあえず深く考えることを放棄して、受け入れることにしよう

今はマリのことが心配だわ


マリの様子をみに部屋を訪れると医師が退室する所にいあわせる


「あの、先生少しお時間よろしいでしょうか?」


「はい、構いません何か?」


意を決してマリが異物(毒)を飲んだ可能性がないのかを尋ねることにした

毒と口に出すことはためらいもあったので、誤飲の可能性がないかとか

アレルギー的なものではないのかとか


マリが誰かに恨まれることなど考えられない


まして遠い異国で


でも幼い頃から健康そのものだったマリが急に倒れるだなんて、何か異国の食べ物に原因があると思えてならなかった

例えば免疫がある自国の人が食べても平気な物とか
 何かしらの中毒ではないかと疑ってしまう


最初は警戒対象に思えたフェリクス様だけど、先程のデボラとのやり取りを見て、どうも思っていたのとは違う人だった


うがった見方をして少しでも疑ってしまったことを反省するばかり


疑っている訳ではないけれど、
それとなくバタフライピーを飲んだらしいことも伝えた

医師の返答はもっともらしいことだった






















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