本当はあなたを愛してました

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第ニ部

サラお嬢様②

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デボラさんに連れられて、私とカオリは
用意された馬車へと乗りこんだ

あの人がいるのかと緊張していたけれど、馬車の中には誰もいなかった。

私の心中を察してかデボラさんは
「お嬢様はお二人を迎える為に先にお戻りになっています」

と尋ねてもいないのに述べる。

どこに連れていかれるのだろうか。

カオリは最初こそ馬車に乗ったことに興奮してはしゃぎ、窓から外を眺めていたけれど、そのうちに疲れたのかうとうととまどろみ始めた。


どのくらい馬車に揺られただろう。

馬車が停車する頃には、カオリは寝息をたてていた。熟睡するカオリを抱き抱えると、デボラさんと共に馬車から降りる。

馬車が停車したのは、大きな邸宅の前だった。

私達が玄関の付近に近づくと、中からお仕着せ姿の女性が扉を開けてくれた。

デボラさんがその女性に耳打ちすると、その女性は一礼して立ち去った。

間もなく若い男性使用人と中年の女性が現れた。

「お嬢様をお預かりします」

若い男性がカオリを抱えようと手を伸ばしてきた。

見ず知らずの人に大事なカオリを預けられるはずもない。

私は断固拒否した。

しばらく言い合っていたけれど、埒があかないので、結局そのままカオリを抱き抱えていくことになった。


案内された部屋へ到着すると、カオリをソファーに寝かせた。先程の中年の女性がブランケットを手渡してくれたので、カオリへブランケットをかけると、私は別のソファーへと案内された。


とても広い部屋だったけれど、見える所にカオリがいるからほっとする。
二人で話したいから別室でと提案されたけど、そんなこと出来るわけがない。


デボラさんが退室して間もなく、ノックの音が聞こえた。

そして室内に現れたのは、あの人だった。

「久しぶりね、リナ。元気だった?」

全身に一気に鳥肌が立つ。

あぁ、この人は全く何も感じていないのだわ。

気軽に話しかけてくる口調は

まるで懐かしい知人にでもあったかのようだ。

どういう神経をしているのだろう。

私は冷静に言葉を交わせる準備ができていなかった

「とりあえずまずは紅茶を淹れましょう。


サラお嬢様は、室内に用意されたティーセットへと手を伸ばし、ゆったりと紅茶を淹れる。

不本意だけれど、紅茶の芳醇な香りを感じじる。

「どうぞ。心配しなくても毒なんて入ってないわ。ふふふ」


私の警戒心を解くためなのだろうけれど、笑えない。

頑なに紅茶には手をつけなかった。

サラお嬢様とこうして一緒に向き合うと、必然的に商会を辞めたあの時のことを思い出す。


じっと見つめていると(睨んでいたともとれるくらいに)

サラお嬢様はティーカップをゆったりとテーブルに戻すと、私へと視線を向ける。

「急に呼び出して驚いたでしょう?
ごめんなさいね。リナにちょっとお願いがあって。
 提案というべきかしら。
ちょっと、私の話しをきいてくれるかしら?少し長くなるけれど」


こちらの返答など初めから求めていないかのように、あの時と同じくサラお嬢様は淡々とと語り出した。






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