本当はあなたを愛してました

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第一部

隣街へ ①

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隣街へと出発する日になった。
とうとうこの日が来てしまった。
本当に行きたくない…

でもアーノルドさんがいるのが救いだった。

朝、出発の挨拶をして、皆に見送られながら私達は隣街へと出発した。


隣街へは馬車での移動になる。
護衛の方は前方と後方におり、盗賊などの襲撃に備えていた。

盗賊を恐れて、商会のロゴの入っていない、一般用の馬車を借りている。
なるべく目立たないようにサラお嬢様も平民の装いだった。治安が悪い訳ではないけれど、この時期は商会の出入りが多いので、それに伴い盗賊に狙われる危険も増える。特に今回はサラお嬢様も同行する為、警備には力を入れている。


馬車の中ではサラお嬢様とルーカス、向かい側にアーノルドさんと私が隣り合わせで乗っていた。


耐えれない空気感だったらどうしようと胃の辺りを押さえながら不安でたまらなかった。


意に反して実際に馬車が動き出すと、サラお嬢様は相変わらず普段と同様にルーカスや私にも、アーノルドさんにも話しかけてくれ、それに相槌をうつ形で、表向きは和やかに過ごすことができた。
私とルーカスはお互い目を合わせないようにしているので、明らかに不自然な様子なのだけど…

サラお嬢様は気にも留めていないようだった。お嬢様の考えていることは分からない。きっと貴族の方だし、私達とは感覚が違うのかもしれない。



隣国へ到着すると、サラお嬢様達は交渉の為に貴族邸へと向かうことになっている。
私は交渉の場には参加しないので、宿で待機して良いと言われた。


皆を見送りほっと安堵する。

このまま宿にいることも考えたけれど、せっかくなので少し街を歩いてみることにした。


この時期は様々な商会の方達が訪れているので、街には活気が溢れてる。
父から聞いた通りだった。とても賑やかで、確か柑橘系のジュースが名物だと言っていた。

ちょうど喉が渇いたので私はグレープフルーツジュースを購入した。程よい酸味が喉を潤す。周囲を見回すと同じようにドリンクを片手にお店を見てまわっている人が多い。皆お土産を購入するのだろう。

お土産…


そうだわ。エミリオに、エミリオに何かお土産を買って帰ろう。

あの日、落ち込んでる私を励ましてくれた日を境に、エミリオと会う頻度が多くなった。

特に何をするでもなく、ただ一緒に歩いたり、買い物をしたり、その日のことを話したりするのが私にとって唯一の心の救いとなっていた。

友人にお土産を買うのは別に普通のことだよね…

私は誰に許しを求めているのか分からないけれど、言い訳を自分に言い聞かせながら、お店を見て回った。

ふと出店の一つに、便箋や万年筆が並んでいるのが目に留まる。
そうだわ、エミリオは書類仕事も多いと言っていたわ。お世話になっているし、ちょっと奮発してこの万年筆をプレゼントしよう。

万年筆にはイニシャルが刻んであった。私はエミリオのE の文字が刻んである万年筆を購入した。エミリオは喜んでくれるかな


自分にも可愛い花柄の便箋を。
父へは限定の紅茶を。いつも父は隣国の紅茶をお土産に買ってきてくれていたから。
せっかくのお土産なのに、紅茶は苦手だと子供ながらに文句を言っていたけれど。いつのまにかその紅茶が好きになっていた。不思議なものね。

今度は私が父に渡そう。私がルーカス達と隣国へと行ったと知れば、色々な意味で驚くわね。心配をかけたくなくて今回のことはまだ報告していなかった。お土産を渡す時に驚かそう。私は大丈夫だって。


従業員の方達皆へも柑橘系味のクッキーを購入した。

皆のお土産も購入して、エミリオや父へ渡す時のことが楽しみになり、足取りも軽く宿へと戻った。

とても浮かれていて、サラお嬢様やルーカスと一緒だということを忘れかけていた。











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