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 意識も朦朧とし始める中、引きずられるようにして身体が着地したのはどこだかもわからないベッドの上だった。

はやてくん? 颯くん? 一体どうしたんですか?」

 とっくにスラックスの中で張りつめている下腹の中心が脈を持つように疼いて、正気では考えられないことだが由貴ゆきの手を取ってそこに導く。

 由貴がゆっくりと中心を布越しに撫で上げただけで達してしまいそうな快感が突き刺して「由貴……小鳥遊たかなしに……何か……変な薬盛られたみてぇなんだ……。身体がおかしい……助けてくれ……」と縋りつく。

あかりちゃん、あんな顔して大胆なんですね……」

 言いながら、俺のスラックスを下着ごと引き抜いて、既にふるふるとち上がってしとどに濡れそぼっている血管の浮いた硬い芯に由貴の細くて白い指が絡まっただけで「あっ、ぁ……由貴っ」と喘ぎ声を噛み殺す余裕すらもない。

「全部脱ぎましょうね? 颯くん」

 スーツの上着を脱がされて、ネクタイを外され、シャツのボタンを全て外されて俺の身ぐるみが剥がされていく。

「テメェもっ……全部脱げよっ……」

 もうどうにでもして欲しい、熱い身体を由貴の素肌に絡ませたい、そんな衝動に駆られて挑発するように由貴のネクタイを引き抜く。

 由貴がフッと呆れたように笑いながら、それでもいとうことなく己の衣服を手早く脱ぎ捨てて裸身らしんで覆い被さってくる。

 濡れた下肢の中心が、由貴のそれと重なってかすかに熱が上がった。

「あまりにも苦しそうなので一度出しましょうか?」

 俺はその言葉に首を左右に振って、「嫌だ……テメェできてぇ……」と、由貴の首に腕を絡みつかせた。

「陽ちゃんの盛ってくれた薬は効果抜群みたいですね? 颯くんがそんなことを言ってくれるなんて明日は猛吹雪でしょうか?」

 言って、由貴がヘッドボードからローションを取り出して、チューブから液体をとろりとてのひらに馴染ませて粘着質な音を立てながら温めた。

(ローション? 何で? ここはどこだ?)

「由貴、ここは……?」

「あれ? 颯くんそこまで意識朦朧でしたか? ラブホです。一緒に来るのは初めてですね? 僕はよく来てましたけど」

 いつもならそんな言葉に腹が立つのに、今は一刻も早くくすぶった熱を解放して欲しくて由貴の背に縋った。

「も、そんなん、どうでもいいから……早く来いっ」

 今この時だけでも、由貴が戻ってきたと思いたくて。
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