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 明朝──。

 僕は暖人はるとに支えられながらタクシーに乗って、市の総合病院まで連れ添ってもらったのだけれど。

 熱があるのでてっきり風邪だろうと思って内科を受診して、でも、窄まりがズキズキ痛くて、そのことを医師に伝えるとすぐに肛門科に回されて。

「肛門周囲膿瘍のうようですね。裂肛れっこうしていた部分から菌が入ってうみが溜まっています。熱があるのもそのせいですよ。局所麻酔で切開して膿を出しましょう? 大丈夫、夕方には日帰りで帰れますよ」

 にっこり微笑んだ医師に僕は及び腰。
 暖人はまた拳を握りしめて、僕の肩に手を置いた。

葵晴あおは、頑張れな。俺は会社に遅刻って言ってあるから、ちょっと顔出して休み貰ってくる。また迎えにくっから、待ってろな?」

 僕はゆっくり頷いて、看護師に促されるまま処置室に入った。
 すぐに医師がやってきて、尾てい骨の辺りに麻酔の注射を打たれて。

 ぎゅっと目を閉じたまま、恐怖に怯えながら処置を受けた。

 暖人に、手を握っていて欲しかったなんて言ったら、僕はおかしいだろうか。

 僕はもう、暖人に縋りつこうなんて思っていないし、一緒にいたらトラウマを思い出して辛いはずなのに。

 でも、暖人の温かさは確かに僕の求めているそれで。

 考え事をしているとあっという間に処置は終わって、医師に「もう起き上がって大丈夫ですよ」と声をかけられて上半身を起こしたのだけれど、局所麻酔のせいか足がガクガクして動かない。

 看護師が僕を車椅子に乗せてくれて。
 僕は病室の一室の空いているベッドにそっと降ろされた。

「抗生剤の点滴を夕方まで続けますね」と言われて、腕に点滴を刺される。
 膿を出したせいか熱も和らいできたし、後孔の痛みも薄らいで、昨夜は熱と痛みで殆ど眠れなかったせいか、すぐに意識が微睡まどろんで。

 暖人、いつ迎えに来てくれるかな……なんて、窓の外を見つめながらぼんやり考えた。

 来栖くるす先輩に縋ったせいで、暖人に死にたいだなんて言わせたばかりか、こんなことになって迷惑をかけたんだ……なんて考えたら瞳が滲んで。

 こめかみに涙を伝わせながら、そっと意識を手放した──。
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