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「来栖」
翌朝──。
暖人と一緒に出勤して朝礼が終わるなり、暖人は僕の腕を引いて来栖先輩のデスクに近づいた。
来栖先輩が、暖人に冷淡な視線を向けた。
「来栖先輩、でしょ? 日高くん。急にどうしたの?」
暖人が拳を握りしめた。
僕は暖人が来栖先輩に何か乱暴な真似をしないかとハラハラしてしまう。
「うるせぇよ。お前、俺より年下だろ。ちょっと資材室まで付き合え。話がある」
来栖先輩がにこやかに笑った。
その笑みは、僕のよく知っている来栖先輩の温厚な優しい笑みだ。
「俺には話すことはないけど? また椎名を取り戻したいって話? それなら無駄だよ。椎名はもう俺のものだから」
「じゃあ、ここで話す。お前、葵晴に何やってんだよ。葵晴のこと何だと思ってんだよ。あんな傷つけて平気で俺のもんとか言えんのか? お前と葵晴の関係ってなんだよ?」
来栖先輩が、やっぱりにこやかに笑った。
僕は、来栖先輩が何て答えてくれるのか、どこかで期待している自分に気付く。
「やっぱり資材室に行こうか。ここで話すのは憚られる」
来栖先輩がデスクから立ち上がって、僕たちを資材室に促した。
資材室には顧客から引き取った、これから修理して販売する中古パソコンが所狭しと積み上げられている。
資材室で、暖人が僕の腕を解放した。
「葵晴のことなんだと思ってる?」
再び、暖人が来栖先輩に詰め寄る。
来栖先輩が、何か考える素振りを見せた。僕は、どんな返事が返ってくるんだろうと萎縮してしまう。
「そうだね、セフレかな? 日高くんに渡したくないんだ」
それを聞いた暖人が、来栖先輩を思い切り殴りつけた。
僕は、来栖先輩の回答にショックを受けてしまって、心が放心状態で、それを制御しようとすることも出来ない。
呆然とする目の前で、来栖先輩が舌打ちをして暖人を殴り返すのを朧気な瞳で見つめた。
「も……いい……もう、いい……」
震える声でそれだけ喋ると、二人が僕を見つめた。
「葵晴?」
暖人が心配そうな瞳を僕に向けた。
流したつもりもない涙が頬を伝って、僕は走って資材室を後にした。
翌朝──。
暖人と一緒に出勤して朝礼が終わるなり、暖人は僕の腕を引いて来栖先輩のデスクに近づいた。
来栖先輩が、暖人に冷淡な視線を向けた。
「来栖先輩、でしょ? 日高くん。急にどうしたの?」
暖人が拳を握りしめた。
僕は暖人が来栖先輩に何か乱暴な真似をしないかとハラハラしてしまう。
「うるせぇよ。お前、俺より年下だろ。ちょっと資材室まで付き合え。話がある」
来栖先輩がにこやかに笑った。
その笑みは、僕のよく知っている来栖先輩の温厚な優しい笑みだ。
「俺には話すことはないけど? また椎名を取り戻したいって話? それなら無駄だよ。椎名はもう俺のものだから」
「じゃあ、ここで話す。お前、葵晴に何やってんだよ。葵晴のこと何だと思ってんだよ。あんな傷つけて平気で俺のもんとか言えんのか? お前と葵晴の関係ってなんだよ?」
来栖先輩が、やっぱりにこやかに笑った。
僕は、来栖先輩が何て答えてくれるのか、どこかで期待している自分に気付く。
「やっぱり資材室に行こうか。ここで話すのは憚られる」
来栖先輩がデスクから立ち上がって、僕たちを資材室に促した。
資材室には顧客から引き取った、これから修理して販売する中古パソコンが所狭しと積み上げられている。
資材室で、暖人が僕の腕を解放した。
「葵晴のことなんだと思ってる?」
再び、暖人が来栖先輩に詰め寄る。
来栖先輩が、何か考える素振りを見せた。僕は、どんな返事が返ってくるんだろうと萎縮してしまう。
「そうだね、セフレかな? 日高くんに渡したくないんだ」
それを聞いた暖人が、来栖先輩を思い切り殴りつけた。
僕は、来栖先輩の回答にショックを受けてしまって、心が放心状態で、それを制御しようとすることも出来ない。
呆然とする目の前で、来栖先輩が舌打ちをして暖人を殴り返すのを朧気な瞳で見つめた。
「も……いい……もう、いい……」
震える声でそれだけ喋ると、二人が僕を見つめた。
「葵晴?」
暖人が心配そうな瞳を僕に向けた。
流したつもりもない涙が頬を伝って、僕は走って資材室を後にした。
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