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 それから暖人はるとが僕をお風呂に入れてくれて。
 窄まりに抗炎症作用のある軟膏を塗ってくれてから、スウェットに着替えさせられて僕の部屋に手を引かれる。

 そっと、ベッドに横たえられた。
 暖人が、この部屋に入ったのは三ヶ月ぶりだ。

 三ヶ月前までは、毎日この部屋で一緒に眠っていたのに、何だか遠い昔の出来事のようだ。

「暖人には、ソファを貸すって言っただろ?」

 暖人は何も言わず、僕と一緒に布団に包まった。
 優しく、頭を持ち上げられて腕枕をしてくれて、片方の手で僕の身体を布団の上から抱きしめた。

 散々流した涙がまたこぼれる。

 幸せだったな。ずっと、幸せだったな。
 暖人と出会う前までの僕は、仲良くなった男友達を好きになってしまう自分の性癖に絶望していて、こんなこと誰にも言えなくて。

 でも、暖人には何故か言えた。
 暖人なら、受け止めてくれるんじゃないかって思った。

 だから、一世一代の告白をした。

 それが結ばれて、どんなに幸せで、どんなに愛おしい時間だったか。
 それが壊れて、どんなに悲しんで、どんなに苦しい時間だったか。

 それを、救ってくれたのが来栖くるす先輩だった。
 こんなことをされていても、来栖先輩が離れていってしまうのが怖いのは、暖人と過ごした幸せな時間と同じくらい、幸せな時間を与えてもらえたから。

 あの行為は、来栖先輩へのお礼なんだって思えば、身体を差し出すことくらい些細なものだと思った。

「なぁ、葵晴あおは。俺、やっぱ部屋を探すのはやめる。こんなお前を一人にしておけるかよ」

「僕なら……大丈夫だよ……。心が壊れるのも、身体が壊れるのも、全部僕がこんなんだから悪い。受け入れて生きていくしかないんだよ。だから暖人は、ちゃんと部屋を探して。僕は……暖人と居るのだって辛い」

 暖人が、腕枕をしていた頭を寄せた。
 鼻先がこすれ合う感触がくすぐったい。

「付き合ってる時も言ったよな? 葵晴はなんも悪くねぇ。自分をおとしめんなって言ったよな? 俺は、葵晴の全部を受け入れるって言ったよな? 俺が裏切っちまったことは、どうすれば許される? もう裏切らねぇって、どうすれば信じてもらえる? 俺は葵晴の傍にいたい」

 どうしたら、信じられるんだろう──。

 僕だって、出来ることなら暖人を信じたい。
 でも、怖くて仕方がないんだ。あの日のトラウマが、こびりついて離れないんだ。

「もう、寝よう……暖人。僕、疲れちゃった。明日も来栖先輩と会うと思うから」

 暖人が、僕の頭をぎゅっと抱きしめて、やっぱり涙がこぼれた。
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