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 瞳から涙がポロポロこぼれて。
 けれど、来栖くるす先輩はどんなに「痛い」と訴えても抽挿をやめてはくれない。

「すっごい、締め付け。泣くほど、気持ちいいっ? 椎名しいなっ、俺もう、イキそうっ」

 言葉と同時、中に来栖先輩の熱が吐き出されて。
 ヒリヒリと痛む窄まりからトロリと液体が双丘に伝った。

 来栖先輩がそっと萎びたそれを引き抜く。
 いつものように優しい手付きで僕の頭を撫でた。

「くる……す、先輩……?」

「気持ちよかった? 椎名」

 その瞳は、またいつもの温厚なそれで。
 来栖先輩には悪意はなかったんだ。ただ、わからなかっただけ。僕を故意に痛めつけたわけじゃなかったんだ。

 だけど──。

 僕が来栖先輩の背中に腕を回そうとした瞬間。
 それを許さない速さで肩を押さえ込まれ身体を離された。

 やっぱり、僕を好きな気持ちは何一つないんだ。

「気持ち……よかったです」

 まだ、切れた窄まりがヒリヒリと痛むけれど僕は笑顔で答えた。
 笑顔……だったと思う。ちゃんと、笑えた、と思う。

「これからは俺が抱いてあげるからね? 日高ひだかくんとは早く関係を断ちな? 椎名のことは俺が守る」

 身体だけでも繋げられたら幸せだと思っていたはずなのに、心は余計に冷えて。

「来栖先輩は……僕のこと、どういう気持ちで抱いてくれたんですか?」

 来栖先輩がティッシュで己の下腹部を拭って、それをゴミ箱に投げ捨てた。
 上半身を起こすと、真っ白なシーツの上に、少しだけ血が滲んでいた。

「椎名を日高くんから救いたいって気持ちだよ? 好きって気持ちには応えられないけれど、椎名が俺を好きなら嬉しいよね? 日高くんより俺が好きなんだよね? また抱いてあげるから。ほら、椎名も早く支度して? 帰ろ?」

 僕はスラックスと下着を身に着ける。
 そっか、来栖先輩が暖人はるとから救ってくれるんだ。また、抱いてくれるんだ。

 嬉しいのに、何で涙がこぼれそうなんだろう──。
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