上 下
2 / 3

中編 変貌

しおりを挟む
 エリーナの体格はお世辞でもいいと言えるものではなかった。
 背は低く、手足は短い。
 顔は整っているが、痣のせいで醜いと言われ続けてきた。
 しかし鏡に映るエリーナの姿はまったくの別人だった。

 背は伸び、手足は長く、そして何より、今までずっと悩まされてきた痣が消え、透き通るような白い肌に生まれ変わっている。


「これが私ですか?」


 凄く綺麗。
 自分でも見惚れてしまいそう。


 部屋の扉が叩かれるのと同時に声が聞こえる。
 この声はエリーナの母親の声である。


「エリーナ、入るわよ」

「お母様」

「エリーナ・・・!?エリーナなの!?あ、あなたー!!」

「どうしたんだい大声を出して。エリーナ!?どうしたんだいその姿は?」


 起き上がっていることに驚くと共にあまりにも変わったエリーナの姿に腰を抜かしてしまう母親。
 駆けつけてきた父親も驚きを隠せていない。


「なんだか綺麗になってしまいました」


◇◇


 着替えた後お父様とお母様が待つ食堂へと向かう。
 エリーナとすれ違ったメイド達は足を止め、エリーナの姿につい見惚れてしまう。

「お嬢様、物凄くお綺麗になれたわよね」
「本当!天使と見間違うほど綺麗」


食堂で待っていたお父様とお母様はエリーナのドレス姿を見て、涙した。


「どうして泣くのですか?」

「すまない。エリーナは今まで痣を理由にドレスを着たがらなかったから」

「お父様はエリーナの結婚式でドレス姿が見られると楽しみにしていたのよ。でも急に食中毒で倒れて、命が危ないってなって、無事で良かったわ」

「迷惑かけてごめんなさいお父様、お母様」


 その場の全員が涙していた。
 
 家族で食卓を囲みながら、あの日に在ったこと説明するエリーナ。
 お父様は憤怒した。


「あのリゾットが!好青年だと思っていたが猫を被っていたか。すまないエリーナ。私の見る目無さで酷い思いをさせた」

「お父様は悪くないです」

「そうよ。あなたは悪くないわ。悪いのはリゾットよ。婚約は無かったことにしましょう。それでエリーナ、学園には戻るの?」


 エリーナは学園に通っている学生だ。
 学園には貴族が多く、学園生活を通じて多くの人脈と交流を深めることが出来る。
 婚約者が決まったためエリーナは休学していたのだ。

「はい。戻ろうと思います。やりたいことも見つけました」

「やりたいこと?一体どんな?」

「それは―」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
 もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。  誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。 でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。 「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」  アリシアは夫の愛を疑う。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?

和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」  腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。  マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。  婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?    

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。

雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」 妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。 今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。 私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

処理中です...