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ろく。
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ついに明日、ママが入院する。頑張れ会でお外ご飯をしようって、ママが自分で言い出した。
イタリアン系のファミレスでお腹いっぱい食べて、ママはご機嫌だ。
帰り道、並んで歩いていたら、ママのスマホがピロピロ鳴った。バッグから取り出して、アタフタと画面をのぞき込んで⋯⋯三センチの段差を踏み外してた。
「うひゃあ⋯⋯ッ。ババちゃんからメールだった。手術の確認だね。⋯⋯⋯⋯やばい、なんか腰に違和感なんだけど」
歩きスマホ、ダメ、絶対。とかブツブツ言いながら、腰をさすっている。ママは日頃から『運動神経をババちゃんのお腹の中に忘れてきた』と言っているだけあって、反射神経も鈍い。
スズ?
ママのお腹の中に、そんなもの初めからなかったよ? パパはよく『スズは中も外も、オクさんにそっくりだなぁ。俺の遺伝子、底無しの胃袋しかない』って言ってるよ。
そんな前日を過ごして、入院初日。
「いってら~。ご飯よろしくね。本当はダーさんがやらなきゃなんないとは思うけど、旦那の躾、失敗しちゃってさぁ」
「こらこら、オクさん。全部聞こえてるよ」
「聞かせてるから」
相変わらずの夫婦漫才で学校に送り出されて、帰宅すると、ママはいなかった。代わりに冷蔵庫にあっためるだけの肉じゃがとほうれん草のごま和え、お味噌汁用にきざんだネギがあって、今夜からママに会えないんだなぁって思った。
「スズ、ママからメール」
パパが見せてくれたのは、オレンジ色の空に薄紫色の富士山の影。
『窓から見えた。超ラッキー。明日は神様が見ててくれる気がする╰(*´︶`*)╯♡』
それから、白いテーブルの上に乗った給食みたいなご飯。
『なにもしなくてもご飯が出てくる。なんて幸せ(๑>◡<๑)』
「なんか、めっちゃママらしいんだけど」
「いや、中身、お前もだから」
「もう、パパ。漫才の相方はママだけにしといて。スズ、ご飯炊かなきゃ」
日曜日の朝、ババちゃんが夜行列車でやってくる。ほんの数日だけど、スズが頑張らなくちゃ。
その日のご飯は上手に炊けた。三合炊きしか練習してないから、ふたり分には多いけど、残ったらパパの明日のお昼ご飯になる。
一日冷蔵庫で眠っていた肉じゃがは味が染みてて美味しかった。
手術の日はパパは朝から病院に行った。でもスズが学校に行くときは家にいて、帰ってきても家にいた。
「ママ、どうだった?」
「ぎっくり腰に苦しんでた」
「は?」
「ほら、入院の前の日に踏み外してただろ? 」
腰に違和感とか言ってたね。
「あれが悪化して、ゾンビみたいに歩いてたよ」
ごめん、ママ。超ウケるんだけど。
「手術室まで歩くだろ? 上下に動かずに滑るように歩くんだ。バランスとるのになんとなく、手が前に出ててさ。うちのオクさん、笑いの神が降りてきてるんじゃないかと思ったよ」
手術は両方のおっぱいだから、他の人の倍の時間がかかったんだって。まぁ、二回分だし。出てきたときには麻酔が効いていて、目が覚めるまで待って帰ってきたらしいんだけど。
「起きて最初のひとことが笑えるんだ」
『痛み止めすごい。ぎっくり腰が痛くないって幸せ』
「看護師爆笑だよ」
スズは力が抜けたよ。
「ねぇ、パパ。やっぱりママは死なないね。お笑いの神様がついてるもん」
スズが炊いたご飯と乾燥ワカメとお麩のお味噌汁、レンチンハンバーグにコンビニの袋入り千切りキャベツをたっぷり添えて。ママの手術当日は、そんなふうに夕ご飯を食べた。
三回スズがご飯を炊いてお味噌汁を作った次の日、ババちゃんが夜行列車でやってきた。スズが生まれたときにも来てくれたんだって。そのときはアパートに住んでいたから、この家は初めてだって言ってた。
いつもは夏休みにスズとママで遊びに行くから、この家にババちゃんがいるのが不思議だ。
「スズちゃん、大きくなったねぇ」
「夏から身長伸びてないよ」
「あら、そげかね?」
「お義母さん、病院の面会時間は午後からだから、ちょっと昼寝でもしてください。夜行で疲れたでしょう」
「寝台列車だもん、よう寝たわ。そうで、手術はどげなった?」
ババちゃんの言葉は可愛い。ママも田舎に帰るとおんなじ喋り方になるけど。
ババちゃんはスズの部屋に荷物を置くと、早速冷蔵庫の中を確認して、買い物に行くと言った。
「スズちゃん、スーパーの場所は十年前と変わらん?」
「十年前がわかんない」
「変わりませんよ」
スズの代わりにパパが答えたけど、結局スズも一緒に買い物に行くことになった。
七人家族の台所を預かるババちゃんの用意してくれたお昼ご飯は、めっちゃ豪快だった。
「三人分て、難しいわぁ」
しきりに首を傾げている。とぼけたところがママそっくりで、ということはママに似てるスズもこんなんだ。
山盛りの焼きそばをお腹いっぱい食べて、それでも残ったのは、明日のお昼にお好み焼きに入れようって、ババちゃんが笑った。
イタリアン系のファミレスでお腹いっぱい食べて、ママはご機嫌だ。
帰り道、並んで歩いていたら、ママのスマホがピロピロ鳴った。バッグから取り出して、アタフタと画面をのぞき込んで⋯⋯三センチの段差を踏み外してた。
「うひゃあ⋯⋯ッ。ババちゃんからメールだった。手術の確認だね。⋯⋯⋯⋯やばい、なんか腰に違和感なんだけど」
歩きスマホ、ダメ、絶対。とかブツブツ言いながら、腰をさすっている。ママは日頃から『運動神経をババちゃんのお腹の中に忘れてきた』と言っているだけあって、反射神経も鈍い。
スズ?
ママのお腹の中に、そんなもの初めからなかったよ? パパはよく『スズは中も外も、オクさんにそっくりだなぁ。俺の遺伝子、底無しの胃袋しかない』って言ってるよ。
そんな前日を過ごして、入院初日。
「いってら~。ご飯よろしくね。本当はダーさんがやらなきゃなんないとは思うけど、旦那の躾、失敗しちゃってさぁ」
「こらこら、オクさん。全部聞こえてるよ」
「聞かせてるから」
相変わらずの夫婦漫才で学校に送り出されて、帰宅すると、ママはいなかった。代わりに冷蔵庫にあっためるだけの肉じゃがとほうれん草のごま和え、お味噌汁用にきざんだネギがあって、今夜からママに会えないんだなぁって思った。
「スズ、ママからメール」
パパが見せてくれたのは、オレンジ色の空に薄紫色の富士山の影。
『窓から見えた。超ラッキー。明日は神様が見ててくれる気がする╰(*´︶`*)╯♡』
それから、白いテーブルの上に乗った給食みたいなご飯。
『なにもしなくてもご飯が出てくる。なんて幸せ(๑>◡<๑)』
「なんか、めっちゃママらしいんだけど」
「いや、中身、お前もだから」
「もう、パパ。漫才の相方はママだけにしといて。スズ、ご飯炊かなきゃ」
日曜日の朝、ババちゃんが夜行列車でやってくる。ほんの数日だけど、スズが頑張らなくちゃ。
その日のご飯は上手に炊けた。三合炊きしか練習してないから、ふたり分には多いけど、残ったらパパの明日のお昼ご飯になる。
一日冷蔵庫で眠っていた肉じゃがは味が染みてて美味しかった。
手術の日はパパは朝から病院に行った。でもスズが学校に行くときは家にいて、帰ってきても家にいた。
「ママ、どうだった?」
「ぎっくり腰に苦しんでた」
「は?」
「ほら、入院の前の日に踏み外してただろ? 」
腰に違和感とか言ってたね。
「あれが悪化して、ゾンビみたいに歩いてたよ」
ごめん、ママ。超ウケるんだけど。
「手術室まで歩くだろ? 上下に動かずに滑るように歩くんだ。バランスとるのになんとなく、手が前に出ててさ。うちのオクさん、笑いの神が降りてきてるんじゃないかと思ったよ」
手術は両方のおっぱいだから、他の人の倍の時間がかかったんだって。まぁ、二回分だし。出てきたときには麻酔が効いていて、目が覚めるまで待って帰ってきたらしいんだけど。
「起きて最初のひとことが笑えるんだ」
『痛み止めすごい。ぎっくり腰が痛くないって幸せ』
「看護師爆笑だよ」
スズは力が抜けたよ。
「ねぇ、パパ。やっぱりママは死なないね。お笑いの神様がついてるもん」
スズが炊いたご飯と乾燥ワカメとお麩のお味噌汁、レンチンハンバーグにコンビニの袋入り千切りキャベツをたっぷり添えて。ママの手術当日は、そんなふうに夕ご飯を食べた。
三回スズがご飯を炊いてお味噌汁を作った次の日、ババちゃんが夜行列車でやってきた。スズが生まれたときにも来てくれたんだって。そのときはアパートに住んでいたから、この家は初めてだって言ってた。
いつもは夏休みにスズとママで遊びに行くから、この家にババちゃんがいるのが不思議だ。
「スズちゃん、大きくなったねぇ」
「夏から身長伸びてないよ」
「あら、そげかね?」
「お義母さん、病院の面会時間は午後からだから、ちょっと昼寝でもしてください。夜行で疲れたでしょう」
「寝台列車だもん、よう寝たわ。そうで、手術はどげなった?」
ババちゃんの言葉は可愛い。ママも田舎に帰るとおんなじ喋り方になるけど。
ババちゃんはスズの部屋に荷物を置くと、早速冷蔵庫の中を確認して、買い物に行くと言った。
「スズちゃん、スーパーの場所は十年前と変わらん?」
「十年前がわかんない」
「変わりませんよ」
スズの代わりにパパが答えたけど、結局スズも一緒に買い物に行くことになった。
七人家族の台所を預かるババちゃんの用意してくれたお昼ご飯は、めっちゃ豪快だった。
「三人分て、難しいわぁ」
しきりに首を傾げている。とぼけたところがママそっくりで、ということはママに似てるスズもこんなんだ。
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