ママは乳がん二年生!

織緒こん

文字の大きさ
6 / 12

ご。

しおりを挟む
 お米用のカップにすり切り三、ザルに入れて水で洗う。⋯⋯お米はとぐっていうんだって。ご飯炊き用のぽってりした土鍋に入れて内側の線まで水を入れて、三十分放置。

 それから中火で十五分。ぶくぶく吹いても触らない。鉄の釜じゃないから『はじめチョロチョロ~』じゃないんだって。土鍋はゆっくり熱を伝えるから、はじめチョロチョロとおんなじだって。

 お味噌汁は乾燥ワカメとお麩。もしくはきざんで一回分ずつ冷凍した油揚げ。粉末だしはアイスクリームスプーンで三杯、お味噌は大匙二杯強。

 十二月になったら、ひたすらご飯の炊き方とお味噌汁の作り方を練習した。毎日、ママがおかずを作る横でご飯とお味噌汁を作る。

「やっだ、うちの子天才。もう、ご飯とお味噌汁は完璧だね。おかずは三日分くらい作り置きして、冷凍食品も用意しておくから、ババちゃんが来てくれるまで持ち堪えてね」

 山陰の山の方に住んでいるババちゃんは、ママのお母さん。まだお仕事してるし、大ババちゃん(ひいおばあちゃん)をひとりにできないから、叔父さんと叔母さんのお仕事の都合もつけてから、関東まで来てくれる予定。

 ママが入院してから三日目くらいになるから、その間、なんとかご飯を食べなきゃならない。⋯⋯コンビニご飯、食べてみたいなぁって言ったら、怒られるかな? サンドイッチとかなら買うけど、なんかお弁当って買ったことないなぁ。

 年内で仕事に区切りをつけて、一月からは治療に専念するって、ママが言った。クリスマスもお正月も、去年までと変わらず楽しんで、来年やりたいこともいっぱい話した。

 初詣に行こうと着物を出したら、去年まで着ていたのがツンツルテンになっていた。オレンジに赤い椿の柄で、着物と羽織がセットになっている。アンサンブルっていうんだって。

「肩上げと腰上げ、ギリギリだねぇ。もう、ジュニアサイズは今年で終わりかぁ。来年はママの着物、肩上げしてあげるからね。」

 ママは柄のない濃い紫の着物を引っ張り出した。

「茄子紺の無地結城紬だよ。結城さんはあったかいから、冬のお出かけにはぴったりだね」

 ママはスズにパパッと着物を着せてから、自分も素早く着替えた。さすがに早い。ちなみにパパはいつもの格好よ。

「今日のスズとママの着物は普段着着物だから、パパがジーパンでも全然変じゃないよ。結婚式とかだったらぶっ飛ばすけどね」

 市内にあるちょっと大きな神社は、沢山の人で賑わっていた。屋台も沢山並んでいて、美味しそうなものがいっぱいある。木村家ルールでは、神様への挨拶が終わるまでは屋台の食べ物は買わない。

「スズ、足が痛くなったら言えよ。ママと違って草履に慣れてないだろう?」

「今のところ平気」

 結構並んだから、パパが心配してくれた。

 人の壁が暖かくて、あんまり寒くなかった。押しくら饅頭みたいだねって、ママが笑った。

 順番が来て、お賽銭を入れて神様にお願いする。

(ママの手術が成功しますように)

 他のなにをお願いするかなんて、思いつかないもの。

「さて、えびせん買って帰ろうか」

「そしてえびせんは、オクさんの肉となり肉となるのだ」

「肉肉言うな。ダーさんのいじわる」

 ママは屋台のえびせんが大好きで、この神社の祭礼のときは必ず買うんだけど、その度にパパと漫才めいたやりとりをする。どうせママが好きで買ったって、パパが半分食べちゃうのに。

 もちろんスズも食べるよ?

「ママ、スズ大阪焼き食べたい」

「いいよ」

「スズ、着物汚すなよ」

「⋯⋯頑張る」

 春になったら六年生になるんだもん。普段は食べこぼしはしないけど、袖とか邪魔だな。ちょっと不安。

「大丈夫、ポリポリちゃんだから。汚れてもお家で洗えるよ」

 ポリポリちゃん⋯⋯ポリエステルかぁ。じゃあ安心して食べられるね。

 ママにお金をもらって大阪焼きの屋台に並ぶ。

「あれ? 木村じゃん」

「うわぁ、高橋。あけましておめでとう」

 地元の神社だもん、そりゃ、クラスの子と会うよね。

「お、おぅ。おめでとう。お前、着物なん?」

「うん」

「そう言えば、木村の母ちゃんの手術ってまだ?」

「あと二週間くらいだよ」

 着物を見て、スズのママのこと思い出したのかな。高橋はなんだかモジモジして下を向いている。変なやつ。

 順番が来て大阪焼きをパパの分と二つ買って、高橋にじゃあねと手を振った。

「木村⋯⋯あのさ、俺、お参りのときに、木村の母ちゃん、手術が成功しますようにって、神様におねがいしとくよ!」

「ありがとう!」

 高橋、いいやつじゃん!

 みんなでお願いすれば、神様も叶えてくれるよね。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

かつて聖女は悪女と呼ばれていた

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」 この聖女、悪女よりもタチが悪い!? 悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!! 聖女が華麗にざまぁします♪ ※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨ ※ 悪女視点と聖女視点があります。 ※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

ハピネコは、ニャアと笑う

東 里胡
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞受賞 目が覚めたら昨日だった。知ってる会話、見覚えのあるニュース。 二度目の今日を迎えた小学五年生のメイのもとに、空から黒ネコが落ちてきた。 人間の言葉を話し魔法を使える自称ハッピーネコのチロル。 彼は西暦2200年の未来から、逃げ出した友達ハピネコのアイルの後を追って、現代にやってきたという。 ハピネコとは、人間を幸せにするために存在する半分AIのネコ。 そのため、幸せの押し付けをするチロルに、メイは疑問を投げかける。 「幸せって、みんなそれぞれ違うでしょ? それに、誰かにしてもらうものじゃない」 「じゃあ、ボクはどうしたらいいの? メイのことを幸せにできないの?」 だけど、チロルにはどうしても人間を幸せにしなければいけないハピネコとしての使命があって……。 幼なじみのヒューガ、メイのことを嫌うミサキちゃんを巻き込みながら、チロルの友達アイルを探す日々の中で、メイ自身も幸せについて、友達について考えていく。 表紙はイラストAC様よりお借りしました。

処理中です...