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俺が魔法師である意味

47 悪循環

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「アキ」

 クリスに腰を引き寄せられた。

「大丈夫」

 心配してくれたのはよくわかる。
 でも本当に大丈夫。
 突風には驚いたけど、怪我をするような程でもない。家の中の家具とかは大変かもしれないけど。

「トビア!?」

 家の中から聞こえたのは男性の声。お父さんだろうか。

「どうして……王都には行かなかったのか……?」
「行った!ちゃんと行った!」

 家の中で荒れ狂う風から顔を隠すようにトビア君が足を進めた。
 これだけ風が吹き荒れてるのに、家の外見だけなら何も起きてない。もしかして、家の中を補強でもしてるんだろうか。

「エアハルトさんとアルフィオさんは、一応、周りに被害が出ないように気をつけてて」
「はい!」
「ええ」

 多分、家が倒壊したり…なんてことにはならないと思うけど。

「俺、中に入るから、クリスとマシロは」
「俺も行くに決まってるだろ」
「え」
「ましろも!」
「ええっ」

 何があるかわからないから待っててほしかったのに。魔力的な問題じゃなくて物理的に。

「……飛んできたものに当たったら危ないよ?」
「それはアキも同じだ。俺がお前を一人で行かせるわけないだろ」
「だろ!」

 クリスの語尾だけを真似して胸を張るマシロに、こんな、魔力暴走一歩手前みたいな状況なのについ笑ってしまった。

「うん。わかった。じゃあ、中に入ろう」

 クリスは俺の腰から手を離さない。俺は念の為の障壁魔法をかけておく。

「お邪魔しまーす」

 開きっぱなしの玄関だけど、一応そう声をかけて中に入った。
 家の中の壁には至るところに土が使われてる。トビア君が補強したものかもしれない。
 玄関から入ってすぐ、ドアの壊れた部屋の先から話し声とか強い魔力の流れを感じた。
 クリスに手を離してもらう。クリスは渋い顔をしていたけどね。マシロはクリスにしがみつきながらじっとしてる。
 障壁もしっかり働いていることを確認してから、部屋の中を見た。
 トビア君は青ざめた顔で、小さく嗚咽を漏らす女の子の手を握っていた。その二人を抱きしめているのはきっと両親。トビア君より青ざめた顔をしてる。

「リリア、泣かないで。ほら、兄ちゃん帰ってきたよ」

 トビア君が宥めているらしいけど、でも女の子は泣き止まない。

「えーと、お邪魔します?」
「!?」

 なんとも言えない悲痛で混乱中の家族にかける言葉としてこれはいかがなもんか…と思ったけれど、こんな言葉しか思いつかないから許してほしい。
 両親は俺たちを何度も何度も見て驚愕の表情を浮かべた。驚きすぎて声も出ないらしい。

「トビア君、妹ちゃんだよね?リリアちゃん」

 近づかないと何もできないから、一つの塊のようになってる家族のもとに歩み寄った。妹ちゃんから巻き起こってるらしい突風で、一部の家具は倒れたりしてる。
 トビア君は俺の問に唇を引き結んだまま頷いた。

「リリアちゃん」

 大きな瞳が俺を見た。まだしゃくり上げてる。
 もっと近づこうとしたとき、両親がトビア君とリリアちゃんを庇うように、俺の前に出てきた。

「お願いです……!咎はいくらでも受けます!ですが、どうか、どうか…っ、村長にはこのことを言わないでくださいませんか……っ、リリアだけでも私達の元に残してくださいませんか……っ」

 父親の叫びに胸が痛くなった。
 魔水晶持ちを報告しなかった咎、あの男は妹ちゃんも望んでいたから、その約束を破る咎。
 村ぐるみで魔水晶持ちを隠していたと誤解されることを厭う村の人達。結果が魔水晶持ちと知られないように息を潜めて生活する日々。
 全部が全部悪循環。
 でもここだけじゃない。きっと、こんなかんじの村はいくつもあるんだろうと思う。

「あの」

 震えながらも俺たちを見る両親の前に、俺は膝をついた。
 両親の目は更に驚いたように見開かれる。

「咎めたりしないし、トビア君もリリアちゃんも、貴方がたから引き離そうとかしませんから」
「……え?」
「でも、村長や村の人にはしっかり話しましょう。魔水晶を持って生まれることが悪いことだとか、そんなこと、絶対にないです。国に取り上げられたりもしません。保証してくれる人も来てるから」

 クリスを振り返り見たら、微笑まれた。だから俺も微笑み返す。

「クリス、クッキーの瓶頂戴」
「ああ」

 手を伸ばすとクリスがポーチの中からすぐにガラス瓶を取り出して手渡してくれた。

「とりあえず、リリアちゃんの魔法を止めないと」

 俺が近づいても両親は遮ったりしなかった。
 トビア君は俺のことをじっと見るだけ。

「リリアちゃん」

 トビア君に抱きしめられながらしゃくり上げていたリリアちゃんは何歳くらいなんだろう。クレトよりも少し大きく見える。
 リリアちゃんはしゃくり上げながら俺を見た。首には小さな革袋がかけられていて、魔力の流れができているから魔水晶はその袋の中なんだろう。

「お兄ちゃんがいなくて寂しかった?」

 怯えさせないように笑いながら頭を撫でると、リリアちゃんは小さく頷いた。

「そっか」

 手を伸ばすと躊躇いがちにトビア君は俺にリリアちゃんを預けてくれた。
 小さな軽い体。
 嫌がることもなくリリアちゃんはじっとしてる。

「頑張ったね。お兄ちゃんいなくて寂しくて魔法が出ちゃったんだ」

 とんとん…と軽く背中を叩きながら、余計な魔力を少しずつ外に流す。それからすぐリリアちゃんは泣き止んで、部屋の中の風も収まった。











*****
モチベ上がらず掲載遅くてすみません><
自分のペースで続けていきますね。
イチャしかしてない全然別のお話をそのうち……(;´∀`)
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