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19話

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レオナードに手を引かれて………歩いていた
シャーロットが

追いかけようとした、僕の足が止まる
久々に感じたのは恐怖だった、手が震えて汗が流れる

やはり、僕とレオナードを比べて彼に惹かれたのでは?
そんなはずはない、シャーロットがそんな女性ではない事は知っている

だけど、僕の心の奥に押し込めていた劣等感が身体に重くのしかかる
呼吸が荒く、息が苦しくなる

「大丈夫ですか?」「ウィリアム?」
「おいおい…体調が悪くなったか」

周りの貴族達の心配の声も何処か遠くに感じる
急に、目の前の目線が全て僕を笑っているように見えた
彼女がいないと、まだ僕は人の顔を見ることさえできない

「はぁ………はぁ………」

酷い息遣いだ………苦しく、胸を抑えてうずくまりそうになった
足が進まない…僕は1人なのか?
そう思った時




ドンッ!!

と背中を誰かに押された
その勢いで周りを取り囲んでいた貴族達の集団を抜ける
振り返ると、金の髪に
派手派手しい女性令嬢が睨みつけるように立っていた

彼女はたしか………

「ベネット………?」

「はやく行ってあげなさいよ」

彼女はそう言って僕の胸ぐらを掴んで、

「シャーロットが待ってるのは、あんたなのよ!ここで怯えてどうするの!」

「………………」

「あたしはね、シャーロットに昔から対抗してきたの…今日で負けを確信したわ…このまま悪い女で終わりたくないの、私はどうせ負けるならいい女で終わってやる、だからあんたの背中を押してあげる!」

再度、彼女は僕を突き飛ばして叫ぶ

「いけっ!!」



「………ありがとう!」

なにを迷っていたんだ
僕はシャーロットと共に、成長した
そしてそれを認めてくれる人や背中を押してくれる人がいる
今でも自信はない、手も震えるし、怖い

だけど、彼女の…シャーロットの隣に立つのは僕でありたい
他の誰でもない…僕が彼女の隣に

走りだした僕は、会場を出て
レオナード達が向かった方向へ全力で走っていった









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「さぁ………決断しろ」

レオナードは私を壁に押し当て
その一言を呟く

「何を、ですか?」

「あの豚公爵と離れて俺と復縁するんだ」

「ふざけているのですか?そんな事、受け入れられません…それに彼を愚弄しないでください」

「ふん…確かにあいつは俺の思った以上に変わった………だが心は変わっていないさ、お前は見えていなかっただろうが、俺と共に会場を出た時あいつはそれに気づきながら、動かなかったんだ」

「っ!?」

醜悪な笑みを浮かべるレオナードは私に近寄り、身体を寄せる
必死に避けようとするが、壁に押し当てられ動けない

「ほら…助けもこないんだ……いい加減俺になびけ」

「いやです…さわらないで!」

彼が私の足を撫でるように触れる
悪寒が体に走り、泣き出しそうになってしまう
必死に顔をそらすが、頬を手で抑えられ顔を近づけられる

「お前が受け入れられないのなら…いっそ身体に教えてやろうか?」

「いや……やめて………」

顔が近づいてくる
息があたる距離まで、手は這い上がるように胸元に伸びてくる


「助けて…」


ウィリアム様


瞳を閉じて、目の前の光景から逃げようとした瞬間

「っっ!!?」

突然、鈍い音と共に私を掴んでいた手が離れる
そして、次に感じるのは
傷つけないように
優しく私を抱き寄せる彼

きっと、彼は拳を握ったことなんてない
怒ったことなんてない
心優しい彼が、初めて顔を怒りに染めて
睨みつけるようにレオナードを見ていた

彼の拳には血がついており
目の前のレオナードは口を切り
血を流す



「僕の妻に…なにをしている…」

睨みつける彼は怒りに染まりながらも
私を抱きしめる力はいつもと変わらず優しかった


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