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「これを、キミに」

テーブルの上に置いてあった本を一冊渡してきた。

それは、遺伝子にまつわる本であった。
なかなかの分厚さだ。

「その本は、いいヒントになる。躓いたら読むと良い」

俺はペラペラとページを捲る。目が痛くなってきた。
受験の為の勉強なら問題ないが、興味のない分野は読む気にならない。

「キミが、少しでも考えれる頭があるなら、そう難しくはない」

一方的にそう言うとそのまま窓の外へ顔を向け寝息を立てた。

「くそっ」

俺は受け取った本にもう一度目を落とし、一つ悪態をついた。その言葉は老人には聞こえていないようだった。

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「どうでした?」

病室を出た先のソファに日高さんは座っていた。
立ち上がり、少し心配そうな顔で見てくる。

「それは?」

俺が持っている本を見て聞いてくる。

「なんか、貰った」

不思議そうに本と俺の顔を交互に見て、俺の返事を待っているようだった。
さて、何て答えるべきか。

やることは決まっている。
ここまでコケにされ、そして俺にも関係あることならとことん調べてやる。
幸い夏休みに入るところだ。
時間はたっぷりある。
しかし、日高さんに何と説明するべきか。協力をしてもらう事は出てくるだろう。何一つ説明しないのも変な話だ。
俺は少し考えたのち、こう答えた。

「直感だけど、何か、あるかもしれない」

あの老人は確実に何かを隠している。それがどんなものか全く分からない以上、むやみやたらに憶測で語るのは危険な気がする。
下手をすると、綾姉まで傷つける事になるかもしれないのだ。 

「何かって、なんです」

当然そんな曖昧な返しで納得するわけもないよな。

「分からない。でも、日高さんが言うように何かあるのかもしれない。出来れば、俺にその手伝いをさせてほしい」

「それは、勿論ですけど‥」

打って変わっての俺の態度に目には少しの疑いの色が浮かんだ。

「具体的にはどうするんです」

「まずは、色々と聞きたいことがある。もう一度、どこかゆっくりできる所にいかないか」

まずは、葉隠家のことについて俺は知らなければならない。



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