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1日目
バスタオル
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お兄さんはカーテンレールの所に掛けてあったバスタオルを取って、翔の体をわしゃわしゃと拭いた。
頭を撫でた時も、体を拭く時も、お兄さんは少し雑で適当だ。翔はなされるままにタオルで覆われた。
お兄さんは翔の手をぐるぐる縛っていたガムテープが濡れているのを見ると、それを剥がした。
拘束が親指の結束バンドだけになると、いくらか腕が自由に曲げられるようになった。
そして今度は翔を抱き上げて移動させることはせずに、「翔くん、こっち来て」と呼んだ。
お兄さんはお風呂場の扉を開けた。
翔はそのままお兄さんの方に近づいた。
お風呂場から一歩出ると、先程までシャワーのお湯で湿度が高くなっていた浴室と比べて、涼しく感じた。
お兄さんは裸のままで、バスタオルを羽織った翔の腕を掴んで引いた。
部屋の方にいくと、薄いカーテンの隙間から夕暮れの陽の光が優しく差し込んでいた。
薄オレンジ色の光に包まれたこの部屋は、時が止まったようだった。
ベッドと机以外にほとんど何も無いので整然と光に照らされている。
物が少ないが、他のものは押し入れに入っているのだろうか。
(お兄さんはどんな風に暮らしているんだろう…)
翔はふとそんなことが気になった。
お兄さんは翔にベッドに座るように言った。
翔が目を覚ました場所だ。
混乱した気持ちを思い出す。
そういえば、俺はいつ帰れるんだろう。
一生帰れないんだろうか。
家族とも友達とも会えなくなってしまうんだろうか。
翔は急に現実を思い出した。
さっきは両手がガムテープで縛られてるから逃げられないと思ったが、今の腕が少し緩んだ状態なら玄関まで走って、ドアを押し開けて外に出ることができるんじゃないだろうか。
お兄さんは左で何かを取り出そうと押し入れをガサゴソ漁っている。
顔はこっちを向いていない。
さっき翔が大人しく言うことを聞いていたので、反抗はしないと油断しているのかもしれない。
(逃げるなら今しかない!)
翔は廊下の方に向かって走り出した。
体を覆い隠していたバスタオルは走る途中でひらりと床に落ちてしまった。そんなのは気にしないで、玄関の方まで駆けていく。
あと少し。
そして玄関に着いて、体を横に向け、ドアに体当たりをした。
ガンッ。
ドアがあかない。鍵がかかっているようだ。
内側にある鍵は、手で掴んで横向きになっているのを上向きにしなければいけないものだった。
翔は肘でどうにかして開けようとした。しかし、身長が低いこともあって、なかなか上手くできない。
そんな時にお兄さんが後ろからゆったりと近づいてきた。
「翔」
名前をくん付なしにそのまま呼ばれた。
低い声だった。
お兄さんは翔の体から滑り落ちたバスタオルを持っていた。
「外に出たいの?」
お兄さんは低いテンションのまま、そう聞いてきた。
翔はどう答えるのが正解か分からず、無言のままお兄さんの視線を受け止めた。
するとお兄さんは
バスタオルを翔の体に被せた。
そして玄関のドアを開けた。
頭を撫でた時も、体を拭く時も、お兄さんは少し雑で適当だ。翔はなされるままにタオルで覆われた。
お兄さんは翔の手をぐるぐる縛っていたガムテープが濡れているのを見ると、それを剥がした。
拘束が親指の結束バンドだけになると、いくらか腕が自由に曲げられるようになった。
そして今度は翔を抱き上げて移動させることはせずに、「翔くん、こっち来て」と呼んだ。
お兄さんはお風呂場の扉を開けた。
翔はそのままお兄さんの方に近づいた。
お風呂場から一歩出ると、先程までシャワーのお湯で湿度が高くなっていた浴室と比べて、涼しく感じた。
お兄さんは裸のままで、バスタオルを羽織った翔の腕を掴んで引いた。
部屋の方にいくと、薄いカーテンの隙間から夕暮れの陽の光が優しく差し込んでいた。
薄オレンジ色の光に包まれたこの部屋は、時が止まったようだった。
ベッドと机以外にほとんど何も無いので整然と光に照らされている。
物が少ないが、他のものは押し入れに入っているのだろうか。
(お兄さんはどんな風に暮らしているんだろう…)
翔はふとそんなことが気になった。
お兄さんは翔にベッドに座るように言った。
翔が目を覚ました場所だ。
混乱した気持ちを思い出す。
そういえば、俺はいつ帰れるんだろう。
一生帰れないんだろうか。
家族とも友達とも会えなくなってしまうんだろうか。
翔は急に現実を思い出した。
さっきは両手がガムテープで縛られてるから逃げられないと思ったが、今の腕が少し緩んだ状態なら玄関まで走って、ドアを押し開けて外に出ることができるんじゃないだろうか。
お兄さんは左で何かを取り出そうと押し入れをガサゴソ漁っている。
顔はこっちを向いていない。
さっき翔が大人しく言うことを聞いていたので、反抗はしないと油断しているのかもしれない。
(逃げるなら今しかない!)
翔は廊下の方に向かって走り出した。
体を覆い隠していたバスタオルは走る途中でひらりと床に落ちてしまった。そんなのは気にしないで、玄関の方まで駆けていく。
あと少し。
そして玄関に着いて、体を横に向け、ドアに体当たりをした。
ガンッ。
ドアがあかない。鍵がかかっているようだ。
内側にある鍵は、手で掴んで横向きになっているのを上向きにしなければいけないものだった。
翔は肘でどうにかして開けようとした。しかし、身長が低いこともあって、なかなか上手くできない。
そんな時にお兄さんが後ろからゆったりと近づいてきた。
「翔」
名前をくん付なしにそのまま呼ばれた。
低い声だった。
お兄さんは翔の体から滑り落ちたバスタオルを持っていた。
「外に出たいの?」
お兄さんは低いテンションのまま、そう聞いてきた。
翔はどう答えるのが正解か分からず、無言のままお兄さんの視線を受け止めた。
するとお兄さんは
バスタオルを翔の体に被せた。
そして玄関のドアを開けた。
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