婚約破棄で捨てられ聖女の私の虐げられ実態が知らないところで新聞投稿されてたんだけど~聖女投稿~

真義あさひ

文字の大きさ
上 下
273 / 302
第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中

アケロニア王国でのルシウスの話

しおりを挟む
「ヨシュアたちリースト家は効率厨なんだよな。本当なら自分の好きなものとだけ関わっていたい。でもそれだと社会的な義務が果たせない」
「なるほど。自分の自由時間と余暇の確保のために有能にならざるを得なかったと。興味深い話だ」
「あ、でも」

 カズンとユーグレンが頷き合っているところに、鮭の人が補足を入れた。

「ルシウス叔父様はその辺ちょっと不器用かもです。あの人、進化した種族ハイヒューマンだから魔力が有り余ってるでしょう? その分なんでもこなせるけど、大雑把」
「ああ……」
「言われてみれば、確かに」
「だからユキレラがいるんですけどね。叔父様の力と意識を無駄なく上手く使うには欠かせない人材です」

 秘書ユキレラは鮭の人とはまた違った意味で胡散臭い雰囲気の男だが、ああ見えてルシウスの秘書だけでなくルシウス邸の家令と執事も兼ねている。家政も事業ビジネスもどちらも管理しているぐらいだ、よほど有能でなければ務まらないだろう。
 レストラン・サルモーネのマネージャーでもあるし、そういえば役目が多いわりによくスタッフたちと飲みに行ったり、綺麗な女性のいるクラブに出入りしたりと遊びにも熱心なようだ。

「その点、アケロニア王国のグレイシア女王様は見事でしたね。あの叔父様の手綱をよく握ってたと思います」
「ユーグレンさんのお母様ね」

 ルシウスはアケロニア王国では現国王グレイシア女王の側近の一人だったそうだ。
 ただ本人に言わせると『便利屋のような扱いだった』とややげんなりした様子だった。

「そうだな、ルシウス様の亡くなられた兄君と母は幼馴染みだったそうだ。その縁で弟のルシウス様でもよく遊んでやっ…………ゲフゲフッ、いやよく面倒を見てやったものだと聞かされている」

 何だか不穏な言葉を言いかけて必死でユーグレンが飲み込んで咽せている。何にせよアケロニアの女王様とルシウスはそれなりに仲良しのようだ。

「子供の頃の叔父様ってものすごい腕白だったみたいで。オレの祖父や父、それに女王陛下もかなり苦労されたって聞いてます」
「その片鱗は今もありますね。いやー今日は二歳児ですよルシウス様。まだ落ち着かないんですかね、あれ」
「ユキレラさん?」

 噂をすれば何とやら、秘書ユキレラが古書店エリアから食堂に入ってきた。ルシウス邸から転移の魔導具でやってきたようだ。いつものダークスーツ姿で、脇には薄手のアタッシュケースを抱えている。

「あの〝時を壊す〟ってやつ、本当に大丈夫なんですかね? あんなに頻繁に外見年齢が変わって心身に悪影響出ないか、このユキレラもう心配で心配で夜しか眠れない」
「大昔にジューア様が〝時を壊す〟を果たされたときも似たような状態になったらしいの。カーナ様もしばらく経てば落ち着くって言ってたわ」
「だといいんですけどねえ」

 嘆息しながらユキレラがアイシャにアタッシュケースの中から書類入りのファイルを手渡してきた。
 中身を確認すると、以前、課題として指示された空間転移術に関する覚え書きがまとめられている。

 術式そのものはアイシャと鮭の人は直接ルシウスからリンクに伝授されていたが、今のところ実用化まではできていなかった。



しおりを挟む
感想 1,048

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

〖完結〗私は旦那様には必要ないようですので国へ帰ります。

藍川みいな
恋愛
辺境伯のセバス・ブライト侯爵に嫁いだミーシャは優秀な聖女だった。セバスに嫁いで3年、セバスは愛人を次から次へと作り、やりたい放題だった。 そんなセバスに我慢の限界を迎え、離縁する事を決意したミーシャ。 私がいなければ、あなたはおしまいです。 国境を無事に守れていたのは、聖女ミーシャのおかげだった。ミーシャが守るのをやめた時、セバスは破滅する事になる…。 設定はゆるゆるです。 本編8話で完結になります。

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

契約破棄された聖女は帰りますけど

基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」 「…かしこまりました」 王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。 では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。 「…何故理由を聞かない」 ※短編(勢い)

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。