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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
アケロニア王国でのルシウスの話
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「ヨシュアたちリースト家は効率厨なんだよな。本当なら自分の好きなものとだけ関わっていたい。でもそれだと社会的な義務が果たせない」
「なるほど。自分の自由時間と余暇の確保のために有能にならざるを得なかったと。興味深い話だ」
「あ、でも」
カズンとユーグレンが頷き合っているところに、鮭の人が補足を入れた。
「ルシウス叔父様はその辺ちょっと不器用かもです。あの人、進化した種族だから魔力が有り余ってるでしょう? その分なんでもこなせるけど、大雑把」
「ああ……」
「言われてみれば、確かに」
「だからユキレラがいるんですけどね。叔父様の力と意識を無駄なく上手く使うには欠かせない人材です」
秘書ユキレラは鮭の人とはまた違った意味で胡散臭い雰囲気の男だが、ああ見えてルシウスの秘書だけでなくルシウス邸の家令と執事も兼ねている。家政も事業もどちらも管理しているぐらいだ、よほど有能でなければ務まらないだろう。
レストラン・サルモーネのマネージャーでもあるし、そういえば役目が多いわりによくスタッフたちと飲みに行ったり、綺麗な女性のいるクラブに出入りしたりと遊びにも熱心なようだ。
「その点、アケロニア王国のグレイシア女王様は見事でしたね。あの叔父様の手綱をよく握ってたと思います」
「ユーグレンさんのお母様ね」
ルシウスはアケロニア王国では現国王グレイシア女王の側近の一人だったそうだ。
ただ本人に言わせると『便利屋のような扱いだった』とややげんなりした様子だった。
「そうだな、ルシウス様の亡くなられた兄君と母は幼馴染みだったそうだ。その縁で弟のルシウス様でもよく遊んでやっ…………ゲフゲフッ、いやよく面倒を見てやったものだと聞かされている」
何だか不穏な言葉を言いかけて必死でユーグレンが飲み込んで咽せている。何にせよアケロニアの女王様とルシウスはそれなりに仲良しのようだ。
「子供の頃の叔父様ってものすごい腕白だったみたいで。オレの祖父や父、それに女王陛下もかなり苦労されたって聞いてます」
「その片鱗は今もありますね。いやー今日は二歳児ですよルシウス様。まだ落ち着かないんですかね、あれ」
「ユキレラさん?」
噂をすれば何とやら、秘書ユキレラが古書店エリアから食堂に入ってきた。ルシウス邸から転移の魔導具でやってきたようだ。いつものダークスーツ姿で、脇には薄手のアタッシュケースを抱えている。
「あの〝時を壊す〟ってやつ、本当に大丈夫なんですかね? あんなに頻繁に外見年齢が変わって心身に悪影響出ないか、このユキレラもう心配で心配で夜しか眠れない」
「大昔にジューア様が〝時を壊す〟を果たされたときも似たような状態になったらしいの。カーナ様もしばらく経てば落ち着くって言ってたわ」
「だといいんですけどねえ」
嘆息しながらユキレラがアイシャにアタッシュケースの中から書類入りのファイルを手渡してきた。
中身を確認すると、以前、課題として指示された空間転移術に関する覚え書きがまとめられている。
術式そのものはアイシャと鮭の人は直接ルシウスから環に伝授されていたが、今のところ実用化まではできていなかった。
「なるほど。自分の自由時間と余暇の確保のために有能にならざるを得なかったと。興味深い話だ」
「あ、でも」
カズンとユーグレンが頷き合っているところに、鮭の人が補足を入れた。
「ルシウス叔父様はその辺ちょっと不器用かもです。あの人、進化した種族だから魔力が有り余ってるでしょう? その分なんでもこなせるけど、大雑把」
「ああ……」
「言われてみれば、確かに」
「だからユキレラがいるんですけどね。叔父様の力と意識を無駄なく上手く使うには欠かせない人材です」
秘書ユキレラは鮭の人とはまた違った意味で胡散臭い雰囲気の男だが、ああ見えてルシウスの秘書だけでなくルシウス邸の家令と執事も兼ねている。家政も事業もどちらも管理しているぐらいだ、よほど有能でなければ務まらないだろう。
レストラン・サルモーネのマネージャーでもあるし、そういえば役目が多いわりによくスタッフたちと飲みに行ったり、綺麗な女性のいるクラブに出入りしたりと遊びにも熱心なようだ。
「その点、アケロニア王国のグレイシア女王様は見事でしたね。あの叔父様の手綱をよく握ってたと思います」
「ユーグレンさんのお母様ね」
ルシウスはアケロニア王国では現国王グレイシア女王の側近の一人だったそうだ。
ただ本人に言わせると『便利屋のような扱いだった』とややげんなりした様子だった。
「そうだな、ルシウス様の亡くなられた兄君と母は幼馴染みだったそうだ。その縁で弟のルシウス様でもよく遊んでやっ…………ゲフゲフッ、いやよく面倒を見てやったものだと聞かされている」
何だか不穏な言葉を言いかけて必死でユーグレンが飲み込んで咽せている。何にせよアケロニアの女王様とルシウスはそれなりに仲良しのようだ。
「子供の頃の叔父様ってものすごい腕白だったみたいで。オレの祖父や父、それに女王陛下もかなり苦労されたって聞いてます」
「その片鱗は今もありますね。いやー今日は二歳児ですよルシウス様。まだ落ち着かないんですかね、あれ」
「ユキレラさん?」
噂をすれば何とやら、秘書ユキレラが古書店エリアから食堂に入ってきた。ルシウス邸から転移の魔導具でやってきたようだ。いつものダークスーツ姿で、脇には薄手のアタッシュケースを抱えている。
「あの〝時を壊す〟ってやつ、本当に大丈夫なんですかね? あんなに頻繁に外見年齢が変わって心身に悪影響出ないか、このユキレラもう心配で心配で夜しか眠れない」
「大昔にジューア様が〝時を壊す〟を果たされたときも似たような状態になったらしいの。カーナ様もしばらく経てば落ち着くって言ってたわ」
「だといいんですけどねえ」
嘆息しながらユキレラがアイシャにアタッシュケースの中から書類入りのファイルを手渡してきた。
中身を確認すると、以前、課題として指示された空間転移術に関する覚え書きがまとめられている。
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