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第五章 鮭の人無双~環《リンク》覚醒ハイ進行中
絶対に無い
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ルシウスの覚え書きを鮭の人が横から覗き込んでくる。
「転移術、オレのほうはまだ全然ダメな感じです。アイシャ様はどうですか?」
「あ、それなら部屋に今の時点での研究をまとめたノートがあるの。ヨシュアさん、来て」
「了解です」
「待て待て、彼氏持ちの女子の部屋に平気でついて行くんじゃない! 僕も行く!」
アイシャが鮭の人とカズンを連れて二階の部屋に向かうのを見送って、トオンがポツンと呟いた。
「アイシャとヨシュアさんがくっついたら、俺どうしよう……」
「えええ!? トオン、お前そんな心配をしてるのか!」
そんなこと考えもしなかったと言わんばかりにユーグレンが驚愕している。
「トオン君。その心配は無用だと思いますよ?」
「で、でも聞いてくださいよ、ユキレラさん。鮭の人を見るときのアイシャ、頬を染めてることがあるんですよ!?」
「話に夢中になって血色が良くなってるだけでは?」
ナイナイと手を左右に振られるも、トオンは必死だ。
「トオン君。あの二人が恋仲になることは絶対ありません。大金貨十枚賭けてもいい」
この円環大陸で通貨は万国共通である。大金貨一枚は庶民の家族一ヶ月分の生活費プラス多少の貯蓄もできる価値がある。
それを十枚賭けてもありえない、とユキレラは断言した。つまり絶対に無いと。
「ヨシュアとアイシャがか。……ないな」
「ですよね、ユーグレン様」
「ない。だってヨシュアは」
その先をユーグレンは言わなかった。
代わりに空気を読んでユキレラが揶揄うような口調でトオンを見た。
「そんな嫉妬が出てくるってことはトオン君、欲求不満なの? 良い店紹介しようか?」
「え」
そこから楽しそうにユキレラは猥談にトオンやユーグレンを誘った。トオンは戸惑ったが、ユーグレンは仕方ないという顔をしながらも満更でもなさそうな様子で軽口で応えている。
「ここ首都にもお姉ちゃんのいる店はたくさんあるじゃないですか。たまには行って羽を伸ばすのも……」
その先をユキレラは言えなかった。
アイシャが鮭の人とカズンを伴って上階から戻ってきたからだ。
だがアイシャは男たちの猥談を気にする必要はないと言って笑っている。
「あら、私に遠慮は要らないわ。軍で男の騎士や兵士たちと関わってたもの、そういうことにも理解はあるの」
でも、と続けたアイシャの顔は笑顔だ。
そう、笑顔なのである。
「ねえ、三人とも。パン屋のミーシャおばさんの離婚の原因って知ってる?」
脈絡なくそう訊かれた。
ミーシャおばさんは古書店のある南地区で人気のパン屋の出戻り娘だ。悪い人ではなかったが好き嫌いの激しい、ものすごくきつい性格の持ち主である。
あの辛口な口調に泣かされた者は多い。実際、トオンも続・聖女投稿のときに泣かされている。
「い、いや。私は知らない。トオンは?」
「俺も詳しくは……」
「接待してくれる女の人のいるお店や、娼館通いで喧嘩したからなんですって」
「お、おう……」
あのスパイシーな性格のせいじゃなかったのか、と思っても、男たちは賢明だったので口には出さなかった。
うっかり口を滑らせそうな秘書ユキレラでさえお口をしっかり閉じていたぐらい。
「トオン」
とても優しげな口調で、アイシャは彼氏の名前を呼んだ。
「は、はい?」
「男の人がそういうお店が好きなのは私もわかってるの。でも、行きたいなら私と別れてからにしてね?」
「!????」
「わあ。牽制来たー」
言うだけ言って、カズンや鮭の人と一緒に厨房へ入っていってしまった。
「行かないよ! 行かないからね!?」
必死に言い募るトオンに、厨房からアイシャの返事はなかった……
(´∀`)/ ナイワーw
「転移術、オレのほうはまだ全然ダメな感じです。アイシャ様はどうですか?」
「あ、それなら部屋に今の時点での研究をまとめたノートがあるの。ヨシュアさん、来て」
「了解です」
「待て待て、彼氏持ちの女子の部屋に平気でついて行くんじゃない! 僕も行く!」
アイシャが鮭の人とカズンを連れて二階の部屋に向かうのを見送って、トオンがポツンと呟いた。
「アイシャとヨシュアさんがくっついたら、俺どうしよう……」
「えええ!? トオン、お前そんな心配をしてるのか!」
そんなこと考えもしなかったと言わんばかりにユーグレンが驚愕している。
「トオン君。その心配は無用だと思いますよ?」
「で、でも聞いてくださいよ、ユキレラさん。鮭の人を見るときのアイシャ、頬を染めてることがあるんですよ!?」
「話に夢中になって血色が良くなってるだけでは?」
ナイナイと手を左右に振られるも、トオンは必死だ。
「トオン君。あの二人が恋仲になることは絶対ありません。大金貨十枚賭けてもいい」
この円環大陸で通貨は万国共通である。大金貨一枚は庶民の家族一ヶ月分の生活費プラス多少の貯蓄もできる価値がある。
それを十枚賭けてもありえない、とユキレラは断言した。つまり絶対に無いと。
「ヨシュアとアイシャがか。……ないな」
「ですよね、ユーグレン様」
「ない。だってヨシュアは」
その先をユーグレンは言わなかった。
代わりに空気を読んでユキレラが揶揄うような口調でトオンを見た。
「そんな嫉妬が出てくるってことはトオン君、欲求不満なの? 良い店紹介しようか?」
「え」
そこから楽しそうにユキレラは猥談にトオンやユーグレンを誘った。トオンは戸惑ったが、ユーグレンは仕方ないという顔をしながらも満更でもなさそうな様子で軽口で応えている。
「ここ首都にもお姉ちゃんのいる店はたくさんあるじゃないですか。たまには行って羽を伸ばすのも……」
その先をユキレラは言えなかった。
アイシャが鮭の人とカズンを伴って上階から戻ってきたからだ。
だがアイシャは男たちの猥談を気にする必要はないと言って笑っている。
「あら、私に遠慮は要らないわ。軍で男の騎士や兵士たちと関わってたもの、そういうことにも理解はあるの」
でも、と続けたアイシャの顔は笑顔だ。
そう、笑顔なのである。
「ねえ、三人とも。パン屋のミーシャおばさんの離婚の原因って知ってる?」
脈絡なくそう訊かれた。
ミーシャおばさんは古書店のある南地区で人気のパン屋の出戻り娘だ。悪い人ではなかったが好き嫌いの激しい、ものすごくきつい性格の持ち主である。
あの辛口な口調に泣かされた者は多い。実際、トオンも続・聖女投稿のときに泣かされている。
「い、いや。私は知らない。トオンは?」
「俺も詳しくは……」
「接待してくれる女の人のいるお店や、娼館通いで喧嘩したからなんですって」
「お、おう……」
あのスパイシーな性格のせいじゃなかったのか、と思っても、男たちは賢明だったので口には出さなかった。
うっかり口を滑らせそうな秘書ユキレラでさえお口をしっかり閉じていたぐらい。
「トオン」
とても優しげな口調で、アイシャは彼氏の名前を呼んだ。
「は、はい?」
「男の人がそういうお店が好きなのは私もわかってるの。でも、行きたいなら私と別れてからにしてね?」
「!????」
「わあ。牽制来たー」
言うだけ言って、カズンや鮭の人と一緒に厨房へ入っていってしまった。
「行かないよ! 行かないからね!?」
必死に言い募るトオンに、厨房からアイシャの返事はなかった……
(´∀`)/ ナイワーw
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