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第二章 お師匠様がやってきた
聖者に試練〜お金がなくなりました〜
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昼間、三人で街中に買い物へ出たとき、帰りに冒険者ギルドに寄って金を下ろすとルシウスが言い出した。
冒険者登録してあると冒険者証が身分証になり、また冒険者ギルド内の金融機関に金銭を預けておくことができる。
冒険者ギルドは円環大陸全土、どの国や町にも大抵設置されており、国境を越えて金の出し入れが可能である。
ルシウスは多感な14歳のとき、大好きだった兄が結婚したことにショックを受けて、傷心を癒すため1年近く家出していたことがある。
その1年間に、故郷から遠く離れた他国で日銭を稼ぐため冒険者登録して、冒険者として活動していたとのこと。
後に故郷の実家に戻ってからは冒険者活動することもなく、一貴族としての義務と務めを果たしていたのだが、冒険者証の更新だけは欠かしていなかったそうだ。
今回、カーナ王国へやってくるにあたっても、しっかり持参している。
そしてやってきた冒険者ギルドではルシウスに試練が待っていた。
「ルシウス・リーストさん。冒険者証に登録された残高はゼロになってますね」
「なん……だと……」
引き出し履歴を確認してもらうと、数日前に故郷の実家の本家がルシウスの財産を引き出しているという。
「な、何の権利があってそんなことできるんだ!?」
さすがにトオンもビックリしている。
庶民でもそんなことをしたら、金額によっては横領の罪で即処刑もありうる。
「……貴族家の当主の権限だ。一族の者の扶養義務を負う代わりに、皆の財産を管理する権利を持つ。おのれ、オデットめ……!」
オデットというのが、ルシウスの実家で謀反を起こして、彼と、当主であった鮭の人こと甥っ子を追い出した者の名前らしい。
名前からすると女性のようだが。
あまりの出来事に怒ったルシウスの全身からは、ネオンブルーの魔力が噴き出す。
「抑えて! 抑えてルシウスさん!」
だがそんなルシウスの怒りも、彼の財産がすべてそのままそっくり、別口で出奔していた彼の甥っ子の口座に移し替えられたことを知ると、すぐに収まった。
「なら仕方がない。今のあの子に金はいくらあっても足りないぐらいだし」
だが、この調子で今後も勝手に残高を引き出されてしまっては堪らない。
冒険者ギルドに相談すると、冒険者証の中に従来の口座とは別の新口座を増設することが可能だそうだ。
そちらは故郷の実家本家が使えないようセキュリティ設定をかけられるとのこと。
今後は、カーナ王国では入金も出金も、新しい口座のほうを利用することになった。
しかし、となるとルシウスの手持ちは財布の中身と自分の環内のアイテムボックスに入れていた分だけということになる。
なお、最初こそ怒ったが、理由を把握して納得した後も、本人には特に焦った様子はなかった。
「ふむ……このままだと生活費が足りなくなるな。調達しに行ってくるか」
幸いというべきか、カーナ王国には国内にダンジョンがある。
ランクはBプラス。
希少鉱物や薬草があるし、魔物のランクもそこそこ高いから魔石などのドロップも期待できる。
ということは良い収入源になる。
「はいはいはい! ダンジョンなら私も行きたいです! お師匠様!」
「アイシャが行くなら俺も行く!」
「トオンは私が守るわ!」
「お、おう……」
そこは格好良く「俺が君を守る!」と言いたいトオンだったが、多分どう頑張ったってアイシャのほうが強い。
彼女はこの国を襲う魔物や魔獣退治の中心人物だったのだ。
大人しく守られていようと思った。
多分、それが一番安全だ。
--
本日より同シリーズの「破壊のオデット」公開スタートしてます。
ルシウスおじさんの娘(養女)の強い女の子のお話。
聖女投稿の第一章と同時期に、カズン君の故郷で起こっていたことの短編。
ルシウスおじさんがカーナ王国に来ることになった第二章の前日譚みたいなやつ。
冒険者登録してあると冒険者証が身分証になり、また冒険者ギルド内の金融機関に金銭を預けておくことができる。
冒険者ギルドは円環大陸全土、どの国や町にも大抵設置されており、国境を越えて金の出し入れが可能である。
ルシウスは多感な14歳のとき、大好きだった兄が結婚したことにショックを受けて、傷心を癒すため1年近く家出していたことがある。
その1年間に、故郷から遠く離れた他国で日銭を稼ぐため冒険者登録して、冒険者として活動していたとのこと。
後に故郷の実家に戻ってからは冒険者活動することもなく、一貴族としての義務と務めを果たしていたのだが、冒険者証の更新だけは欠かしていなかったそうだ。
今回、カーナ王国へやってくるにあたっても、しっかり持参している。
そしてやってきた冒険者ギルドではルシウスに試練が待っていた。
「ルシウス・リーストさん。冒険者証に登録された残高はゼロになってますね」
「なん……だと……」
引き出し履歴を確認してもらうと、数日前に故郷の実家の本家がルシウスの財産を引き出しているという。
「な、何の権利があってそんなことできるんだ!?」
さすがにトオンもビックリしている。
庶民でもそんなことをしたら、金額によっては横領の罪で即処刑もありうる。
「……貴族家の当主の権限だ。一族の者の扶養義務を負う代わりに、皆の財産を管理する権利を持つ。おのれ、オデットめ……!」
オデットというのが、ルシウスの実家で謀反を起こして、彼と、当主であった鮭の人こと甥っ子を追い出した者の名前らしい。
名前からすると女性のようだが。
あまりの出来事に怒ったルシウスの全身からは、ネオンブルーの魔力が噴き出す。
「抑えて! 抑えてルシウスさん!」
だがそんなルシウスの怒りも、彼の財産がすべてそのままそっくり、別口で出奔していた彼の甥っ子の口座に移し替えられたことを知ると、すぐに収まった。
「なら仕方がない。今のあの子に金はいくらあっても足りないぐらいだし」
だが、この調子で今後も勝手に残高を引き出されてしまっては堪らない。
冒険者ギルドに相談すると、冒険者証の中に従来の口座とは別の新口座を増設することが可能だそうだ。
そちらは故郷の実家本家が使えないようセキュリティ設定をかけられるとのこと。
今後は、カーナ王国では入金も出金も、新しい口座のほうを利用することになった。
しかし、となるとルシウスの手持ちは財布の中身と自分の環内のアイテムボックスに入れていた分だけということになる。
なお、最初こそ怒ったが、理由を把握して納得した後も、本人には特に焦った様子はなかった。
「ふむ……このままだと生活費が足りなくなるな。調達しに行ってくるか」
幸いというべきか、カーナ王国には国内にダンジョンがある。
ランクはBプラス。
希少鉱物や薬草があるし、魔物のランクもそこそこ高いから魔石などのドロップも期待できる。
ということは良い収入源になる。
「はいはいはい! ダンジョンなら私も行きたいです! お師匠様!」
「アイシャが行くなら俺も行く!」
「トオンは私が守るわ!」
「お、おう……」
そこは格好良く「俺が君を守る!」と言いたいトオンだったが、多分どう頑張ったってアイシャのほうが強い。
彼女はこの国を襲う魔物や魔獣退治の中心人物だったのだ。
大人しく守られていようと思った。
多分、それが一番安全だ。
--
本日より同シリーズの「破壊のオデット」公開スタートしてます。
ルシウスおじさんの娘(養女)の強い女の子のお話。
聖女投稿の第一章と同時期に、カズン君の故郷で起こっていたことの短編。
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