ある化学者転生 記憶を駆使した錬成品は、規格外の良品です

黄舞

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第3章

第75話【モンスター討伐】

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「話というのはなんですか? ヴァイト伯爵」

 先に向こうの要件を済ませた方がいいだろうと思い、俺はソフィアが呼ばれた理由を尋ねる。
 その問いに対し、ヴァイト伯爵はモルガンへの目線で返した。

「ヴァイト様に変わり、私の方から説明させてもらう。知っているか知らないが、この街ファナリスの北には、重要な鉱山がある」
「ええ。この街の主な産業の一つだとか」

「知っているなら話が早い。その鉱山に最近モンスターが住み着いてな。しかもそのモンスター、厄介なことに一般人では倒せない程度には手強い」
「それだと、鉱夫はやりにくいでしょうね」

 俺の相槌にモルガンは大きく頷く。

「正直なところ、現在ヴァイト様の指示により、全鉱夫が採掘を中止している。一刻も早くそのモンスターを駆除し、採掘を再開させないといけない。その任務が私たち騎士団に与えられたのだが――」

 モルガンの話によると、モンスターは鉱山の中、入り組んだ洞窟内に巣食っていて、騎士団の数を生かした制圧も難しい状況だった。
 しかも、どうやら容易に繁殖を繰り返す種族らしく、倒しても倒しても埒があかない。

 なかなか成果が上げられない中、ダンジョンに潜りモンスターを倒すことを生業としている探索者なら、何かいい案があるのではないかと、ソフィアに白羽の矢が立ったというわけだ。
 そもそも、騎士団は対人訓練を主としていて、モンスター討伐に関してはそこまで精力的に訓練を行っていないというのもあるらしい。

 モルガンの説明が終わったので意見を聞こうと、俺はソフィアに目線を向ける。
 するとソフィアは何故か目をキラキラさせていた。

「話は分かった。そのモンスターの討伐、私が引き受けてもいい。ただし、条件がある」
「おお。本当か? それは助かる。正直なところ、採掘が出来ぬのでは、かなりの痛手でな。それで、条件とは?」

「前居た街では、探索者に何か頼みたいことがある場合には、依頼を出し、それ相応の対価を支払ってもらうというの普通だった。今回の件も、ヴァイト伯爵から私が所属しているギルド【賢者の黒土】への依頼という形にして欲しい」
「なんだ。そんなことか。もちろんモンスターを駆除してくれた暁には報酬も払うつもりだった。分かった。依頼、という形で頼むとしよう。それで、具体的にはどうするのかね?」

 俺は正直、ソフィアの対応に驚いていた。
 そんなソフィアは、嬉しそうな顔で、俺にウインクを投げてくる。

「依頼は、特に難しいことはありません。依頼内容とそれに対する対価を書面で用意してもらえれば」
「なるほど。すぐに用意しよう。ところで、駆除の際には、このモルガンも同行させてほしい。本人たっての希望でな」

 俺の説明に、ヴァイト伯爵はすぐに対応する返事をくれた。
 モルガンの同行については、ソフィアが無言の肯定をヴァイト伯爵に伝える。

「それで、出来るだけ早くに対応して欲しいのだが、いつ頃出来るかね?」
「出来るだけ早くなら、今からでも。と言いたいところだが、さすがに準備が必要だ。明朝向かうことにしよう」

 ソフィアの返答に、ヴァイト伯爵は満足そうに頷く。
 その後、ギルド舎への配慮のお礼や、今後の話などを済まし、俺とソフィアはギルドへと戻った。

「お帰り! マスター、伯爵はソフィアに何の用だったの?」
「ただいま。オティス。それがね、北の鉱山に巣食うモンスターの討伐だって」

「喜べ、オティス。早速この街で仕事が見つかったぞ? これでもう、やることがないなんて言わせないからな」
「ああ。なるほど。それでわざわざ依頼を出させるなんて言い出したのか」

 どうやらソフィアは一人だけやることがないことを気にしていたらしい。
 それなら、前の街に残れば良かったのにとも思うが、きっと怒り出すから言わないでおこう。

「モンスターの討伐ですか? 珍しいですね。人が住むようなところに出没するモンスターは、そんな脅威が無いことがほとんどなはずですが。なんというモンスターか分かっているんですか?」
「いや、それが、大きなクモのような形をしたモンスターだとしか分からないというんだ。あっちも、モンスターに詳しいわけじゃないからね。こればっかりは、明日現場に行ってから確認するしかないかな」

 アイリーンの言う通り、俺らが元居た街オリジンのダンジョンは別として、人々はモンスターの脅威が少ないところに居住区を作り上げてきた歴史があるらしい。
 秘境にでも行けば、熟練の探索者でも敵わないようなモンスターも住まうという噂や伝説もあるが、実際に見たことがあるような人はほとんどいないだろう。

 先ほどヴァイト伯爵に聞いた話でも、こんな手に負えないモンスターの出現なんて、記憶にないくらいの出来事だという。
 何か、特別なことが起きたのだろうか。

「ところで、いくらソフィアでも鉱山の中は広いと思うし、本当に大丈夫なの?」

 あの時はあまりにソフィアが自信満々に答えるので、口を挟み損ねてしまったが、思った疑問を聞く。
 するとソフィアは俺に笑みを返しながら、こう返してきた。

「誰が鉱山の中に入ると言った? オティスに手伝ってもらうにしろ、とてもじゃないがそれじゃ無理だろう。そんなことより、ハンスの作った薬を使うんだ。鉱山の中は入り組んでいても、出口は一つだろう?」
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