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41常識とは
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車と同じくらいの時間で、私たちは病院に到着した。病院に着くころにはすっかり雨は止み、空にはキレイな虹がかかっていた。
病院から少し離れた場所に着地した私たちは、すぐに病院に向かった。九尾たちは病院にまでついてくるらしい。ケモミミ美少年からただの美少年へと姿を変え、私の後ろをついてくる。
「荒川結女さんのお見舞いに来たのですが」
「ええと……」
病院の中に入って、まっすぐに受け付けに向かったのだが。
「まさか、直球で聞くとは思いませんでした」
「自分が特異体質であることを気にしている割に、そういうところは抜けているな」
「………」
後ろから生暖かい視線を感じるが、今はそんなことに構っている時間はない。受付の女性は、私と荒川結女の関係がわからず戸惑っていた。そういえば、彼女とは幼馴染で年も近いが、今のこの状態でわかるはずがなかった。向井さんから、どこの病院に入院しているかは聞いていたが、病室まで聞いていなかったことが悔やまれる。だが、そんなことで荒川結女の見舞いをあきらめるつもりはない。
「なるほど。では、言葉を変えましょう」
後ろの視線の意味と、目の前の女性の困惑した表情の理由を理解する。もし、本当のことを言ったとしても、余計に不審がられるに違いない。だったら。
『荒川結女が入院している病室を教えてください』
まったく、最初からこうすればよかったのだ。最近、ジャスミンに能力に頼りすぎだと言われているが、いまさらそんなことを気にしても意味がない。どうせ、普通ではないのだ。それなら、自分の力を存分に利用するべきだ。
受付の女性を見つめ、言霊の能力を発動すると、いつものように私と対象者の周りが黄金に輝きだす。
「ワカリマシタ。荒川結女の病室は、東棟4階の405号室になります」
すぐに能力の効果が表れ、女性の瞳からは光が消えたが、私が聞きたかった情報を口にする。
「ありがとうございます」
幼馴染の居場所が分かったのなら、この場にいる必要はない。とりあえず、彼女にお礼を言って、目的地に向かって歩き出す。その後ろを三人の少年もついてくる。彼らにはケモミミと尻尾は彼らに生えていない。しかし、小学校高学年くらいの男子が三人と、それを従える20代前半の女性。異様な光景かもしれないが、すれ違う通行人は、自分のことしか興味がないのか、誰にも詮索されることはなかった。
「ここ、ですか」
荒川結女が入院していたのは、大部屋ではなく個室だった。病室の前に書かれた名前には『向井結女』と記載されていた。荒川結女が私と違う世界の住人であることが目に見える形で表れていた。
「トントン」
さすがに私だって他人の部屋に入るときはドアをノックする。常識的な行動をしていると思っていたのに、なぜか近くから笑い声が聞こえた。
「まったく、お主は面白い奴だ」
「でも、これ以上、変な行動をしてもらうと僕でも擁護できないので、い、いいと思います」
「人の個人情報は平気で聞く癖に、ここだけ常識的だと……」
じろりと声のした方に目を向けると、私の家に居候している三人の美少年がいた。
「私は前から常識人ですよ。普通の人とは違いますが、常識までは捨てていません」
「あら、あなたは確か」
私たちが病室の前で話をしていると、不意に声をかけられた。
「ええと、向井姫奈さんと同じ大学に通っています、朔夜蒼紗です。き、昨日は大変お世話に」
「そんなことはどうでもいいわ。どうして、あなたがこんなところにいるのかしら?」
声をかけてきたのは、昨日、向井さんの家に居た彼女の母親だった。ここで母親に出くわすとはタイミングが悪い。誰も身内がいない状態で、荒川結女と話がしたかったのに、これでは二人きりになることができない。
「ひ、ひなさんから連絡をもらって、私も昨日、倒れた現場に居合わせたので、心配だったので、お見舞いにき」
「結構なことね。でも、そういうお気遣いは無用です。あの人の自業自得なので、気にしないでください。こんな若い子にまで心配かけるなんて、どうかしてるわ」
私の言葉は途中で遮られる。どうやら、向井さんの母親は、荒川結女の急変を私のせいだと考えていないようだ。まあ、普通は人間が人の容態をどうにかできる力を持っているとは思わない。最後の言葉は、独り言のようにぶつぶつと声が小さかった。
『おや、蒼紗じゃないか。私の見舞いに来てくれたのだね。来てくれたのなら、さっさと部屋に入っておくれ。年寄りを待たせるんじゃないよ』
突然、母親の様子が豹変した。先ほどまでの不機嫌な様子が一変、嬉しそうな笑みに変わる。私を呼び捨てにして自分のことを年寄りだという、他人の身体に乗っ取ることができることができる人物は一人しかいない。
「ゆ、ゆめ!あの、昨日は、わ、私のせいで」
『詳しい話は部屋で。廊下でするような話でもないでしょう?』
彼女の言う通りである。私は素直に目の前の荒川結女に取り憑かれた母親の後に続いて、荒川結女、今の名が向井結女の病室のドアを開ける。珍しく、私の家の居候である九尾たちは部屋に入ってこなかった。
荒川結女が身体から離れたとたん、床に崩れ落ちそうになった向井さんの母親を彼らはささえ、そのまま病室の前から離れていく。彼らの気遣いに感謝して、私は幼馴染が入院している病室に入った。
病院から少し離れた場所に着地した私たちは、すぐに病院に向かった。九尾たちは病院にまでついてくるらしい。ケモミミ美少年からただの美少年へと姿を変え、私の後ろをついてくる。
「荒川結女さんのお見舞いに来たのですが」
「ええと……」
病院の中に入って、まっすぐに受け付けに向かったのだが。
「まさか、直球で聞くとは思いませんでした」
「自分が特異体質であることを気にしている割に、そういうところは抜けているな」
「………」
後ろから生暖かい視線を感じるが、今はそんなことに構っている時間はない。受付の女性は、私と荒川結女の関係がわからず戸惑っていた。そういえば、彼女とは幼馴染で年も近いが、今のこの状態でわかるはずがなかった。向井さんから、どこの病院に入院しているかは聞いていたが、病室まで聞いていなかったことが悔やまれる。だが、そんなことで荒川結女の見舞いをあきらめるつもりはない。
「なるほど。では、言葉を変えましょう」
後ろの視線の意味と、目の前の女性の困惑した表情の理由を理解する。もし、本当のことを言ったとしても、余計に不審がられるに違いない。だったら。
『荒川結女が入院している病室を教えてください』
まったく、最初からこうすればよかったのだ。最近、ジャスミンに能力に頼りすぎだと言われているが、いまさらそんなことを気にしても意味がない。どうせ、普通ではないのだ。それなら、自分の力を存分に利用するべきだ。
受付の女性を見つめ、言霊の能力を発動すると、いつものように私と対象者の周りが黄金に輝きだす。
「ワカリマシタ。荒川結女の病室は、東棟4階の405号室になります」
すぐに能力の効果が表れ、女性の瞳からは光が消えたが、私が聞きたかった情報を口にする。
「ありがとうございます」
幼馴染の居場所が分かったのなら、この場にいる必要はない。とりあえず、彼女にお礼を言って、目的地に向かって歩き出す。その後ろを三人の少年もついてくる。彼らにはケモミミと尻尾は彼らに生えていない。しかし、小学校高学年くらいの男子が三人と、それを従える20代前半の女性。異様な光景かもしれないが、すれ違う通行人は、自分のことしか興味がないのか、誰にも詮索されることはなかった。
「ここ、ですか」
荒川結女が入院していたのは、大部屋ではなく個室だった。病室の前に書かれた名前には『向井結女』と記載されていた。荒川結女が私と違う世界の住人であることが目に見える形で表れていた。
「トントン」
さすがに私だって他人の部屋に入るときはドアをノックする。常識的な行動をしていると思っていたのに、なぜか近くから笑い声が聞こえた。
「まったく、お主は面白い奴だ」
「でも、これ以上、変な行動をしてもらうと僕でも擁護できないので、い、いいと思います」
「人の個人情報は平気で聞く癖に、ここだけ常識的だと……」
じろりと声のした方に目を向けると、私の家に居候している三人の美少年がいた。
「私は前から常識人ですよ。普通の人とは違いますが、常識までは捨てていません」
「あら、あなたは確か」
私たちが病室の前で話をしていると、不意に声をかけられた。
「ええと、向井姫奈さんと同じ大学に通っています、朔夜蒼紗です。き、昨日は大変お世話に」
「そんなことはどうでもいいわ。どうして、あなたがこんなところにいるのかしら?」
声をかけてきたのは、昨日、向井さんの家に居た彼女の母親だった。ここで母親に出くわすとはタイミングが悪い。誰も身内がいない状態で、荒川結女と話がしたかったのに、これでは二人きりになることができない。
「ひ、ひなさんから連絡をもらって、私も昨日、倒れた現場に居合わせたので、心配だったので、お見舞いにき」
「結構なことね。でも、そういうお気遣いは無用です。あの人の自業自得なので、気にしないでください。こんな若い子にまで心配かけるなんて、どうかしてるわ」
私の言葉は途中で遮られる。どうやら、向井さんの母親は、荒川結女の急変を私のせいだと考えていないようだ。まあ、普通は人間が人の容態をどうにかできる力を持っているとは思わない。最後の言葉は、独り言のようにぶつぶつと声が小さかった。
『おや、蒼紗じゃないか。私の見舞いに来てくれたのだね。来てくれたのなら、さっさと部屋に入っておくれ。年寄りを待たせるんじゃないよ』
突然、母親の様子が豹変した。先ほどまでの不機嫌な様子が一変、嬉しそうな笑みに変わる。私を呼び捨てにして自分のことを年寄りだという、他人の身体に乗っ取ることができることができる人物は一人しかいない。
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彼女の言う通りである。私は素直に目の前の荒川結女に取り憑かれた母親の後に続いて、荒川結女、今の名が向井結女の病室のドアを開ける。珍しく、私の家の居候である九尾たちは部屋に入ってこなかった。
荒川結女が身体から離れたとたん、床に崩れ落ちそうになった向井さんの母親を彼らはささえ、そのまま病室の前から離れていく。彼らの気遣いに感謝して、私は幼馴染が入院している病室に入った。
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