結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
155 / 234

番外編【変人になりたい】2イメチェンする理由

しおりを挟む
「さて、まずはネタを決めていかないと」

 とりあえず、パソコンの電源を入れた私だがここからが問題である。いくらやる気があろうとも、書く内容が思いつかなければなんともならない。やる気だけが空回りしてしまう。

「書き出すことで頭が整理される」

 よく言われることだ。脳内だけで考えるのには限界がある。紙などに自分の考えていることを書きだすと、脳内が整理されて考えもまとまるというものだ。小説を書いていなかった間も、スマホでしっかりと情報は頭に入れていた。

「インプット期間だと思えば、あのダラダラなスマホ時間も有意義なものといえよう」

 何事も、ポジティブに考えることが大切だ。過ぎた時間が戻ることはないので、そう思うことにしよう。


【スマホで見ていた動画】
・不倫、離婚、浮気系
・料理系(オムライス)
・不動産
・メイク、ダイエット、イメチェン
・教育系
・メイド
・看護師
・保育士
・ボカロのMV、歌ってみた、歌手のライブ映像
・イラスト制作
・クイズ
・アニメの切り抜き(公式)

 箇条書きにしてみたが、こうして並べてみると、私は執筆していない期間をかなり有意義に過ごしていたのではないだろうか。もし、これらの知識が身についているのなら、どんな物語だって余裕で生み出せそうだ。

 一番上の不倫系については、SNSでよく見かけてつい読んでしまった。現在離婚を考えている人や離婚した人、不倫された人などリアルなものがたくさんあり、これは創作ではないか疑ってしまうほどの内容もあった。漫画などでは王道の展開であるが、現実世界でも似たようなことが起こっているかと思うと、世の中、まだまだ私の知らないことがあるのだと改めて実感させられた。

 ネタとしては書きやすいが、その系統のジャンルは漫画も小説もドラマも映画も多数存在する。商業化されている作品の数が圧倒的に多い。ライバルたちを抜いて読まれるほどの文才があるかと言えば、なかなか厳しい。

 とはいえ、書けば一定数の読者がつくと思うので書いてみるに越したことはない。

 ほかのものについては、専門で動画をあげている人が多いということで、私も何か得意分野を作ってそれを主にして小説を執筆したら、もっと読者が増えそうだ。私の得意分野……。これは追々考えていこう。

 書きだしたものを一つ一つ吟味していくのも、それはそれで面白そうだが、時間がかかり過ぎる。今まで書いたものだとメイク、ダイエット、イメチェン辺りは私も良く小説のネタとして使用している。容姿が変わるというのはネタになる。

「でも、これもまた、王道展開だからなあ」

 だがしかし、面白いから人気で王道なのだ。イメチェンについては、最近、精神的に参っているときの自分の体験が生きてくる気がする。

「見た目が華やぐと気分が上がるしなあ」


「トントン」

 独り言を呟いたタイミングで扉をノックする音がした。大鷹さんに決まっているが、毎回律儀にノックしてくれるところはありがたい。

「どうぞ」

 ガチャリと入ってきた大鷹さんは、何やら深刻そうな顔をしていた。手にはスマホをもっている。常に大鷹さんに対して何かしらのやらかしに心当たりがある私は、深刻そうな表情の大鷹さんを見ると、不安になってしまう。

 いったい、私は今回、何をやらかしたのか。

「紗々さん、もしかして忙しいのは嘘で、ふ、不倫とかしていませんよね?」

「?」

「ちょうど、広告で不倫系の漫画を読んでいたのですが、急にオシャレに目覚め始めたのはおかしい、みたいな感じで。ああ、これって紗々さんにも当てはまるなと思って」

「あまりにもベタ過ぎません?それ、本気で言ってます?」

 何を言い出すのかと思ったら、そんなことか。心配するだけ無駄だった。

「いや、紗々さんに限って不倫とかないと思いますけど、じゃあいったい、急にオシャレに目覚めたのはなんでだろうって」

「ふむ」

 そこまで急にオシャレに目覚めたわけではない。ただ単に少しイメチェンをしたいなと思ったのと、きれいにした方が気分も上がるかなと思っただけだ。

「髪色に関しては、たまには冒険したいなと思って明るい色に挑戦しただけですし、爪に関しては、冬場に乾燥で二枚爪になって、みっともないのと保湿の為にネイルをしているだけです。服に関しては、広告でワンピースが流れてきて、これなら一枚で着れるし、丈もそこまで短くないから着てみようかとおも」 

 ちなみに、髪色は職場のこともあるので金髪とかそこまで明るい髪色ではない。ピンク系の明るい茶色。爪だって薄いピンクのナチュラルな色合いのものだ。ワンピースだって、普段使いできそうなシャツワンピースで、世間一般からしたら大したことではない。

 理由を聞かれたから、つい長々と説明してしまった。チラリと大鷹さんを見ると、ふむふむと首を縦にして頷き、納得してくれたようだ。

 派手な外見にする人の理由がわからなかったが、少し明るい色を取り入れただけで気分が上がったので、きっと彼らは自分のテンションをあげるためにやっているのだろう。新たな発見だった。

「なるほど……。あれ、じゃあ、僕のためっていうのはないんですか?」

「いや、それを自分で言います?これだからモテる男は……」

 私の言葉に納得した大鷹さんが次に口にしたのは、普通の人からしたらだいぶ痛い質問だった。

「別にいいじゃないですか?僕たち夫婦ですよ。これくらい普通だと思いますけど」

 どうやら、大鷹さんの脳内はバグを起こしているようだ。しかし、イメチェンというのはやはり面白い。前にも書いた気がするのだが、今回もリハビリがてら、このネタでいってみよう。

「ありがとうございます」

「ええと、その顔を見る限り、何か良いアイデアを思い付いたみたいですね。投稿、楽しみにしていますね。『紗々の葉先生』」

「その先生って呼び方辞めてもらえます。あと、ペンネームを口にするのも」

「いいじゃないですか。僕は先生の『一番』のファンですから!」

 一番のところが妙に強調された言い方が気になったが、一番であることには変わりないので気にしないことにした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...