145 / 193
番外編【波乱の新年の幕開け】2隣の家の一人息子
しおりを挟む
新年早々、甘々な初詣を終えた私たち夫婦。1月2日は大鷹さんの実家に顔を出し、本日1月3日は私の方の実家に赴いた。
「あけましておめでとうございます」
「あ、あけましておめでとうございます。お義母さん、お義父さん」
私は何かあるたびに実家に帰省しているので、年始に帰省しても、懐かしいという感覚はない。反対に大鷹さんは久しぶりに私の実家に顔を出したので、少し緊張しているようだった。2人で実家の玄関に入って、両親に新年の挨拶をしたが、その声は少しだけ震えていた。
「あけましておめでとう。攻君、紗々」
「あけましておめでとう。どうぞ、中に入ってちょうだい」
両親は私たちの帰省を快く歓迎してくれた。家に招かれて、お言葉に甘えて家の中に入っていく。大鷹さんも私に続いて靴を脱ぐ。やはり、実家はよいものだ。自分の家があるにも関わらず、実家はやはりほっとできる場所だった。においや雰囲気が私の気分を癒してくれる。
「紗々、年末に言おうと思っていたことがあるの」
リビングのソファに案内されて、大鷹さんと私はありがたく腰を下ろす。母親がお茶を準備するためにキッチンに向かおうとしたところで、一度、足を止めて私たちに身体を向ける。
「お隣の当間さんの息子さんが実家に戻るらしいの。息子さん、確か紗々と同じくらいの年齢だったでしょう?」
当間という名前を聞いて思い出すのは、母親の言う通り、隣の家に住んでいる家族の苗字だ。私が小学4年生のころに引っ越してきたので、印象に残っている。私と同年齢の息子と言っていたが、正しくは私より2歳年上の男の子だ。
小学校の通学班が一緒だったが、それ以外になにか特別に交流した記憶はない。当時、私が小学4年生で、相手は6年生。1年間しか一緒に行動していない。その後も中学で1年間、高校は違っていたので、それ以降は全くと言っていいほど、近所なのに顔を合わせることはなかった。
「息子さんって、爽太(そうた)君のことでしょ。同じくらいって、私より2歳年上だったじゃん。確か、東京に就職して帰った来ないんじゃなかった?それが実家に戻ってきたっていったい、どういうこと?」
「紗々さんの幼馴染……」
私が事実確認のため母親に質問をすると、隣で大鷹さんがぼそりと怪しい発言をしてあごに手を当てていた。なんとなく表情が暗くなっている。何を想像しているのか知らないが、想像しているような関係では決してない。そもそも、幼馴染と呼べるかも怪しい関係だ。たかだか2年くらいの付き合いで幼馴染と呼べるものか。ただの近所の2歳年上の男の子。それ以外の何物でもない。
「2歳年上、それくらいだったかしら。当間さんがわざわざ私たちの家に挨拶に来てくれて、息子さん、爽太君のことを教えてくれたの。なんでも、東京の会社でうまくいかなくて、地元に戻って転職したみたいなの。それを聞いて驚いたわ。だって」
あんたと同じ会社なんだもの。
まさかの地元の転職先が私と同じ銀行だった。偶然にもほどがある。ソファの隣に座っている大鷹さんがさらに暗い顔になっていく。
「同じ会社……。幼馴染との運命の再会。紗々さんが僕から離れていく……」
「離れませんよ。さっきからぼそぼそとみっともない!大体、近所に住んでいるからって、誰もかれもがお隣さん、幼馴染同士で付き合う訳ないでしょ。まあ、爽太君とは幼馴染と言えるかもわからないけど。まったく!」
暗い表情の大鷹さんに何か、気の利いた言葉を掛けようと口を開くが、つい、口調が荒くなってしまう。
「あらあら、そんな心配してくださらなくてもいいですよ。むしろ、紗々の方が心配しなくてはいけない立場です。攻君ほど娘を好きでいてくれる人なんていないので」
「いえいえ、紗々さんは本当に素晴らしい女性ですよ。僕の方こそ、いつも紗々さんに嫌われないように努力しているところです」
なぜ、私の言葉ではなく、母親の言葉で復活するのか。母親の言葉で大鷹さんの表情が元に戻った。改めて隣に住む当間家の一人息子、爽太(そうた)3〇歳について考える。なんとなく、彼の年齢を正確に口にしたら負けの気がした。すでに私は30歳を越えてしまい、30代に突入しているので、今後は年齢についていこうと思っている。
とはいえ、当間爽太について考えると言っても、大した記憶もないので、思い出しようがないことに気づく。考える余地がないのだ。ただ、当時は他の人よりも高身長で、ひょろっとした糸目の少年だったことだけは覚えている。あのまま成長したのだろうか。
「おや、お隣の爽太君について話していたのかい?懐かしいねえ」
私、大鷹さん、母親の3人で会話をしていたら、リビングに父親がやってきた。どうやら、隣の家の当間家の一人息子の話はまだ続くらしい。
「あけましておめでとうございます」
「あ、あけましておめでとうございます。お義母さん、お義父さん」
私は何かあるたびに実家に帰省しているので、年始に帰省しても、懐かしいという感覚はない。反対に大鷹さんは久しぶりに私の実家に顔を出したので、少し緊張しているようだった。2人で実家の玄関に入って、両親に新年の挨拶をしたが、その声は少しだけ震えていた。
「あけましておめでとう。攻君、紗々」
「あけましておめでとう。どうぞ、中に入ってちょうだい」
両親は私たちの帰省を快く歓迎してくれた。家に招かれて、お言葉に甘えて家の中に入っていく。大鷹さんも私に続いて靴を脱ぐ。やはり、実家はよいものだ。自分の家があるにも関わらず、実家はやはりほっとできる場所だった。においや雰囲気が私の気分を癒してくれる。
「紗々、年末に言おうと思っていたことがあるの」
リビングのソファに案内されて、大鷹さんと私はありがたく腰を下ろす。母親がお茶を準備するためにキッチンに向かおうとしたところで、一度、足を止めて私たちに身体を向ける。
「お隣の当間さんの息子さんが実家に戻るらしいの。息子さん、確か紗々と同じくらいの年齢だったでしょう?」
当間という名前を聞いて思い出すのは、母親の言う通り、隣の家に住んでいる家族の苗字だ。私が小学4年生のころに引っ越してきたので、印象に残っている。私と同年齢の息子と言っていたが、正しくは私より2歳年上の男の子だ。
小学校の通学班が一緒だったが、それ以外になにか特別に交流した記憶はない。当時、私が小学4年生で、相手は6年生。1年間しか一緒に行動していない。その後も中学で1年間、高校は違っていたので、それ以降は全くと言っていいほど、近所なのに顔を合わせることはなかった。
「息子さんって、爽太(そうた)君のことでしょ。同じくらいって、私より2歳年上だったじゃん。確か、東京に就職して帰った来ないんじゃなかった?それが実家に戻ってきたっていったい、どういうこと?」
「紗々さんの幼馴染……」
私が事実確認のため母親に質問をすると、隣で大鷹さんがぼそりと怪しい発言をしてあごに手を当てていた。なんとなく表情が暗くなっている。何を想像しているのか知らないが、想像しているような関係では決してない。そもそも、幼馴染と呼べるかも怪しい関係だ。たかだか2年くらいの付き合いで幼馴染と呼べるものか。ただの近所の2歳年上の男の子。それ以外の何物でもない。
「2歳年上、それくらいだったかしら。当間さんがわざわざ私たちの家に挨拶に来てくれて、息子さん、爽太君のことを教えてくれたの。なんでも、東京の会社でうまくいかなくて、地元に戻って転職したみたいなの。それを聞いて驚いたわ。だって」
あんたと同じ会社なんだもの。
まさかの地元の転職先が私と同じ銀行だった。偶然にもほどがある。ソファの隣に座っている大鷹さんがさらに暗い顔になっていく。
「同じ会社……。幼馴染との運命の再会。紗々さんが僕から離れていく……」
「離れませんよ。さっきからぼそぼそとみっともない!大体、近所に住んでいるからって、誰もかれもがお隣さん、幼馴染同士で付き合う訳ないでしょ。まあ、爽太君とは幼馴染と言えるかもわからないけど。まったく!」
暗い表情の大鷹さんに何か、気の利いた言葉を掛けようと口を開くが、つい、口調が荒くなってしまう。
「あらあら、そんな心配してくださらなくてもいいですよ。むしろ、紗々の方が心配しなくてはいけない立場です。攻君ほど娘を好きでいてくれる人なんていないので」
「いえいえ、紗々さんは本当に素晴らしい女性ですよ。僕の方こそ、いつも紗々さんに嫌われないように努力しているところです」
なぜ、私の言葉ではなく、母親の言葉で復活するのか。母親の言葉で大鷹さんの表情が元に戻った。改めて隣に住む当間家の一人息子、爽太(そうた)3〇歳について考える。なんとなく、彼の年齢を正確に口にしたら負けの気がした。すでに私は30歳を越えてしまい、30代に突入しているので、今後は年齢についていこうと思っている。
とはいえ、当間爽太について考えると言っても、大した記憶もないので、思い出しようがないことに気づく。考える余地がないのだ。ただ、当時は他の人よりも高身長で、ひょろっとした糸目の少年だったことだけは覚えている。あのまま成長したのだろうか。
「おや、お隣の爽太君について話していたのかい?懐かしいねえ」
私、大鷹さん、母親の3人で会話をしていたら、リビングに父親がやってきた。どうやら、隣の家の当間家の一人息子の話はまだ続くらしい。
0
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
愛のない結婚を後悔しても遅い
空橋彩
恋愛
「僕は君を望んでいない。環境が整い次第離縁させてもらうつもりだ。余計なことはしないで、大人しく控えて過ごしてほしい。」
病弱な妹の代わりに受けた縁談で嫁いだ先の公爵家は、優秀な文官を輩出している名門だった。
その中でも、近年稀に見る天才、シリル・トラティリアの元へ嫁ぐことになった。
勉強ができるだけで、人の心のわからないシリル・トラティリア冷たく心無い態度ばかりをとる。
そんな彼の心を溶かしていく…
なんて都合のいいことあるわけがない。
そうですか、そうきますか。
やられたらやり返す、それが私シーラ・ブライトン。妹は優しく穏やかだが、私はそうじゃない。そっちがその気ならこちらもやらせていただきます。
トラティリア公爵は妹が優しーく穏やかーに息子を立て直してくれると思っていたようですが、甘いですね。
は?準備が整わない?しりません。
は?私の力が必要?しりません。
お金がない?働きなさい。
子どもおじさんのシリル・トラティリアを改心させたい両親から頼みこまれたとも知らない旦那様を、いい男に育て上げます。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる