結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
146 / 234

番外編【波乱の新年の幕開け】3幼馴染とは

しおりを挟む
 それから、父親も交えてお隣の当間家の話で盛り上がった。とはいえ、ここには部外者の大鷹さんもいる。きっと、お隣との思い出話や家庭事情など興味がないだろう。そう思っていたら、意外にも興味津々だった。

「そうなんですね。それじゃあ、紗々さんとソウタ君は、あまり仲が良くなかったと」

「はたから見ればそうかもね。うちの紗々の性格は既にご存じだと思うけど、基本的に人見知りが激しいから、2歳年上の男の子とはなかなか自分から声をかけにくかったんだろうね。それと同時に爽太君もまた、あんまりおしゃべりな子ではなかったから」

「でも、おしゃべりではなかったけど、おとなしいわけではなかったみたいよ。帰りによく男の子の友達を家に呼んでいるのを何度か見たことがあるわ」

「やっぱり、小学校、中学校とかは同性のお友達がいいのかな」

「なるほど、それはあり得るかもしれないですね」

 今日は休日で父親も仕事が休みで暇らしい。私と大鷹さんが座っていたソファの正面にどっかりと腰を下ろして会話に参加している。母親もいったん、キッチンでお茶とお菓子を準備するためにその場を離れたが、私と大鷹さんのお茶とお菓子に加えて、母親自身と父親の分まで持ってきた。母親もガッツリ、当間家について語る気満々だった。

 それにしても、大鷹さんはどうしてそこまで、お隣の当間家の息子のことが気になるのか。そして、私と彼の仲があまりよくなかったと聞いて、明らかに喜んでいる様子だった。ただ隣に引っ越してきただけの男と、なぜ張り合おうとしているのか。そんなことしなくても、私の一番は昔も含めて、大鷹さんオンリーだ。

 両親と大鷹さんの会話を聞きながら、私は定番の小説ネタを思いついた。

 主人公とヒロインの幼馴染設定。

 主人公の幼馴染が出てきて、その幼馴染とゴールインする話は今も昔も王道な設定だと思う。

「でも、私はこの設定、あんまり好きじゃないしなあ」

 つい、口から本音がこぼれてしまう。

「何が好きじゃないんですか?」

「何って、幼馴染設定ですよ」

 大鷹さんは先ほどまで両親と当間家の話で盛り上がっていたはずだ。それなのに、私のつぶやいた言葉を拾ってきた。地獄耳だったらしい。

「設定って、紗々、いきなり何を言い出すかと思えば」

「まあまあ、別にいいじゃないか。ああ、そろそろ昼ご飯の時間だね」

「あら、もうそんな時間。紗々、予約はしてあるのよね?」

 話しているうちにお昼の時間になっていたようだ。カバンからスマホを出して時刻を確認すると、11時30分。1月3日に両親とは会う約束を前々からしていたため、店の予約はちゃんと取っている。車で20分ほどにある回転寿司店に行こうと思っていた。

「12時に予約済だよ。車はお母さんの車でいいよね?運転も任せていい?」

「当たり前でしょ。紗々の車に4人乗って行くのは狭いし。じゃあ、サッサと準備していきましょう」

 ようやくお隣の当間家の話は終わりらしい。大した思い出もないのに、両親が彼らの話をするのを聞くのはだるすぎる。

「どうして幼馴染設定が好きではないのか、家に帰ったら詳しく教えてください」

 玄関を出る際、大鷹さんに耳元でコッソリと告げられた内容に、げんなりする。

「好きじゃない、っていうのだけでいいじゃないですか?理由までいります?」

「だって、お隣に幼馴染みたいな存在がいるじゃないですか?自分がそうじゃないから嫌なのか、他に理由があるのか気になってしまって」

「はあ。わかりました。今はお昼を食べに行きましょう」

 仕方ないので、家に帰ったら話すことにした。

 お正月は親せきなどが集まるのか、店内は混みあっていたが、私たちは予約していたので、スムーズに席に案内された。

 寿司と言えば、私は夏の終わりにアレルギーもどきの反応が出て、食べない方がよいとは思った。とはいえ、夏よりも体調は良くなったので、腹八分目を意識して好きなマグロやサーモンなどを食べることにした。外食はあまりしないので、久しぶりの外食にテンションが上がり、大鷹さんや両親に生温かい目で見られて、恥ずかしかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...