146 / 167
番外編【波乱の新年の幕開け】3幼馴染とは
しおりを挟む
それから、父親も交えてお隣の当間家の話で盛り上がった。とはいえ、ここには部外者の大鷹さんもいる。きっと、お隣との思い出話や家庭事情など興味がないだろう。そう思っていたら、意外にも興味津々だった。
「そうなんですね。それじゃあ、紗々さんとソウタ君は、あまり仲が良くなかったと」
「はたから見ればそうかもね。うちの紗々の性格は既にご存じだと思うけど、基本的に人見知りが激しいから、2歳年上の男の子とはなかなか自分から声をかけにくかったんだろうね。それと同時に爽太君もまた、あんまりおしゃべりな子ではなかったから」
「でも、おしゃべりではなかったけど、おとなしいわけではなかったみたいよ。帰りによく男の子の友達を家に呼んでいるのを何度か見たことがあるわ」
「やっぱり、小学校、中学校とかは同性のお友達がいいのかな」
「なるほど、それはあり得るかもしれないですね」
今日は休日で父親も仕事が休みで暇らしい。私と大鷹さんが座っていたソファの正面にどっかりと腰を下ろして会話に参加している。母親もいったん、キッチンでお茶とお菓子を準備するためにその場を離れたが、私と大鷹さんのお茶とお菓子に加えて、母親自身と父親の分まで持ってきた。母親もガッツリ、当間家について語る気満々だった。
それにしても、大鷹さんはどうしてそこまで、お隣の当間家の息子のことが気になるのか。そして、私と彼の仲があまりよくなかったと聞いて、明らかに喜んでいる様子だった。ただ隣に引っ越してきただけの男と、なぜ張り合おうとしているのか。そんなことしなくても、私の一番は昔も含めて、大鷹さんオンリーだ。
両親と大鷹さんの会話を聞きながら、私は定番の小説ネタを思いついた。
主人公とヒロインの幼馴染設定。
主人公の幼馴染が出てきて、その幼馴染とゴールインする話は今も昔も王道な設定だと思う。
「でも、私はこの設定、あんまり好きじゃないしなあ」
つい、口から本音がこぼれてしまう。
「何が好きじゃないんですか?」
「何って、幼馴染設定ですよ」
大鷹さんは先ほどまで両親と当間家の話で盛り上がっていたはずだ。それなのに、私のつぶやいた言葉を拾ってきた。地獄耳だったらしい。
「設定って、紗々、いきなり何を言い出すかと思えば」
「まあまあ、別にいいじゃないか。ああ、そろそろ昼ご飯の時間だね」
「あら、もうそんな時間。紗々、予約はしてあるのよね?」
話しているうちにお昼の時間になっていたようだ。カバンからスマホを出して時刻を確認すると、11時30分。1月3日に両親とは会う約束を前々からしていたため、店の予約はちゃんと取っている。車で20分ほどにある回転寿司店に行こうと思っていた。
「12時に予約済だよ。車はお母さんの車でいいよね?運転も任せていい?」
「当たり前でしょ。紗々の車に4人乗って行くのは狭いし。じゃあ、サッサと準備していきましょう」
ようやくお隣の当間家の話は終わりらしい。大した思い出もないのに、両親が彼らの話をするのを聞くのはだるすぎる。
「どうして幼馴染設定が好きではないのか、家に帰ったら詳しく教えてください」
玄関を出る際、大鷹さんに耳元でコッソリと告げられた内容に、げんなりする。
「好きじゃない、っていうのだけでいいじゃないですか?理由までいります?」
「だって、お隣に幼馴染みたいな存在がいるじゃないですか?自分がそうじゃないから嫌なのか、他に理由があるのか気になってしまって」
「はあ。わかりました。今はお昼を食べに行きましょう」
仕方ないので、家に帰ったら話すことにした。
お正月は親せきなどが集まるのか、店内は混みあっていたが、私たちは予約していたので、スムーズに席に案内された。
寿司と言えば、私は夏の終わりにアレルギーもどきの反応が出て、食べない方がよいとは思った。とはいえ、夏よりも体調は良くなったので、腹八分目を意識して好きなマグロやサーモンなどを食べることにした。外食はあまりしないので、久しぶりの外食にテンションが上がり、大鷹さんや両親に生温かい目で見られて、恥ずかしかった。
「そうなんですね。それじゃあ、紗々さんとソウタ君は、あまり仲が良くなかったと」
「はたから見ればそうかもね。うちの紗々の性格は既にご存じだと思うけど、基本的に人見知りが激しいから、2歳年上の男の子とはなかなか自分から声をかけにくかったんだろうね。それと同時に爽太君もまた、あんまりおしゃべりな子ではなかったから」
「でも、おしゃべりではなかったけど、おとなしいわけではなかったみたいよ。帰りによく男の子の友達を家に呼んでいるのを何度か見たことがあるわ」
「やっぱり、小学校、中学校とかは同性のお友達がいいのかな」
「なるほど、それはあり得るかもしれないですね」
今日は休日で父親も仕事が休みで暇らしい。私と大鷹さんが座っていたソファの正面にどっかりと腰を下ろして会話に参加している。母親もいったん、キッチンでお茶とお菓子を準備するためにその場を離れたが、私と大鷹さんのお茶とお菓子に加えて、母親自身と父親の分まで持ってきた。母親もガッツリ、当間家について語る気満々だった。
それにしても、大鷹さんはどうしてそこまで、お隣の当間家の息子のことが気になるのか。そして、私と彼の仲があまりよくなかったと聞いて、明らかに喜んでいる様子だった。ただ隣に引っ越してきただけの男と、なぜ張り合おうとしているのか。そんなことしなくても、私の一番は昔も含めて、大鷹さんオンリーだ。
両親と大鷹さんの会話を聞きながら、私は定番の小説ネタを思いついた。
主人公とヒロインの幼馴染設定。
主人公の幼馴染が出てきて、その幼馴染とゴールインする話は今も昔も王道な設定だと思う。
「でも、私はこの設定、あんまり好きじゃないしなあ」
つい、口から本音がこぼれてしまう。
「何が好きじゃないんですか?」
「何って、幼馴染設定ですよ」
大鷹さんは先ほどまで両親と当間家の話で盛り上がっていたはずだ。それなのに、私のつぶやいた言葉を拾ってきた。地獄耳だったらしい。
「設定って、紗々、いきなり何を言い出すかと思えば」
「まあまあ、別にいいじゃないか。ああ、そろそろ昼ご飯の時間だね」
「あら、もうそんな時間。紗々、予約はしてあるのよね?」
話しているうちにお昼の時間になっていたようだ。カバンからスマホを出して時刻を確認すると、11時30分。1月3日に両親とは会う約束を前々からしていたため、店の予約はちゃんと取っている。車で20分ほどにある回転寿司店に行こうと思っていた。
「12時に予約済だよ。車はお母さんの車でいいよね?運転も任せていい?」
「当たり前でしょ。紗々の車に4人乗って行くのは狭いし。じゃあ、サッサと準備していきましょう」
ようやくお隣の当間家の話は終わりらしい。大した思い出もないのに、両親が彼らの話をするのを聞くのはだるすぎる。
「どうして幼馴染設定が好きではないのか、家に帰ったら詳しく教えてください」
玄関を出る際、大鷹さんに耳元でコッソリと告げられた内容に、げんなりする。
「好きじゃない、っていうのだけでいいじゃないですか?理由までいります?」
「だって、お隣に幼馴染みたいな存在がいるじゃないですか?自分がそうじゃないから嫌なのか、他に理由があるのか気になってしまって」
「はあ。わかりました。今はお昼を食べに行きましょう」
仕方ないので、家に帰ったら話すことにした。
お正月は親せきなどが集まるのか、店内は混みあっていたが、私たちは予約していたので、スムーズに席に案内された。
寿司と言えば、私は夏の終わりにアレルギーもどきの反応が出て、食べない方がよいとは思った。とはいえ、夏よりも体調は良くなったので、腹八分目を意識して好きなマグロやサーモンなどを食べることにした。外食はあまりしないので、久しぶりの外食にテンションが上がり、大鷹さんや両親に生温かい目で見られて、恥ずかしかった。
0
お気に入りに追加
236
あなたにおすすめの小説
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる