結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
121 / 234

番外編【突然の出来事】1謎の発疹

しおりを挟む
「やっぱり、夏は冷たいものに限りますね!」

 8月のお盆前の休日、私と大鷹さんは珍しく、某回転寿司チェーンで昼食をとっていた。土日引きこもりの私だって、ごくたまに外食をするのだ。休日の昼間ということもあり、店内はそれなりに混雑していた。某グルメサイトのアプリを使って予約したため、私たちはスムーズに店内の席に案内された。便利な世の中である。

「紗々さん、そんなに食べて大丈夫ですか?」

 現在はかんぱちとマグロのフェアを開催していて、テーブルの上にはかんぱちとマグロの寿司が並んでいる。ノーマル、漬け、炙りをそれぞれ頼んでみた。フェアというのなら、それを存分に味わいたいと思うのは悪いことだろうか。心配そうな大鷹さんを無視して、私は中トロのマグロに手を付ける。脂がのっていてほろりと口の中で溶けて最高だ。

「おいしい!」

「紗々さんが大丈夫なら、構いませんが」

 大鷹さんも私に続いてマグロの中トロを口に運ぶ。大鷹さんも頬を緩めてマグロを存分に味わっている。しばらく、私たちは無言で食事を続けた。


「ごちそうさま!」

 食事が終わり、私はお腹が膨れて上機嫌だった。店を出ると、涼しかった店内とは違い、猛烈な暑さが私たちを襲ってきた。駆け足で駐車場の車に乗り込み、エンジンをかけてエアコンを効かせる。

「おいしかったですね。たまには外食もいいものです」

 運転席の大鷹さんが意味深に私に視線を投げかける。これではまるで、私のせいで外食が少ないみたいではないか。実際にはそうなのだが、それはそれでちょっと反抗したくもなる。

「別に私と来なくても、他の人と外食すれば」

「寂しいこと言わないでください。僕は」

「私と一緒に食べたいんでしょ」
「紗々さんと一緒がいいんです」

 私の言葉は途中で遮られ、その後の言葉は見事にかぶってしまった。思わず大鷹さんの顔を見つめてしまう。すると大鷹さんと目が合った。お互いの視線が絡み合うこと数秒。

「あはは」

「紗々さんが僕の気持ちを理解してくれて、うれしいです」

 私が苦笑すると、大鷹さんはとろけるような顔を私に向ける。きっと、この顔の暑さは社内にエアコンが効いていないからだ。私は大鷹さんから顔をそらして、紅くなっているだろう頬を隠す。頬に手を当てると、心なしか熱くなっていた。


 某回転すしチェーン店を出た私たちは、近くのショッピングモールで買い物をした後、帰宅した。帰宅して時刻を確認すると、4時過ぎになっていた。

 それぞれの部屋に戻って一息をつく。いつもは家で食事をするが、外でおいしい食事をすると気分が上がって楽しい。今日もおいしい寿司を食べることが出来て気分上々だ。

しかし、外食の楽しさはわかっているが、外に出る労力と外食の楽しさを天秤にかけると、どうしても外に出る労力が勝ってしまう。とはいえ、これからはもう少し、外に出る努力をしてみよう。そうすることで大鷹さんのあの笑顔を見られるのなら、儲けものである。大鷹さんは私が外出する機会が増えると喜ぶみたいだ。

 まるで親が子供を見るような表情な気もするが、そこは気にしない。


「かゆ」

 異変が起きたのは、家に帰宅して30分ほど経った頃のことだ。急に首や腕、足の太もも辺りにかゆみを覚えた。虫にでも刺されたのかと思って薬を塗ろうと部屋を出る。

 リビングでかゆみ止めの薬を探しながら、つい、かゆいところを手で触ってしまう。虫刺されなどの症状の場合、患部はなるべく触らないほうがよいと聞いたことがある。しかし、患部を触った瞬間、虫刺されではないことに気づく。首元にはざらざらとした感触があり、慌てて洗面所の鏡で確認すると、蕁麻疹のような赤い発疹が出ていた。

「いやいや、これはいったい……」

「どうしたんですか?」

 私が自分の身体の状態に焦っていると、大鷹さんが自室から出てきた。手を洗いにきたのか、洗面所の私と鉢合わせになる。大鷹さんは私が手で首元を抑えている様子を見て首をかしげた。

「首元、やばいですよね?」

「ど、どうしたんですか?腕にも蕁麻疹みたいなの出来ていますけど……」

 とりあえず、他人から見た私の状態はどうなのか。大鷹さんに首元を指さして尋ねると、大鷹さんはとても驚いた表情をしていた。そして、首元以外の腕に視線を向けられる。大鷹さんの言う通り、腕にも首元と同じような赤い発疹が現れていた。きっと、足のふとももにもできているだろう。

「わかりません。さっき、急にかゆくなって、それで……」 

 何が原因の発疹だろうか。とりあえず、かゆいことに間違いはないので、まずは発疹が出た部位を保冷剤にタオルを巻いて冷やすことにした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...