120 / 234
番外編【暑すぎる】5便利な世の中でも夏バテには勝てない
しおりを挟む
「なにもやりたくない……」
「唐突ですね。またスランプにでも陥ったんですか?」
8月を過ぎても暑い日が続いている。こんな暑さの中、きちんと週5日会社に出勤して8時間労働をしている人間は、すごいとほめられるべきだ。国が報奨金を出しても良いくらいだ。
そんなこんなで日々の仕事だけで、私のライフは空っぽになってしまい、その他のことが出来ないほどの疲労を感じていた。これはきっと暑さのせいだ。いくら涼しい職場で働けるとはいえ、夏バテに違いない。
「都合の悪いことは、とりあえず暑さのせいにするつもりですか?」
今日の夕食はそうめんだ。最近はもっぱら冷たい料理が多い。冷やし中華に冷や奴、まったく食事するだけでも嫌になってくる。大鷹さんにあきれた視線を向けられるが、知ったことではない。やる気が出ないのは本当なのだから、仕方ないだろう。
「それで、あのへんな文章を投稿したんですか?」
質問が多い男である。そもそも、先ほどから私に質問しかしていない。もう、答えるのも面倒になってくる。そのうち、生きていること自体が面倒だと言い出しそうな自分が怖くなる。
「別におかしくはないでしょう?最近の流行りに乗ったまでです。とはいえ、さすがにそのまま載せて終わりだと、著作権に引っかかりますので、注釈は入れておきました」
大鷹さんが変だと言っているのは、私が最近投稿した短編の物語のことを言っている。最近のAI(人工知能)の発展はすさまじい。AIに小説を書いてもらったり、イラストを描いてもらったりできるようだ。コンテストに出す作品さえもAIを使っているなんて問題が出ているほどである。
さらには学生の宿題にも利用されている。大学生のレポートに小学生の読書感想文など、利用は幅広い。すべてAIに任せるのはまずいが今後、どうなるだろうか。
「注釈を入れればいいという問題ではない気がしますが」
「そうですか?でも、実際にAIを利用してみると、すごいとしか言いようがありませんね。やってほしいことを入力すると、文字が勝手に出てきて、あっという間に作品が完成するんですよ!」
ということで、私も世間の流行りに乗ってみたのである。コンテストに投稿するものでもないし、きちんと注釈にAIで作成と記載している。何がそんなに不満なのだろうか。
「別に不満というとわけではないですよ。ただ」
「ただ?」
大鷹さんが私に何か言いたそうにしている。いつもなら、失礼なことでもズバズバということが多いのに珍しい。もしかして、ようやく私に気を遣うことを覚えたのか。とはいえ、こんな中途半端な言葉では気になりすぎる。続きを促すと、大鷹さんは大きな溜息を吐いた。目を閉じて深呼吸する。
そこまで気持ちを落ち着かせなくてはならないほどのことだろうか。
「AIの方が常識的な物語で、つまらないです」
「ええと……」
「やはり、僕は紗々さんが一から紡ぐ物語が好きです。僕には物語を作る大変さはわかりません。でも、どれだけ遅くなっても、僕は紗々さん本人が書いたオリジナルな話が読みたいです!」
何を言い出すのかと思えば、作者冥利に尽きるお言葉である。とはいえ、この暑さでは何もやる気が起きないのは事実。目をキラキラさせて言われても、今の私にはプレッシャーでしかない。
「でも、今は本当にやる気がなくて……」
「確かに、僕もいまいち調子が良くありません。ですから」
短編でもいいです!
「できる限り、頑張ります」
まったく、そんなに期待されて悪い気分はしない。
結局、監禁系の話はプロット段階でまだ文章になっていない。「投稿した」というのは、嘘である。とりあえず、本当に監禁系の短編でも書いてみよう。
「あああ、早くこの暑さ、どうにかならないかなあ」
「本当ですよね」
この暑さの中、台風が日本に接近しているらしい。私の地域は直撃を免れそうだが、油断はできない。とはいえ、台風の進路など私には予測できない。とりあえず、大鷹さんの言う通り、短編からでもいいので手をつけようと思っている。
「もうすぐお盆休みがありますから、頑張りましょう!」
「いや、私たち金融機関にお盆なんてないからね」
大鷹さんもどうやら夏バテらしい。暑さでいかれた私たち夫婦は、お互いに顔を見合わせ、黙ってそうめんをすすった。
「唐突ですね。またスランプにでも陥ったんですか?」
8月を過ぎても暑い日が続いている。こんな暑さの中、きちんと週5日会社に出勤して8時間労働をしている人間は、すごいとほめられるべきだ。国が報奨金を出しても良いくらいだ。
そんなこんなで日々の仕事だけで、私のライフは空っぽになってしまい、その他のことが出来ないほどの疲労を感じていた。これはきっと暑さのせいだ。いくら涼しい職場で働けるとはいえ、夏バテに違いない。
「都合の悪いことは、とりあえず暑さのせいにするつもりですか?」
今日の夕食はそうめんだ。最近はもっぱら冷たい料理が多い。冷やし中華に冷や奴、まったく食事するだけでも嫌になってくる。大鷹さんにあきれた視線を向けられるが、知ったことではない。やる気が出ないのは本当なのだから、仕方ないだろう。
「それで、あのへんな文章を投稿したんですか?」
質問が多い男である。そもそも、先ほどから私に質問しかしていない。もう、答えるのも面倒になってくる。そのうち、生きていること自体が面倒だと言い出しそうな自分が怖くなる。
「別におかしくはないでしょう?最近の流行りに乗ったまでです。とはいえ、さすがにそのまま載せて終わりだと、著作権に引っかかりますので、注釈は入れておきました」
大鷹さんが変だと言っているのは、私が最近投稿した短編の物語のことを言っている。最近のAI(人工知能)の発展はすさまじい。AIに小説を書いてもらったり、イラストを描いてもらったりできるようだ。コンテストに出す作品さえもAIを使っているなんて問題が出ているほどである。
さらには学生の宿題にも利用されている。大学生のレポートに小学生の読書感想文など、利用は幅広い。すべてAIに任せるのはまずいが今後、どうなるだろうか。
「注釈を入れればいいという問題ではない気がしますが」
「そうですか?でも、実際にAIを利用してみると、すごいとしか言いようがありませんね。やってほしいことを入力すると、文字が勝手に出てきて、あっという間に作品が完成するんですよ!」
ということで、私も世間の流行りに乗ってみたのである。コンテストに投稿するものでもないし、きちんと注釈にAIで作成と記載している。何がそんなに不満なのだろうか。
「別に不満というとわけではないですよ。ただ」
「ただ?」
大鷹さんが私に何か言いたそうにしている。いつもなら、失礼なことでもズバズバということが多いのに珍しい。もしかして、ようやく私に気を遣うことを覚えたのか。とはいえ、こんな中途半端な言葉では気になりすぎる。続きを促すと、大鷹さんは大きな溜息を吐いた。目を閉じて深呼吸する。
そこまで気持ちを落ち着かせなくてはならないほどのことだろうか。
「AIの方が常識的な物語で、つまらないです」
「ええと……」
「やはり、僕は紗々さんが一から紡ぐ物語が好きです。僕には物語を作る大変さはわかりません。でも、どれだけ遅くなっても、僕は紗々さん本人が書いたオリジナルな話が読みたいです!」
何を言い出すのかと思えば、作者冥利に尽きるお言葉である。とはいえ、この暑さでは何もやる気が起きないのは事実。目をキラキラさせて言われても、今の私にはプレッシャーでしかない。
「でも、今は本当にやる気がなくて……」
「確かに、僕もいまいち調子が良くありません。ですから」
短編でもいいです!
「できる限り、頑張ります」
まったく、そんなに期待されて悪い気分はしない。
結局、監禁系の話はプロット段階でまだ文章になっていない。「投稿した」というのは、嘘である。とりあえず、本当に監禁系の短編でも書いてみよう。
「あああ、早くこの暑さ、どうにかならないかなあ」
「本当ですよね」
この暑さの中、台風が日本に接近しているらしい。私の地域は直撃を免れそうだが、油断はできない。とはいえ、台風の進路など私には予測できない。とりあえず、大鷹さんの言う通り、短編からでもいいので手をつけようと思っている。
「もうすぐお盆休みがありますから、頑張りましょう!」
「いや、私たち金融機関にお盆なんてないからね」
大鷹さんもどうやら夏バテらしい。暑さでいかれた私たち夫婦は、お互いに顔を見合わせ、黙ってそうめんをすすった。
0
あなたにおすすめの小説
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる