結婚したくない腐女子が結婚しました

折原さゆみ

文字の大きさ
97 / 234

番外編【GWの過ごし方】2大鷹さんの場合

しおりを挟む
「明後日の木曜日の昼に、河合さんとランチすることになりました」

 河合さんとランチの約束を取り付けたその日の夕食時、大鷹さんにそのことを伝えた。今日の夕食は私が作ったトマトパスタだ。服にトマトが飛ばないように慎重に食べながら、大鷹さんの返事を待つ。

「河合江子(かわいえこ)と?」

 しばらくして、大鷹さんがいらだちを含ませた言葉を口にする。前から思っていたが、大鷹さんは河合さんのことが嫌いなようだ。元カノと聞いていたのに、どうしてそこまで嫌っているのだろうか。知りたい気持ちもあるが、なんとなく聞いてはいけない気がして口をつぐむ。

「ランチをする相手が河合江子なのは気に入りませんが、僕がどうこう言うことではありません。楽しんできてください」

「大鷹さんは?」

 冷たい言葉に負けることなく、大鷹さんのその日の予定を聞いてみる。どうせ、どこぞの友達と遊ぶ予定かもしれないが。

「僕ですか?僕は、まあ……。気になりますか?」

 なぜ、言いよどむのか。もしかして、これが世間でいう『浮気』の前兆という奴か。ここで仕事の同僚などと言い出したら浮気確定か。

「別に、大鷹さんがどこで何をしようが気にしませんので安心してください」

 突き放す言い方になってしまった。これでは大鷹さんに不信感を抱いてすねているみたいではないか。そこまで私は子供ではないが、このままではいちいち夫の予定を把握しなければすまない、束縛系の妻になってしまう。何か、誤解を解く言葉はないだろうか。

「すいません、明日は早いので片付けて風呂に入ります」


 私が何か言う前に、大鷹さんはさっさと食べ終えた食器を片付け始める。私も慌ててそれに倣い、すでに食べ終えていた食器をキッチンに運んでいく。それからは無言の時間が続いた。

大鷹さんが食器を洗ってくれている間に、テーブルを台ふきできれいにしていく。あっという間に片づけが終わってしまう。言葉通り、大鷹さんは自分の部屋に戻るとすぐに風呂に入ってしまった。

(いったい、私の何が大鷹さんを不機嫌にしてしまったのか)

 私は知らないうちに大鷹さんを怒らせてしまうことがある。先ほどの言葉は確かにちょっと冷たい言い方だったかもしれないが、怒らせるほどのものではない、と思う。

「河合さんと、どこでランチしようかなあ」

 大鷹さんのことは私が考えてもわかるものではない。目先のことを考えることにした。河合さんとどこでランチするか決めなくてはならない。とはいえ、土日引きこもりの友達ゼロの私よりも、河合さんの方がおいしいカフェを知っているだろう。私が提案することもないが、誘ってくれた手前、自分も何かしておきたい。

大鷹さんのことはひとまず置いておき、現実逃避のように私は河合さんとのランチの候補先を探すためにスマホを開いた。



 次の日、大鷹さんは朝早くに家を出ていった。今日は実家に行くことを前から聞いていた。

「泊まりになりそうなので、夜は要りません。明日の夕食前には戻りますのでよろしくお願いします」

「わかりました」

 昨日のことをいまだに引きずっているのか、朝食時も家を出るときも大鷹さんは機嫌が悪そうにみえた。しかし、挨拶や必要最低限のことは話してくれたので私もそれに倣って挨拶や会話をする。

 ガチャリ。

 大鷹さんが家を出ていくと、家に静寂が訪れる。二人しかいない家でひとりいなくなっただけでかなり家は寂しくなる。

(ちゃんと行き先も伝えてくれたし、もし、本当に浮気というならば家に帰ってきたときにスマホを見せてもらえば済む話だ)

 そう、大鷹さんに限って浮気などありえない。今までだって、私がスマホを見せて欲しいと言えば、簡単に見せてくれていた。今回だって大丈夫だろう。

「今日は一日、ゲームやネット漫画でも読んでごろごろしよう!」

 河合さんには、私が調べたランチの候補をすでにSNSで発信済みである。あとは彼女からの返事待ちである。そのため、今日私がやるべき外部との連絡はない。

 今日の天気は、雨は降っていないが、どんよりとした曇り。すでに買い物は済ませてあるので、思う存分休みをごろごろしようと決意し、私は自分の部屋に向かった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...